弁護側最終弁論(2009.8.5)
結論
本件については、一般の殺人事件よりも軽い刑を言い渡すべきである。
本事件の概要
本件はもともと、公衆用道路の占拠や自宅庭への侵入などを行っていた被害者に対し、不満を持っていた被告が犯行当日、被告の庭先に置いていたペットボトルを倒されたことを注意したのを契機として、被害者と口論となった。
被告は被害者に「てめぇが倒しておいて人のせいにするんじゃねぇ。馬鹿野郎」「生活保護を受けているくせに」などという辛辣(しんらつ)な言葉を浴びせられて激高し、言葉で言っても聞かない被害者に対し、ナイフで脅せばひるむだろうと思った。
鞘を抜いて見せたところ、被害者はひるむどころか逆に「やるのか。やるならやってみろ」と被告のあごや肩につかみかかろうとしたため、「もはや刺すしかない」と思い、所持していたナイフで被害者の上半身を刺した。その後は抵抗する被害者ともみ合いとなり、無我夢中で被害者の背中を刺した結果、被害者を出血性ショックにより死亡させたものである。
被告の殺意の程度は、被害者を死に至らせるかもしれないという認識はあったものの、被害者を確実に殺害しようとまでは思っておらず、現実に、とどめを刺すような行為は行っていない。
本件は、まさに被害者の誘発的な言動をきっかけに生じたけんか口論の末の偶発的な事件であり、量刑を判断する上では、過去の裁判例で軽い刑が科されているケースと類似しており、本裁判でも、その事情は考慮されるべきである。
以下、各争点について弁護人の意見を述べる。
「殺意」の内容とその認定にかかわる被告の言動について
(1)検察官は被告の殺意の程度は「人が死ぬ危険性が高い行為をそのような行為であると分かって行った」と主張し、その根拠として以下の事実を指摘している。
凶器の形状▽傷の位置や程度、傷の数▽犯行態様▽以前からトラブルがあり、本件当日、被害者がナイフを見てもひるまなかったことが殺害動機であること▽犯行時の言動として、被告が「ぶっ殺す」と言い、犯行後もナイフを持ったまま被害者を追いかけたという事実があること。
(2)凶器の形状、傷の位置や程度、犯行態様についての客観的事実は争わない。
ただし、被告は傷の位置や程度、犯行態様についての正確な認識はない。記憶にあるのは、被害者の上半身を最初に刺したことのみであり、その他の傷については無我夢中であったため記憶にない。
(3)犯行動機についての検察官の指摘は誤りである。
被害者一家が植木鉢やオートバイで公衆用道路の通行を邪魔していたこと、被害者が被告方の庭に無断で侵入しペットボトルを倒したりしたことは、犯行当時始まったことではなく、何年も前からの出来事である。
本件犯行の背景事情ではあるが、直接の犯行動機ではない。
本件犯行の動機は、直前の被害者の言動である。
被害者は、事件後に長男が警察に供述したように、言葉が強く▽気が強く▽余計な一言を言う▽誰かとけんかして終わりそうになったときにまた話を蒸し返してけんかが終わらない▽近所の人ともしょっちゅうけんかする▽相手にカチンと来ることを言われると、相手の急所、一番弱いところを突いてしまう。
この被害者の性格から出た言動により、被告の犯行が誘発されたことは明らかである。
被害者の長男は証人尋問で、検察官の「今考えて、被告のお母さんへの感情はどのようなものだったと思いますか」という質問に対し、生活保護を受けている被告が家を建て替えた被害者一家に対し、ひがみ、ねたみがあった旨証言している。
被告は犯行直前、被害者に対しペットボトルのことを注意しただけであるが、それを契機に被害者と口論となり、被害者は被告に対し、「国の世話になっていてそんなことを言うんじゃない」と、被告が生活保護を受けていることについてばかにしたような態度をとった。
長男の証言からは、被害者を含め被害者一家が日頃から被告をそのように見ていたことが容易に伺われる。
事件直前に被害者が被告の生活保護受給について言及したことは、長男が事件直後の5月1日、警察に供述した被害者の性格そのものから出た言葉である。
すなわち、「相手にカチンと来ることを言われると、相手の急所、一番弱いところを突いてしまう」という被害者の性格が具体的な言葉として、被告に浴びせられたのである。
被告は、被害者一家による道路占拠などについて過去何度も被害者に注意しても逆に強く言い返され、近所からも「(被害者から)言い負かされて逃げ帰ってきた」とうわさされたこともあった。
被告は平成18年7月、前刑での出所以降は注意することをあきらめ、なるべく被害者と顔を合わさないように努力していた。
