狭まるスノーデン氏の選択肢
WSJ Japan Real Time 2013年 7月01日 16:09 JST.
米政府の情報監視活動を暴露したエドワード・スノーデン容疑者は、滞在先の香港からモスクワ空港に到着してから30日で2週間目に入ったが、依然として立ち往生の状態が続いている。スノーデン氏のロシア行きの決断は、当初思われていたよりもリスクは高そうで、香港にとどまっていた場合よりも状況は悪化しているようにみえる。
こうした中で、ドイツのシュピーゲル誌は30日、同氏からの情報を基に米国が在ワシントンの欧州連合(EU)代表部を盗聴する一方、EU各機関のコンピューター・ネットワークなどに侵入していたと報じた。この報道を受けて、欧州諸国は米国を激しく批判している。
スノーデン氏はエクアドルへの亡命を希望していたが、それが実現する可能性は遠のいているようだ。AP通信によると、当初同氏を支援していたエクアドルのコレア大統領は30日発言を後退させ、スノーデン氏が亡命申請のためモスクワのエクアドル大使館に行けるかどうかは、ロシア当局の決断次第だと述べた。
スノーデン氏は香港でとどまるか、他で亡命を求めるかで思い悩んだ末に出国を決め、モスクワで身動きがとれなくなった。関係者によれば、同氏は当初は香港から動かず、そこで地元紙に対し米国の香港でのハッキング行為に関する情報を与え、市民の支援の輪を広げるつもりだった。同氏の香港の弁護士チームも長期闘争を覚悟していた。
関係者の一人によれば、弁護士チームの間ではスノーデン氏の身の安全と利益を保護するには香港が最適とみる者もいた。しかし同氏は、内部告発サイトのウィキリークスからは違うメッセージを受け取っていた。ウィキリークスは6月19日に、同氏が仲介人を通してアイスランドへの亡命申請の支援を求めてきことを明らかにした、その後ウィキリークスは、スノーデン氏の代理人として、亡命の可能性についていくつかの国に打診した。
香港の法曹関係者は、同氏が香港にとどまっていたならば、受け入れる可能性のある国への亡命申請や、米国の身柄引き渡し要請への異議申し立てなどさまざまなオプションがあったと語る。
だがスノーデン氏は香港を出て、23日にモスクワ空港に到着した。ウィキリークスによれば、同氏はロシアなどを経由してエクアドルに向かう計画だった。プーチン大統領は米政府からの国外追放要求を拒否するとともに、スノーデン氏にはロシアを離れるよう呼び掛けた。そのため同氏は、米国の旅券もロシアの査証もなく同空港の乗り継ぎエリアで立ち往生する羽目になった。
米国はロシアに対し、スノーデン問題で協力しなければ、テロ対策からシリアの内戦までさまざまな問題での米ロの協調関係の強化が危うくなりかねないと、繰り返し圧力を掛けている。一方、エクアドルに対しても、バイデン副大統領など米政府高官は、スノーデン氏の亡命を受け入れれば、米国との経済関係が後退するだろうと警告している。
香港の弁護士の中には、香港に戻る可能性が残っているならば、同氏にとって最善のオプションは香港政府ないし国連難民高等弁務官(UNHCR)に亡命申請を出すことだろうと述べる向きもいる。
香港政府は航空会社にスノーデン氏が香港に戻ることを認めないことを伝えていた。ただ、法律事務所デイリー&アソシエーツのパトリシア・ホー氏はロシア政府がスノーデン氏を香港に送還するという形であれば、香港に戻ることを容認するというのとは違うので認められるのではないかと語る。
スノーデン氏は香港を出る数日前から、米国からの圧力に懸念を強めていた。香港の野党議員のアルバート・ホー氏によると、その頃、香港政府を代理と称する人物から暗号化されたメールが送られて来た。もし出国するなら出入国検査を通過させるというものだったという。ホー氏は香港政府にこれを確認しようとしたができなかったという。
事情筋によると、米国がスパイ容疑で訴追することを明らかにしたあとスノーデン氏は香港から出るフライトを探し始めた。行き先の候補はモスクワに決めていたわけではなく米国の追及を逃れられる米国の航空会社以外の便を探した。一日中、行くべきかとどまるべきか、行くならどこにすべきかと思い悩んでいた。この日の深夜に弁護団に香港を出ると伝えたが、よく寝た上で考えるようにと言われたという。
23日にスノーデン氏は空港に行った。同氏が無事に出入国検査を通過し搭乗できるかどうかを見届けるため弁護士の一人が先に空港に行き、一番近い上海までの航空券を買って待っていた。スノーデン氏、モスクワ便に間に合うぎりぎりの時間に空港に到着し、すぐ出入国検査を通過した。預け入れる荷物もなかった。
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米NSA、EUにもスパイ活動=独誌が報道
WSJ Japan Real Time 2013年7月01日 09:40
【ブリュッセル】米国家安全保障局(NSA)による情報監視問題で、ドイツ誌シュピーゲル(電子版)は30日、NSAが欧州連合(EU)の各機関に対しても情報収集のためのスパイ活動を行っていたと報じた。これを受け、欧州議会のマルティン・シュルツ議長は米国に対し「十分な説明」を要求した。
シュピーゲル誌は、NSAの情報監視活動を暴露した元中央情報局(CIA)職員のエドワード・スノーデン容疑者が入手した文書から得た情報として報じた。それによると、NSAはEUの駐ワシントン代表部に盗聴機を仕掛けたり、ニューヨークやワシントンにあるEU機関のコンピューターに侵入して情報を収集していたという。
この記事は、スノーデン氏への映像インタビューを行いインターネットで配信した米国のドキュメンタリー映画の制作者ローラ・ポイトラス氏が共同執筆した。ポイトラス氏は、スノーデン氏の暴露を基にNSAの監視プログラムについて報じた米ワシントン・ポスト紙の記事も共同執筆した。
