「減胎手術」 大阪地裁判決で問われた問題 2020/1/28

2020-01-29 | Life 死と隣合わせ

 2020年1月29日 東京新聞 夕刊
五つ子減数手術「過失なし」 大阪地裁判決 流産の夫婦、敗訴

 不妊治療で五つ子を妊娠したのに一人も出産できなかったのは、子宮内で胎児の数を減らす「減胎手術」のミスが原因として、大阪府内の三十代女性と夫が、府内で産婦人科医院を運営する医療法人側に約二千三百四十万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(冨上智子裁判長)は二十八日、担当だった医師の過失を否定し請求を棄却した。
 判決によると、女性は産婦人科で不妊治療を受け二〇一五年、五つ子を妊娠。同年六月、医師の勧めに応じ減胎手術を受けたが、五つ子から双子の状態にまで減らす過程で失敗し、四つ子となった。その後さらに減胎手術を行い双子が残ったが、同年九月に流産し、一人も出産できなかった。
 原告側は二度目の手術で胎児に薬剤を注入するため針を刺す際、一児につき原則一回、多くても三回以内とすべきだったのに、計二十~三十回程度刺されたと主張した。
 しかし冨上裁判長は判決理由で「そのような医学的知見が一般的に確立していたと認めるに足りる証拠はない」と指摘。刺す回数は少ない方が望ましいとは言えても、一度目の手術で残った胎児を見極めて施術する必要があり、通常より難易度が上がっていたとし「医師に過失があったとはいえない」と判断した。
 原告側は担当医にも賠償請求していたが、医師が昨年死亡したため訴えを取り下げた。
 判決後、女性は「結果は残念。時に私のような、想像を超えた多胎妊娠が起きているということを知ってほしかった。わらにもすがる思いで減胎手術を決断した」とのコメントを出した。
 原告側の中村智広弁護士は大阪市内で記者会見し「医学的知見が確立していないとするのは承服し難い。減胎手術を巡る基準がない現状に対する提言すらなかった」と判決を批判した。

 ◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です


「減胎手術」ルールもなく、表面化もせず…大阪地裁判決で問われた問題

 2020/1/28(火) 21:27配信

 不妊治療で五つ子を妊娠したのに1人も出産できなかったのは、子宮内の胎児の数を減らす「減胎(げんたい)(減数)手術」を受けた際の病院側のミスが原因として、大阪府の30代女性と夫が産婦人科医院を運営する医療法人に約2300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。
 訴えは棄却されたものの、冨上智子裁判長は「減胎手術は相当数行われているが、実施を公表している医療機関はほぼなく、症例報告や文献も少ない」と、減胎手術の現状に言及。学会などによる正式な運用指針が整備されていない現状を踏まえ、「医学的知見が一般に確立していたと認めるに足りる証拠はない」と、知見不足を指摘した。
 多胎妊娠時の母子のリスクを下げるため、一部の胎児を薬物注射などの手法で減らす減胎手術だが、その不透明な実施態勢の現状が、いま問われている。

■「命の選別」「わらにもすがる思い…」
 減胎手術をめぐっては、以前から実施する上でのルール整備が不十分だと指摘されている。また、「命の選別」などといった批判もあり、今も実態は不明な点が多い。
 2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠する「多胎妊娠」は自然妊娠でもあり得るが、不妊治療の際に妊娠率を上げるため、体外受精で複数の受精卵を戻したり、排卵誘発剤を投与したりすることで起きることも多い。現在は体外受精で戻す受精卵は原則1個とされ、このケースによる多胎は減少したが、排卵誘発剤による多胎は今も起きている。
 早産・流産や母親の生命の危険を避けるため、実施されているとみられるが、その実態を明らかにしている医療機関はほぼない。
 平成15年に厚生労働省の審議会が「三つ子以上の妊娠に限って容認する」とする報告書をまとめたが、その後は議論が進まず、減胎手術のガイドラインは今も存在しない。それぞれの医師や医療機関が独自のやり方で実施しているのが現状とみられる。
 原告の女性は判決後のコメントで「私の場合はわらにもすがる思いで減胎手術を決断しました」とし、「判決結果は残念だったが、ルール整備への一歩となれば」と話した。

■親の苦労、社会で支えるシステムを
 双子などの「多胎児」は年間約2万人前後誕生しているが、育児負担の大きさから心身ともに追い込まれてしまう親も少なくない。専門家は「社会全体で支えるシステムの構築」を呼びかける。
 民間団体「多胎育児のサポートを考える会」などが昨秋、多胎家庭に行った調査では、育児に追われて地域社会から孤立していく親たちの姿が浮かびあがった。「子供にネガティブな感情を持ったことがあるか」の質問には約9割が「ある」と回答。必要なサポート(複数回答)としては「家事育児の人手」が約7割、「金銭的援助」が約6割に上った。
 多胎育児の支援団体や研究者らでつくる「日本多胎支援協会」の報告では、多胎家庭の子供の虐待死頻度は単胎家庭の2・5~4倍とも推計されている。
 ただ、多胎育児に対する行政支援には地域格差がある状況だ。厚生労働省は令和2年度、育児支援を担うサポーターの派遣などに乗り出す構えで、取り組む自治体に費用の半額を補助する方針を示している。
 十文字学園女子大の布施晴美教授(小児看護学)は「多胎家庭の孤立を防ぐためには、社会全体で支援していくシステムが重要になる」と指摘。「行政は相談体制の見直しのほか、支援にまわる人たちの輪をつなぐための方法を模索し、人材育成などにも力を入れていく必要がある」と話している。
 最終更新:1/29(水) 0:53 産経新聞 

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です


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