たまたま、本件当日、被害者と顔が合ってしまった被告が、以前から不満に思っていたペットボトルの件を持ち出したところ、また同じように言い返され、ばかにされてしまった。
被告の犯行動機は、被告とのけんか口論の末、被害者自身が発した被告への侮蔑(ぶべつ)的な言辞や犯行をあおる行為が被告の我慢していた感情を爆発させる原因となり、それが犯行の動機となったものであり、その動機形成過程には被害者にも大いに落ち度があるものといえ、量刑上考慮すべき事情である。
(4)次に、直接の犯行動機ではないが、背景事情として、被害者一家が被告を含めた近隣住民の道路通行を妨害していたことは、証拠上明らかであり、被告が不快に思っていた食器で路上をこする音についても、目撃者の証言からもその事実が認められる。
被害者がスクーターの方向転換の際、被告方の庭へ侵入し、ペットボトルを倒したことがあった事実については長男は否定しているが、長男は日中に仕事をしており、被害者は深夜に帰宅し夕方出かけているため、日常の生活時間帯が異なっていること、また、検察官作成の現場見取り図を見れば明らかなように、事件当日も、被害者のスクーターは被告方の庭と接する道路の反対側に置かれ、北側を向いていた。スクーターの全長は図面上明らかなように2メートルあり、道路の幅は2・3メートルしかない。
しかも、被害者方の隣地の空き地は、弁護人作成の写真撮影報告書の写真を見れば明らかなように、第三者の侵入を防ぐためにロープが張られており、被害者が北向きに駐車していたスクーターを方向転換させるために、日常的に被告の庭に入っていたことは容易に推認でき、その際、庭に置いてあったペットボトルを倒したとしても不思議ではない。
長男は捜査段階では、「少々幅を取りすぎだなと思った」と供述していたものの、法廷での証言ではその供述を翻している。
被害者一家が、近隣に迷惑をかけるような行為をしていることは証拠上明らかであるにもかかわらず、被害者の家族全員が、社会生活上のルールに対する意識が低く、何も改善の努力をしようとしなかったことが、被告の犯行の背景となったことは明らかであり、被害者側に落ち度のある事情として、量刑上考慮されるべきである。
(5)被告と被害者のけんか口論は激しいものであった。
被告と被害者のけんかを聞いた長男も、言葉は明確ではないにしても被害者が被告に対し、言い返していることは耳にしている。
10メートル近く離れた家に居住する長男は中学生の弟とともに被告と被害者の怒鳴り声を耳にし、何が起きたのか窓から外をうかがった。もっと離れた場所に居住する目撃者も、午前11時45分ごろから被告と被害者の口論を家の中で聞いている。
目撃者が110番通報をしたのが11時50分ごろであるため、被告が被害者に対してナイフで刺傷行為を行うまで少なくとも5分程度は両者の間でけんか口論が続いていたものと推認できる。
近隣住民が家の中にいても聞こえたほど、両者の怒鳴り合いは相当激しかったものと推認されるが、この原因は、前述したように、被害者が理不尽かつ被告の感情を逆なでするような辛辣(しんらつ)な言葉を投げかけたことにある。
被告は筋の通っていることを言っているにもかかわらず、決して謝ろうとしない被害者の態度に激しく憤りを感じ、口で言ってもかなわないと思い、ついにナイフを持ち出してしまった。
被害者は被告がナイフをみせても、ひるむどころか、過去と同じように「おぉ、やるのか。やるならやってみろ」と言いながら、被告の方に一歩進み、被告の肩やあごの辺りにつかみかかろうとしたのである。
被害者は女性であるが、整体師をしており、被告より5歳年下であった。
71歳の老人である被告より、体力的には被害者の方が上であったことも推認できる。
被害者の方が「やるならやってみろ」と被告の行為を誘発させたのである。
その瞬間、被告は「刺すしかない」と思い、右手に持ったナイフを被害者の上半身に向けて突きだし、結果として左胸の上部の辺りを刺してしまった。
まさに、けんか口論の末、被害者の言動が誘発した突発的かつ衝動的な犯行である。
(6)検察官が指摘する犯行時の言動について、目撃者は法廷で被告の「ぶっ殺してやる」との声を耳にしたと証言している。
これがどの時点での声なのかは、目撃者は直接見ていない。
目撃者は、平成21年5月19日に行われた検察官からの事情聴取で、被告が「ぶっ殺してやる」という声を発した後、女性も言い返した声を聞いたと述べている。
これについては、目撃者は法廷で記憶にないと証言した。
目撃者証言は、事件から間がない時期に供述した内容を否定するなど信用性に乏しい。