EUの執行機関である欧州委員会は、同誌の報道を知っているとし、すでにワシントンとブリュッセルの米当局に対しこの問題を提起したことを明らかにした。同委のスポークスマンは「米政府はこの報道が正確かどうか調査し回答すると約束した。現段階ではそれ以上コメントしない」と述べた。
米国の元情報機関当局者によれば、こうしたスパイ活動に最も積極的な国の一つがフランス。このためNSAは、2006年に仏通信機器大手アルカテルと米国の同業ルーセントの統合について、フランスが米国の通信システムに対する途方もないアクセス手段を手にする恐れがあるとして、懸念を表明した経緯がある。NSAは最近では、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の米国での活動拡大についても、同様の問題を提起している。
シュルツ欧州議会議長は声明で、「米政府がEUの施設をスパイしたとの報道に衝撃を受け強い懸念を抱いている」とし、「報道が事実ならば、極めて憂慮すべき問題となり、EUと米国との関係に深刻な影響をもたらすだろう。米国に十分な説明を要求するとともに、米当局に対しさらなる情報を遅滞なく提供するよう求める」と述べた。
ドイツのザビーネ・ロイトホイザー=シュナーレンベルガー司法相は、「報道が事実ならば、冷戦時代の敵国のやり方を思い起こさせる。友邦である米国が欧州を敵とみなしているなどとは想像もできない」と指摘、「米国が欧州諸国を広範囲わたってスパイすることを許すわけにはいかない」と反発した。
シュピーゲル誌によれば、2010年9月のNSAの文書で駐ワシントンEU代表部が、盗聴されコンピューターネットワークへの侵入を受けたことが判明した。ニューヨークにあるEUの国連代表部も対象とされた。NSAはさらに、ブリュッセルでEU当局者間の会話を盗聴したり、EU理事会本部をスパイしたりしていた。NSAが友好国として監視の対象から実質的に除外しているのは、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドだけで、EU以外に30カ国が「第3国」として分類され、NSAは通信を傍受でき、しばしばそれを実施している。ドイツについては、毎年約50万件の電話やインターネットの情報を入手しているという。
NSAの活動に関する一連の報道を受け、EUのビビアン・レディング副委員長(司法・基本権担当)は、ホールダー米司法長官と共同で米政府の欧州におけるデータ収集について専門家パネルを設置して調査を進めている。
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スノーデン容疑者の飛行機代や宿泊代など肩代わり―ウィキリークス
WSJ Japan Real Time 2013年6月25日 09:21 JST.
内部告発サイト「ウィキリークス」創始者ジュリアン・アサンジ氏は24日、元米中央情報局(CIA)職員エドワード・スノーデン容疑者がどのようにして米当局の訴追を逃れて海外に逃亡しているかについて一部の詳細を明かした。ただしスノーデン容疑者が現在どこにいるのかには言及しなかった。
アサンジ氏とウィキリークス関係者はまた、ウィキリークスがスノーデン容疑者に提供している支援の一部について説明し、飛行機のチケット代、宿泊代、弁護士料の支払いを行っていると述べた。またウィキリークスはスノーデン容疑者の「各国の当局や政府」に対する要請やメッセージを出す際の「仲介役」として行動していると語った。
アサンジ氏は自らも政治亡命を求めて過去1年間逃げ込んでいるロンドンのエクアドル大使館から電話会見で明かした。アサンジ氏は、スノーデン容疑者を支援するようウィキリークスに指示したと述べたが、同容疑者と直接話したかどうかは明らかにしなかった。
アサンジ氏は「スノーデン氏は裏切り者ではないし、スパイでもない。彼は重要な真実を一般に暴露したホイッスルブロウアー(内部告発者)だ」と強調した。
アサンジ氏は、「(内部告発の)発表やホイッスルブロウアーに対する威嚇に対処する」ための経験をウィキリークスは持っていると述べ、同容疑者支援を決定したのは「スノーデン氏が深刻な状況に置かれており、米政府によってそのような状況に置かれるべきでないからだ」と語った。
アサンジ氏は、スノーデン容疑者が健康で安全だと述べるとともに、23日に香港を離れたあと、「ロシアやその他諸国」を経由して「エクアドルに向かう予定だ」と語った。
アサンジ氏は、スノーデン容疑者の所在にそれ以上言及しなかった。米検察当局は、米政府当局が電話やインターネット通信を監視していることを示す国家安全保障局(NSA)の文書を漏えいしたとして同容疑者を訴追し、指名手配している。
実際、スノーデン容疑者の現在の所在は神秘に包まれている。ロシアのメディアはアエロフロート関係者の話として、同容疑者が24日午後にモスクワ発キューバ行きのフライトを予約したと伝えた。しかしハバナ行きのアエロフロートSU-150の乗務員は、同容疑者は搭乗していないと述べたという。
ホワイトハウス当局者は24日、スノーデン氏は現在ロシアにいるとみていると述べた。ウィキリークスの広報担当者は、スノーデン氏が政治亡命を要請するためアイスランドとエクアドルに打診したことを確認し、ウィキリークスがこうした要請を支援したことを認めた。しかし「その他の申請ないし打診」については言及しなかった。
スパイ活動法に基づきスノーデン容疑者を訴追した米当局は今月15日、香港政府に対し、同容疑者を仮拘束して身柄を引き渡すよう求めた。また米当局は23日、スノーデン容疑者のパスポートを無効にしたことを明らかにした。
にもかかわらず、スノーデン氏はその日、香港を離れることに成功した。アサンジ氏はエクアドルがスノーデン容疑者に渡航のための「難民渡航許可証」を認めたと語った。
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