10年目の審判:光母子殺害 差し戻し控訴審/下 死刑巡る論議 (毎日新聞 2008/4/17)

2008-04-19 | 光市母子殺害事件

10年目の審判:光母子殺害差し戻し控訴審/下 死刑巡る論議
 ◇遺族、積極的に発言
 「僕がなぜ、これほどメディアに出たか、正直に話します」
 光母子殺害事件(99年4月14日)の最高裁判決が2日後に迫った06年6月18日、遺族の本村洋さん(32)が神戸市で開かれたシンポジウムで、同じ立場の犯罪被害者たちに打ち明けた。「過去の判例では1審(無期懲役)で終わっていた事件。なぜ当事者である僕の意見を聞いてくれないのか。『おかしい』という声を、被害者も裁判に参加する権利を、司法に訴えたかった」
 「死刑」を巡る論議の渦中にいたのは、被告の元少年(27)の弁護団だけではない。本村さん宅にも多数の非難の手紙が届いた。「なぜ死刑を求めるのか」。この日の講演後、記者から質問を受けた本村さんは静かに答えた。「2人の命を奪われた夫として死刑を求める。それは目的ではなく、被告と社会に罪の重さを伝える手段です」
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 「本村さんの妻子もうちの孫娘も、殺される理由は全くない。(量刑は)結果の重大性で判断すべきだ」。東京都文京区で99年、娘の知人の女=懲役15年が確定=に孫娘(当時2歳)を殺された松村恒夫さん(66)は、本村さんが幹事を務める全国犯罪被害者の会「あすの会」の副代表幹事でもある。「故意に人を殺したら自分の命で償うべきだ」という考えは本村さんと通ずる。
 一方、愛知県などで3人が殺害された半田保険金殺人で83年に弟を亡くした原田正治さん(60)は、弟を殺した死刑囚=01年12月に執行=と交流。刑の執行停止を求め続けた。「僕も、最初は死刑になるべきだと思った。でも、刑が執行されると事件は終わったことになる。私たちは生きているのに」。元死刑囚を許すことはできない。「私に謝り続けること、被告にできるのはそれしかない。贖罪(しょくざい)は一生続けさせるべきだ」
 04年5月、宮崎市の自宅が放火され妻(当時46歳)と次女(同12歳)を亡くしたストッキ・アルベルトさん(52)=大阪府池田市=は、終身刑創設を求めて自費で全国を回る。「無期懲役なら20~25年で刑務所を出る。それで責任を取り、反省できているのか。妻と娘を殺した被告の手紙は言い訳だけだ」と言う。PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされ、収入も不安定だ。「望んだ事件ではないのに、死亡診断書など必要なお金は全部自己負担。わずかでも国が立て替え、被告が刑務所で働いて弁済すべきだ」と経済的支援の必要性を指摘する。
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 来年5月、裁判員制度が施行され、光母子殺害事件のような重大事件も対象となる。
 「もし自分が裁判員になったら」という問いに、本村さんは「被告が本当に反省しているか、本当に再犯をしないか悩み、寛容な判断をする場合は『被害者が事件から立ち直れるか』という悩みもわくだろう」と答えた。
 死刑の是非や被害者支援、刑事弁護の役割……。さまざまな問題を提起した裁判は、22日に判決を迎える。
毎日新聞 2008年4月17日 東京朝刊
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〈来栖のつぶやき〉
>無期懲役なら20~25年で刑務所を出る。
 どうして、刑期についての誤解がこれほどに強いのだろう。現行の無期懲役刑は、実質、終身刑である。この現実が、殆ど理解されていない。
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