集団的自衛権限定行使「砂川判決で許容」横畠裕介法制局長官 衆院平和安全法制特別委員会 2015.6.15

2015-06-16 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

 産経ニュース 2015.6.15 23:22更新
集団的自衛権の限定行使「砂川判決で許容」 法制局長官が答弁
 横畠裕介内閣法制局長官は15日の衆院平和安全法制特別委員会で、日本が固有の自衛権を有すると認めた昭和34年の最高裁判決(砂川判決)について「自国防衛に限定するなら(集団的自衛権の一部も)含まれるという理解が可能だ」と述べ、集団的自衛権の限定的行使は同判決で認められると強調した。政府の憲法解釈変更が違憲だとする野党などの主張に反論した。
 砂川判決は、集団的・個別的自衛権を区別せず「必要な自衛の措置」を認めている。横畠氏は「わが国を防衛するため必要な自衛の措置は砂川判決にいう自衛権に含まれると解することが可能だ」と述べ、自国防衛に限った集団的自衛権の行使は合憲だと強調した。
 横畠氏は「(判決の範囲は)他国防衛のために武力行使するフルセットの集団的自衛権まで及ぶということは難しい」とも指摘し、他国防衛のための全面的行使までは認められないとの見解を重ねて示した。
 一方、岸田文雄外相は特別委で、集団的自衛権行使の対象となる「密接な関係にある他国」に台湾が含まれるかの言及を避けた。「未承認国や分裂国家が(対象に)入るが、台湾については説明に慎重を要する。わが国は台湾の法的地位に関し独自の認定を行う立場にはない」とした。
 また、中谷元(げん)防衛相は他国軍への後方支援に関し、攻撃を直接支援するための偵察活動などはできないとの認識を示した。「他国の武力行使と一体化する可能性がある」と述べた。
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『賢者の戦略』〈手嶋龍一×佐藤優〉新潮新書 2014年12月20日発行 第4章 集団的自衛権が抱えるトラウマ
 (抜粋)
p173~
手嶋 第1次安倍内閣で挫折を味わっている安倍総理としては、衆参の選挙に大勝したいまこそ、その時と思ったのでしょう。
佐藤 「いま集団的自衛権の見直しに着手しておけば、小さく生んで大きく育てることができますよ」と意見具申をした奴らがいたと私は見ています。「集団的自衛権」という言葉さえ入れておけば、やがてそこに言霊が宿る―そんな“言霊信仰”に憑りつかれたんです。

  湾岸戦争の「敗北」

手嶋 それでは二つ目のトラウマはなんだったのでしょう。
佐藤 私の古巣になりますが、いま安倍内閣を支えている外務省の連中が抱えるトラウマです。1991年の湾岸戦争という突然の嵐に見舞われて日本外交は無惨な姿をさらけ出しました。外務官僚がこの時受けたトラウマはいまだに癒えていないんですよ。わが心の傷を安倍総理の傷にすり替えた悪知恵の働く奴がいたはずです。あの時、外務官僚が受けた衝撃は、まさに手嶋さんご自身がノンフィクションとして『1991年 日本の敗北』で (p174~)怜悧な記録を残されていますよね。のちに題を改めて『外交敗戦―130億ドルは砂に消えた』となって新潮文庫に収録され、いまも外交官の必読書です。まさしく130億ドルが白紙小切手として多国籍軍に拠出され、誰からも感謝されなかった。むしろ顰蹙すら買ってしまった。こういった事態は、二度と繰り返したくないと思ったんですよ。だから安倍さんが集団的自衛権を言い始めたこの機会を外務官僚は千載一遇のチャンスと捉えたということでしょう。
手嶋 湾岸戦争で日本が蒙った惨めな敗北は忘れられてはなりません。しかし、あの敗戦訓を引いて、いまの集団的自衛権の見直し論議に援用するのは賛成しかねます。
p178~

  「あてはめ」という魔術

手嶋 湾岸戦争で多国籍軍への参加を求められた日本政府は、何とか自衛隊を海外に派遣できないかと急きょ検討を重ねました。(略)しかし、内閣法制局は、従来の国会答弁の積み重ねを持ち出し、「否」と頑として首を縦に振りませんでした。
佐藤 外務官僚にとっては、ひどい負け戦でしたから、皆この時の議論をよく覚えています。だから、第二次安倍内閣が出現したことを絶好の機会と捉え、何とか内閣法制局を押し切って硬直した現状を変えられないかと思案を巡らせたんですよ。その結果、集団的自衛権、個別的自衛権と区別して論じることをこの際やめにして、基本的に自衛権は一つと捉えてみてはどうだろうと考えた。安全保障の概念をポスト冷戦の時代にふさわしいものに組み直し、地球の裏側までも自衛隊が行けるようにしたいと。
手嶋 そのためには、内閣法制局を包囲し、制圧しなければならなかった。そこで安倍総理が断行した最重要の人事が、内閣法制局長官の更迭です。後任には小松一郎氏を充てることだったのです。前著の『知の武装』でもこの人事が持つ意味を詳しく解説しましたが、ここで簡潔におさらいしておきましょう。小松一郎氏は外務省の国際法局長や駐仏大使を歴任した、いわば条約官僚の代表格のひとりです。第一次安倍内閣では首相の私的諮問機関、いわゆる安保法制懇の事務局を率いました。そして集団的自衛権の行使に道を拓くべく動いて、安倍総理の篤い信任を受けた人物です。法制局の長官は内部からというのが不文律でしたから、この人事は霞が関を驚かせました。これによって内閣法制局長官の座を追われた旧通産省出身の官僚には、外務省OB枠の最高裁判事のポストを譲るなどして周到な布石が打たれました。
 (略)
p180~
手嶋 鋭いなあ、官僚の内在論理に通じていなければ、その機微は見えてこないんです。ひとことでいえば、小松長官は「別にあなた方が間違ったわけじゃない」と言いくるめることで、難所を乗り切り、辞職を封じてしまったということです。
p181~
佐藤 従来あなた方が国会で答弁してきた見解は誤りでした――内閣法制局としては、こう言われる事態だけは断じて避けたい。そこで、小松長官は、「いや、あなた方が答弁してきたことは別に間違いじゃなかった。ただ、日本を取り巻く環境、客観情勢がすっかり様変わりしてしまったのですから、ここは個別的自衛権、あちらは集団的自衛権と言ってきたこれまでの見解を整理してみましょう」と言葉巧みに説得したという訳です。
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