オリンパス内部通報:「配転」逆転勝訴…原告が会見
社内の上司の行動を問題視する内部通報を行い、閑職に配置転換されたことの是非が争われた訴訟の東京高裁判決で、逆転勝訴した原告で精密機器メーカー「オリンパス」社員の浜田正晴さん(50)は31日、東京都内で記者会見した。
◇「適正な処遇を」
会社の「報復人事」を非難する全面勝訴に近い内容にも笑顔は少なく「一日も早く普通のサラリーマン生活に戻してほしい。会社は判決に従って、自分の適正な処遇を考えてほしい」と語った。
配転前は販売部署のチームリーダーだった。07年6月、重要な取引先の社員を引き抜く計画を知って、社内通報を決意した。以前にも同じ取引先から引き抜きを行い、取引先から非難された経験があったためだ。だが、コンプライアンス窓口の担当者は、上司に浜田さんの氏名を連絡、その後配転させられた。現在は、数百人いるフロアで同僚と会話することは、ほとんどない。「いろんな屈辱と苦難があった」と振り返る。
だが退職せずに裁判を続ける道を選んだ。会見では、今後もオリンパスで働く意欲を示し「力を発揮できるセクションに移してほしい。それが私自身、会社の発展のためになる」と訴えた。
また弁護団の中村雅人弁護士は「判決は各企業に『きちんと通報制度を運用せよ』というメッセージを投げた」と意義を強調した。【和田武士】毎日新聞2011年9月1日0時48分
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オリンパス訴訟 内部通報社員が逆転勝訴
2011年8月31日東京新聞 夕刊
社内のコンプライアンス(法令順守)窓口に通報したため不当に配置転換されたとして、大手精密機器メーカー「オリンパス」(東京都新宿区)の社員浜田正晴さん(50)が配転の無効確認などを求めた訴訟の控訴審判決が三十一日、東京高裁であった。鈴木健太裁判長は、請求を棄却した一審判決を変更し、配転先で働く義務がないことを確認し、会社と上司一人に慰謝料など二百二十万円の支払いを命じた。
鈴木裁判長は判決で、配転命令は内部通報に反感を抱いた上司が、業務上の必要性とは無関係に行ったと認定。「内部通報による不利益取り扱いを禁止した社内規定に反しており、配転命令は人事権の乱用にあたる」と判断した。
また、配転で昇格・昇給の機会を失わせ、人格的評価をおとしめたことに加え、配転後も、浜田さんに新人社員と同様の勉強やテストを受けさせるなどパワーハラスメントがあったとして、慰謝料の支払いなどを命じた。
一審東京地裁は、配転命令には業務上の必要性があったと判断し、パワーハラスメントも認めなかった。
判決によると、浜田さんは検査機器の営業を担当していた二〇〇七年六月、上司が取引先の社員を不正に引き抜こうとしていることを知り、コンプライアンス窓口に通報。窓口担当者が通報内容などを上司らに漏らした後、別の部署に三回にわたって異動を命じられた。
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〈来栖の独白〉
判決とは別に、この会社で引き続き働いてゆくのには強靭な精神力を必要とするだろう。かといって、どこの企業も、この人を採用(雇用)しないだろう。司法は、人間が生きていくうえでの「部分」でしかない。