ただ、仮に被告から「ぶっ殺す」という言葉が出たとしても、このような言葉だけで、必ずしも殺意の表れと評価することはできない。
けんか口論の際に、つい発した言葉に過ぎないのである。
(7)次に、検察官が指摘する犯行後の被告が被害者を追いかけた事実についても、被告は明確な記憶がない。
この点については、目撃者は、被告が「クソババァ」と捨てぜりふを吐いて、自宅の方に向きを変えてゆっくり歩いて帰ったと証言している。
目撃者はその時点で家から出て、その直後には被害者を救助に向かっており、その状況からしても被告が被害者に対し執拗(しつよう)に危害を加えるような雰囲気はなかった。
おそらく、被告は被害者の様子を見に行ったに過ぎないものと推認でき、検察官が指摘するような行為の「執拗」性は認められない。
もちろん、被害者に対し、とどめを刺すような行為はしておらず、現に被告は警察に出頭するまでは、被害者が死亡したことの認識はなかった。
犯行態様以外の量刑上考慮すべき事情
(1)被告は犯行後、警察に任意出頭しようとしたが、逮捕された後の自宅の後始末をしてもらう友人を捜すために大井競馬場に行った。
重大な罪を犯した人間の行動としては一見奇異に思われる行動であるが、家族がなく、相談できる友人もほとんどいない被告が、長く懲役刑に服することを覚悟したための行動であり、任意出頭しようとしたことと矛盾するものではない。
(2)被告は逮捕後、素直に事実を認めている。
(3)被告は確かに前科が多数あるが、古い事件ばかりであり、直近のものも飲酒運転や交通事故であり、被告の粗暴性をうかがわせるものではない。
傷害致死の事件は45年くらい前のものであり、また、プロレスごっこの際の事故である。けんかや、一方的な暴行の結果ではなく、現実に刑も重いものではなかった。
(4)遺族に対する被害弁償や慰謝の気持ち
被告は被害者の遺族に対しては、慰謝の気持ちを表したいと犯行後から思っていたが、被害者参加が決まったことから直接言葉で表したいと思い、手紙を出すのを差し控えていた。
また、被害弁償のためには自宅の土地建物を処分するしかないが、手続きを代わって行う者がいないため、実現できないでいる。
本裁判後の賠償命令制度を利用して賠償に応じる予定である。
(5)被告は捜査段階から事実を認め、法廷でも反省している旨述べている。
(6)被告は現在72歳であり、今回の刑に服すれば年齢的にも再犯の可能性は極めて低い。
年齢的に見ても、長期の刑罰を言い渡す必要性はない。
求刑に対する意見
検察官は本件で16年を求刑するが、前述のように被告には酌むべき事情も多く、また犯行態様を見ても、弁護人としては検察官の意見は不当に重いものと思量する。(産経ニュース2009.8.5)
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裁判員初公判 弁護側冒頭陳述
2009.8.3
公訴事実については争わない。
被告人の殺意の内容は、ナイフで人を刺す行為によって人が死ぬかもしれないということを認識していたに過ぎない。
被告人の殺意の程度は、被害者が死ぬことまでは意欲しなかった。
事件の経緯
被害者の家族構成は、長男、次男が同居しており、被害者がスクーター、次男がバイク2台、スクーター1台を所有していた。
被害者と被害者の家族は長年、バイクやスクーターを複数台所有し、幅員約2・3メートルしかない公衆用道路を一部ふさいでいた。
被害者は同じく道路にはみ出して、植木鉢を設置し、同じく一部の通行を邪魔していた。
被害者は植木の水やりの際、道路にたまった水を金属製の食器ですくい、その際、コンクリートやアスファルトの表面をこするため、耳障りな騒音を立て、注意しても止めなかった。
被害者は使用するスクーターの方向転換のため、被告宅の庭に無断で入ることがしばしばあった。
被害者はスクーターで方向転換する際、被告が猫よけのために設置していた水を入れたペットボトルを倒したりつぶしたりしたことが何度かあったが、それを直そうともしなかった。
被害者は被告の抗議や注意に対しても謝ることなく、逆に怒鳴り返した。近所の人からは、被告が被害者に言い負かされて逃げて帰ったとうわさされたこともある。被告はここ数年、被害者となるべく顔を合わせないようにしていた。
犯行の経緯
被告人は前日も大井競馬場まで行ったが、深夜まで酒を飲んだ。犯行当日も大井競馬場に行く予定で、午前11時ごろ出かけようとした。
