野田新政権の課題は中国の圧力を跳ね返すことだ/尖閣諸島は、日本が実効統治する日本固有の領土である

2011-08-31 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

野田新政権の課題は中国の圧力を跳ね返すことだ
【コラム】 2011/08/31(水) 15:45 佐藤優の眼光紙背:第110回
  野田佳彦新首相に対し、中国と韓国が強い牽制球を投げている。両国は「歴史認識カード」を対日関係に持ち込もうとしている。特に中国の動きが気になる。中国共産党中央委員会機関紙『人民日報』が運営する『人民網日本語版』の8月30日付論評における野田氏に対する評価を見てみよう。事実上、中国共産党中央委員会によって運営されている『人民網日本語版』が中国政府の立場に相容れない論評を掲載することはない。メディアの論評という形で中国の国家意思を日本に伝えているのだ。
  A級戦犯が日本の国内法によって犯罪人とされたのではないというのは、自民党政権時代から一貫した日本政府の公式の立場である。今後も野田氏は、日本政府の認識に基づき、日本の国内法に基づけばA級戦犯は戦争犯罪人でないという主張を続けるであろう。中国には中国の歴史観がある。それに関して日本政府は基本的に干渉すべきでない。また、外交は首脳会談、外相会談、実務者協議など、外交交渉を行う権限を行う人々の間で行われるべきだ。記者会見やマスメディアを通じて外交を行っても生産的な結果が生まれない。
  「人民網日本語版」の論評では、野田首相が支持率を上げるために「対中強硬カード」を菅政権よりもレベルアップして切る可能性を危惧している。それならば、そのような「対中強硬カード」を野田首相に切らせる口実を与えないように中国政府は中国の漁船や漁業監視船が尖閣諸島で行う挑発活動を停止させるべく全力を尽くすべきだ。尖閣諸島は、日本が実効統治する日本固有の領土である。日中間にはいかなる領土問題も存在しないという日本政府の原則的立場を中国政府も熟知しているはずである。中国側が、<日本が中国に対して強硬な態度を取れば取るほど、支払う代償も大きくなるのだ>と虚勢を張っても、客観的に見て日本の国力は中国よりも圧倒的に強い。中国の政治エリートは、日本に対して帝国主義的挑発を行っても、中国は裨益しないという認識を抱いているはずだ。日本の外務官僚は、あらゆるチャネルを通じて、「中国が尖閣諸島周辺で挑発活動を続けるならば、日中間の武力衝突に発展する」という警告を毅然と行うべきだ。それと同時に外務省が総力をあげて、外交に不慣れな野田首相を、記者会見やメディアを通じた外交に巻き込まないように、十全な防御態勢を構築しなくてはならない。(2011年8月31日脱稿)
  佐藤優(さとう まさる)
  1960年生まれ。作家。1985年に外務省に入省後、在ロシア日本大使館勤務などを経て、1998年、国際情報局分析第一課主任分析官に就任。
2002年、鈴木宗男衆議院議員を巡る事件に絡む背任容疑で逮捕・起訴。捜査の過程や拘留中の模様を記録した著書「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて」(新潮社、第59回毎日出版文化賞特別賞受賞)、「獄中記」(岩波書店)が話題を呼んだ。
2009年、懲役2年6ヶ月・執行猶予4年の有罪判決が確定し外務省を失職。現在は作家として、日本の政治・外交問題について講演・著作活動を通じ、幅広く提言を行っている。近著に「予兆とインテリジェンス」(扶桑社)がある。
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