【産経抄】9月29日
「中国のみなさん申し訳ない」尖閣国有化を謝罪した親中派
産経ニュース2012.9.29 03:26
いやはや恐れ入った。小欄も時折、「孫も読んでいるので下品な表現はやめてください」といったお叱りを頂戴するが、国連総会の場で他国を「盗っ人」呼ばわりする中国の外相にははだしで逃げ出さざるを得ない。▼ビアスの「悪魔の辞典」によれば、外交とは「祖国のためにウソをつく愛国的行為」だそうだが、楊潔篪外相は希代の愛国者だ。なにしろ、「尖閣諸島は中国領だ」というウソを論証しようと、次から次へと珍論を繰り出す力業は尋常でない。▼珍論の白眉は、「第二次大戦後、カイロ宣言やポツダム宣言などに従い、これらの島々を含む占領された領土は中国に返還された」とのくだりだ。両宣言とも尖閣のセの字も書いていないばかりか、かの島々が中国や台湾に返還された事実はまったくない。▼ただし、ウソも100回つけば真実になるのは人間社会の悲しい常で、日本側が即座に反論したのは良かった。外交の場では、沈黙は金どころか、黙っていては相手の言い分を認めたと宣伝されかねない。▼日中国交正常化から40年の節目を迎えたが、偽りに満ちた「友好」の時代は終わった。河野洋平前衆院議長をはじめ、友好団体の長が雁首(がんくび)そろえて北京詣でをしても首相はおろか引退間際の幹部にしか会えなかった事実がすべてを物語っている。▼反日暴動に文句も言えず、「非常にいい会談だった」と話す財界人にもあきれたが、 「中国のみなさん申し訳ない」とテレビで尖閣国有化を謝罪した親中派もいる。 「売国奴」という下品な表現は使わぬが、11年前の自民党総裁選に名乗りを上げようとした野中広務元官房長官の野望を、同じ派閥の幹部が潰してくれたことを小欄は今でも感謝している。 *強調(太字・着色)、リンクは来栖
=========================================
〈来栖の独白〉
rice_showerさんがコメントで知らせてくださっていた。⇒ http://v.qq.com/cover/8/8gqaqm96md0h7hv.html?vid=i0011sbmh49
“野中広務氏、中国の尖閣番組で謝罪
こんな不幸な事件が起きたのは、まったく日本の人間として恥ずかしいと、このように思って、中国の皆さんに大変申し訳ないと心からお詫びを、かかわってきた一人としてお詫びを申し上げる次第です。
自民党も或いは民主党も非常に国の為にどうするか、そして国民の為にどうするか、そのためにどんな国を作るんだ、そのために周辺国とどのように大切に平和を守っていくか、これが国家を担う政治家の責任やなければならない、それが分からないでみんな自分の選挙に勝つために何か点数を上げよう、こればっかり考えてる。これが日本の情けない悲しい思いです、私は。間違ってます。だから、あの人たちは若い。長い間戦争で多くの犠牲を残し、今なお傷跡が癒えてないその中国に対して歴史を知らない若い人たちはそういうことを抜きにして一つの対等の国としてやってるんです。それは間違ってます。”
野中氏の発言は、謝罪も含めて間違っている。私はかつて、野中氏の出版物(対談)も読んでいて、幾ばくかの理解や親しみ、共感も得ていたつもりだ。だが、今回の発言は、間違っている。綸言汗の如しだ。人も国も、謝罪すべきときにはしなくてはいけないが、これは、違う。
余談だが、アメリカは広島、長崎への原爆投下を今日に至るも日本に謝罪していない。真珠湾奇襲攻撃に対する報復、戦争を早く終わらせるためというが、真珠湾攻撃は軍事基地への攻撃であって、非戦闘員(市民)への攻撃ではなかった。それなのに、アメリカは広島も長崎も、市民を殺傷した。また、日本の降伏が近いことは、アメリカにもわかっていた。むしろ、「降伏」に間に合うよう、急いで原爆投下した。「原爆」の人体実験をしたかったからだ。
=========================================
◆『なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか』日高義樹著《ハドソン研究所首席研究員》
2012年07月25日1刷発行 PHP研究所
私はこの本を書くにあたって、アメリカは何を考えて大量殺戮兵器である原爆を製造したのか、なぜ日本に原爆を投下したのか、歴史に前例のない無慈悲な仕打ちはどのように日本に加えられたのか、当時の記録に詳しく当たってみた。
原点に戻って、日本の人々に「考えたくないこと」を考えてもらうためである。
p22~
核分裂は、フランスやイギリス、ドイツ、アメリカ、ソビエトでは普通に得られる情報になっていたため、そこから原子爆弾の製造という構想が出てくるのは当然だった。日本では、核分裂や放射能についての関心はあったものの、爆弾をつくる計画には至らなかった。したがってルーズベルト大統領が日本に対して原子爆弾を使ったとしても、報復爆撃を受ける懸念はなかった。
1930年代の日本は、満州で戦いを続ける一方で、1941年12月8日、真珠湾を攻撃して乾坤一擲の勝負をアメリカに挑んだが、このころアメリカでルーズベルト大統領をはじめ専門家たちが原爆をつくるために全力を挙げていることには、考えも及ばなかった。日本が現在に至るも世界の動向には疎く、日本の外で起きていることに注意しないまま、自分勝手な行動を取ることが多いが、こうした国民性は第2次大戦以前から変わっていない。
アメリカでは、核分裂の仮説が発表されるやいなや、軍事目的に使う動きが急速に高まっている。この恐るべき情報に気がつかなかったことが、真珠湾奇襲攻撃、そして原爆投下につながっていく。「真珠湾攻撃に対する報復として原爆を使った」というのがアメリカの嘘であるとすれば、アメリカの動きについてまったく情報がない、つまり無知であったことが日本側の犯した罪と言える。
