死刑執行、浮かぶあの顔 元裁判員苦悩「殺人行為だ」
編集委員・大久保真紀 朝日新聞デジタル 2016年4月22日09時12分
写真・図版;「名前と顔を出して話すのは、僕の苦しみも含めて知ってもらいたいから。裁判員裁判で初めて死刑が執行された判決にかかわった裁判員としても、責任があるかなと思う」。米澤敏靖さんはよく足を運ぶという自宅近くの海を見ながら言った=神奈川県横須賀市、大久保真紀撮影
「執行されたことは、いまでも信じたくない」――。川崎市でアパートの大家ら3人を刺殺した津田寿美年(すみとし)・元死刑囚(当時63)に昨年暮れ、死刑が執行された。2009年に始まった裁判員制度の対象事件では、初めての執行。5年前、死刑の判断に加わった元裁判員が執行後初めて、重い口を開いた。
「死刑がひとごとではなくなってしまった。一般市民が人の命を奪う判決にかかわるのはきつい」。神奈川県横須賀市在住の元裁判員、米澤敏靖さん(27)は心の内を明かした。
思い出したくないのに、フラッシュバックのようによみがえってくる。4カ月前に東京拘置所で刑を執行された津田元死刑囚の顔だ。「法廷での無表情な顔が、浮かぶんです。最期はどんなことを思ったのだろうかと考えてしまう」
津田元死刑囚に、検察の求刑通り死刑が言い渡されたのは、11年6月17日。米澤さんは当時、大学4年生だった。
「判決は遺族感情や被告の生い立ちを十分に考慮した結果。自分のやったことを反省し、真摯(しんし)に刑を受けてもらいたい」。判決後の会見でそう話した。死刑制度はあった方がいいし、死刑にせざるを得ないケースもあると思っていた。
翌月、津田元死刑囚が控訴を取り下げ、判決が確定。「悩んで出した結果を受け入れてくれた」と感じて、ほっとした。
まもなくして、裁判員の経験を話した親しい友人にこう問われた。
「人を殺したのか?」
◎上記事は[朝日新聞デジタル]からの転載・引用です
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◇ 判決後に裁判員「市民には重い決断。死刑事件に裁判員制度は適用しないで…」⇒初の死刑執行 2015/12/18
◇ 2人に死刑執行 津田寿美年死刑囚(裁判員裁判で初の刑執行)と若林一行死刑囚 2015/12/18 岩城光英法相
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◇ 裁判員法=最高裁や法務省が言う「国民の常識を裁判に反映させる」とは書いていない
◇ 【裁判員制度のウソ、ムリ、拙速】 大久保太郎(元東京高裁部統括判事) 『文藝春秋』2007年11月号
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◇ 裁判員裁判 2011 審理相次ぐ見通し 上田美由紀・木嶋佳苗・市橋達也・高見素直・菅田伸也・津田寿美年被告 2011-01-12
(抜粋)
「洗濯機がうるさい」と男が大家ら3人刺殺
スポーツ報知 2009年5月31日06時02分
送検される津田寿美年容疑者=青山謙太郎撮影(読売新聞)
神奈川県警幸署は30日、川崎市幸区のアパートで大家の男性と弟夫婦の3人を刺殺した殺人未遂の容疑で、住人の男(57)を現行犯逮捕した。調べに対し、男は「洗濯機やドアの音がうるさかった」と動機を供述している。
休日でにぎわうJR川崎駅直結のショッピングモール「ラゾーナ川崎」から、北西へわずか約300メートルの地点。商店街の片隅にある木造アパートで3人は殺害された。
幸署によると、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された無職・津田寿美年容疑者は30日午前6時50分頃、居住する川崎市幸区中幸町のアパート「幸栄荘」1階で大家の柴田昭仁さん(73)とアパートに住む弟の嘉晃さん(71)、嘉晃さんの妻・敏子さん(68)の3人を柳刃包丁で刺した疑い。
同容疑者は逮捕時、泥酔状態で自室の畳に凶器とみられる刃渡り約20センチの包丁を突き刺して座っていた。嘉晃さんと敏子さんはそれぞれ窓際で横向きになって倒れ、昭仁さんはアパート前であおむけで倒れていた。昭仁さんの次女(39)が3人が刺されているの発見し、110番。3人は搬送先の病院で死亡が確認されたため、同署は殺人容疑に切り替えた。
津田容疑者は、昭仁さんの自宅に隣接するアパート1階の家賃3万円の角部屋に5年前から入居。同じ1階の2部屋に嘉晃さん夫妻が住んでいた。同署によると、津田容疑者は「柴田さん一家に長年の恨みがあったので刺した」と容疑を認めている。
同署や近隣住民によると、津田容疑者は隣室に住む嘉晃さん夫妻について数か月前から「未明から洗濯機を回してうるさい。不眠症になっている。洗濯機に穴を開けてやる」「ドアを閉める音がうるさい」などと不満を漏らしていた。階段の上り下りなどの生活音をめぐって夫妻と口論になることも多かった。さらに「アパートの家賃を滞納して(昭仁さんに)注意された」「小言を言われてうるさい」とも話していた。「嘉晃さんから『(自分が)大家の弟ってことを忘れているだろ』と言われて怒っていた」との証言もある。
「右腕に入れ墨があるから、近所でも怖がられていた」(商店街の住民)という津田容疑者は酒に酔ってトラブルを起こすこともあったようで、ある男性は「知り合いが頭突きされたことがある。近寄りがたい感じだった」と話す。前日29日夜も行きつけの飲食店で昭仁さんらへの不満を漏らしていたという。
(2009年5月31日06時02分 スポーツ報知)
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