ここで、1939年1月に核分裂の仮説が証明されて以後、1941年12月に日本が真珠湾を攻撃するまでの経緯について少し詳しく述べたい。すでに述べたように、アメリカ政府や軍人たちの間に、核分裂によって生じる莫大なエネルギーを軍事目的に使おうという熱意が、急速に膨れ上がった。
当時のアメリカには、ヒットラーの迫害を逃れてヨーロッパからやってきた多くの学者たちがいたことはすでに述べたが、1940年4月、全米物理学研究協議会の会合で、アメリカの科学雑誌に核分裂の記事を野放しに載せるべきではないという決定が行われた。(~p24)
p88~
アメリカ陸軍の工兵隊というのは、エリートでアメリカ陸軍士官学校の卒業生のトップ5%のなかから選ばれる。その次の5%が騎兵隊で、第2次大戦のころには、戦車部隊や機甲科部隊の幹部になった。
アメリカ陸軍士官学校の生徒たちは、かつての日本陸軍士官学校や海軍兵学校の生徒たちと同じで、本をよく読み、教師の話を記憶し、規律正しく行動する優秀な生徒たちなのである。グローブズ将軍は陸軍士官学校を4番で卒業し、工兵隊のエリートとして順調に出世してきた。
そうした司令官に率いられたマンハッタン・プロジェクトの幹部たちが、トリニティーの成功後、兵器としての効果を試す実験を行うのは、当然の行為だった。プロジェクト・アルバータは世界の軍事史のなかでも例を見ない残虐な行為で、明らかに戦争犯罪である。だが「戦争を1日も早く終結させるために核兵器は必要だった」という主張によって、その犯罪は覆い隠されてきた。
最近になって「原爆が戦争終結のために投下されたという主張は間違っている」という見方が強くなり、この主張が通りにくくなっているのは事実である。原爆の効果を測るための実験として、無防備な広島と長崎の市民を合わせて20万人も殺傷した行為は、なんらかのかたちで追及されるべきではないかと思う。
真珠湾奇襲攻撃に対する復讐あるいは処罰という主張について私がいつも不思議に思うのは、日本の人々がなぜ、真珠湾攻撃は軍事基地に限定されていたこと、広島や長崎に対する原爆投下のように無防備な市民を殺傷したわけではないこと、をはっきり言わないのかということである。(~p89)
p91~
それにしても、ワシントンの日本外交官は何と愚かだったのだろう。宣戦布告の全文をすべて翻訳したあとでアメリカ側と会い、宣戦布告を行ったとされているが、外交官が正常な判断力を持っていれば、「日本は宣戦を布告する」と一言伝えればよいと考えたはずである。喧嘩の理由はあとから告げれば済む、とは思わなかったのだろうか。
宣戦布告の通告がアメリカに手渡されたのが真珠湾攻撃のあとだったため、ルーズベルトは「騙し討ち」だったと非難した。だが以前、アメリカの軍事専門家に聞いた話だが、アメリカが領土を拡大するために、メキシコやスペインに仕掛けた戦いのほとんどが奇襲攻撃で始まったという。
日本はなぜ「軍事基地を攻撃しただけである」という主張を、東京裁判はじめ、アメリカや世界のマスコミに強く主張しなかったのだろうか。私は時折、ハーバード大学やハドソン研究所などの研究会の集まりで、この点を指摘することがあるが、アメリカの同僚たちは反論に困っている。
戦争は狂気を伴う行為である。そして戦争には多くの理由がある。そういったあらゆる理由を勘案しても、広島と長崎に対する原爆投下は正当化されるものではない。原爆が投下されてから60年余り経つが、これまで原爆投下が人体実験であったことを非難し、戦争犯罪であることを厳しく追及する動きはまったくなかった。原爆については、ただ祈るだけしかないと日本の人々が考えた結果である。
アメリカの人々は原爆を広島と長崎に落としたことについて謝罪していないと私は思う。アメリカのルース駐日大使が慰霊碑に献花したが、私が知るかぎりアメリカの人々は素直に日本に謝ろうという気はない。真珠湾の奇襲攻撃は罰せられなければならなかったと主張する人がほとんどである。
原爆についてアメリカのマスコミや学者たちが口にする「謝罪」は、きわめて抽象的な意味の謝罪である。とてつもない破壊兵器をつくり、使ったことに対して、人類と歴史に謝罪しているのである。人体実験の対象にされた日本人に謝罪しているのではない。
マンハッタン・プロジェクトで原爆が完成したころ、アメリカの良心的な学者たちが「原爆投下は必要ない」と主張したが、ルーズベルト、トルーマン、グローブス将軍らは、「奇襲攻撃を行った日本を罰し、同時に奇襲攻撃によって始まった戦争を1日も早くやめさせるためには原爆を投下しなければならない」と主張した。
アメリカ国民の60%はいまも、その主張を信じて、原爆投下は必要だったと考えている。その理由は、原爆が引き起こした酸鼻きわまりない被害について詳しく知らないだけでなく、原爆投下が軍事行動ではなく原爆の開発を続けるために必要な実験だったことを知らないからである。
p93~
「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませぬから」
原爆慰霊碑に刻まれたこの碑文の前で、日本人は60年あまり祈り続けてきた。被害者の霊を悼み祈るのは正しいことである。だが祈るのなら、この「過ち」とはいったい何だったのかを明確にし、祈ることによってそれが正されたかどうかを確かめるべきではないだろうか。
--------------------------------------------------