準備を整え、外を見ると被害者が植木の手入れをしており、顔を合わせたくないため、被害者が家に入るのをしばらく待ったが、被害者はなかなか家に入らなかった。
そろそろいなくなっただろうと、被告が外をのぞいたところ、被害者と目があってしまい、仕方なく、外に出て、「ペットボトル倒したら直しておいてくれ」と注意した。
それに対し、被害者は謝ることはせず、逆に「おれがやったんじゃねぇ。そんなもの知るか。てめぇが倒しといて人のせいにするんじゃねぇ。ばか野郎」と強い口調で怒鳴り返した。
その後、両者が怒鳴り合いとなった後、被告は被害者が謝罪しないことに腹を立て、自宅に引き返し、鞘付きのナイフを取り出し、被害者の前まで行き、鞘を抜いてみた。
被害者はひるむどころか、「おぉ、やるのか。やるならやってみろ」と言いながら、被告の方に一歩進み、被告の肩やあごの辺りにつかみかかろうとした。
その瞬間、被告は「刺すしかない」と思い、右手に持ったナイフを被害者の上半身に向けて突きだし、結果として左胸の上部の辺りを刺してしまった。その後は、被害者も抵抗し、被告も興奮してナイフで切りつけたため、数カ所の切り傷や刺し傷を負わせてしまった。被告が、被害者の背中方向から心臓の肺動脈付近を刺したことについては明確な記憶はないが、被告が刺した傷であることは認める。
被告はナイフで被害者を刺した際、人が死ぬかもしれない行為を行っている認識はあったが、「被害者が死んでほしい」とは思わなかった。そのため、被害者を確実に殺すため、とどめをさすような行為は行っていない。
犯行直後の様子
被告は被害者に抵抗されもみ合いとなり、最後は押し返されてアスファルトの路面に背中から倒れ、あおむけになった。
被告が気がついたときには、被害者は南方向にある近隣宅の前に立っており、被害者の発する「殺される」「人殺し」という声を聞いた。
被告は被害者の声を聞いて、われに返り「取り返しのつかないことをしてしまった」と思った。
検察官の主張するように被害者を追いかけてはいない。
犯行後の経緯
被告は犯行後、西新井署に出頭しようと考えた。
被告は署に行く途中、今回行った行為では長く身柄が拘束されると考え、被告が逮捕された後の家の後始末を頼む人間が必要と考え、大井競馬場に行けば、競馬仲間に会えると思い競馬場に行ったが、誰とも会えなかった。
仕方なく、1人で出頭しようとしたが、バスの車窓から、小学校時代の友人宅の明かりが見えたため、途中下車し友人宅を訪ね、友人と徒歩で署に向かう途中逮捕された。
量刑上考慮すべき事情
本件は、もともと被害者側に主に原因がある紛争が発端であり、被害者が近隣に迷惑をかけないような生活をしていれば起きなかった犯罪である。
また、被告が注意したことに対し、被害者は謝罪することなく、逆に怒鳴り返したことも原因となっている。
確かに被告はナイフを取り出し脅したが、被害者は「おぉ、やるのか、やるならやってみろ」と逆につかみかかろうとするなど、犯行を誘発する言動をした。
被告の犯行は、突発的なものであり、計画的ではなかった。
また、被告は被害者が死ぬことを意欲しておらず、執拗(しつよう)にとどめをさすような行為もしていない。
被告は警察に任意出頭しようとした。逮捕後は、素直に事実を認めている。
被告は確かに前科があるが、本件の事件と直接繋がるような前科はない。(産経ニュース2009.8.3)
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初の裁判員裁判 開廷 立証、視覚に訴え 東京地裁 殺人事件を審理
2009年08月04日 19:18
6人の有権者が重大な刑事事件の公判に加わる全国初の裁判員裁判が3日午後、東京地裁(秋葉康弘裁判長)で開かれた。市民が法壇に並ぶのは1943年の陪審制度停止以来、66年ぶり。午前中の裁判員選任手続き(非公開)で決まった女性5人、男性1人が、裁判官3人とともに殺人事件を審理した。
検察、弁護側とも視覚に訴える図や写真を多用し、難解な法律用語の使用を避け「です、ます調」で話すなど裁判員に分かりやすい主張を展開。審理は計約2時間で終わったが、3回の休憩を挟み裁判員の負担を軽減した。判決は6日。
目撃者の証人尋問もあったが、裁判員から質問は出ず、遺体の写真に目を背ける裁判員もいた。
審理対象は、東京都足立区で5月、はす向かいに住む韓国籍の整体師文春子さん=当時(66)=を刺殺したとして、無職藤井勝吉被告(72)が殺人罪に問われた事件。被告は起訴内容を認め、量刑の判断が焦点になる。
この日、東京地裁で最も広い104号法廷(傍聴席98)に入った裁判員6人は、裁判官3人を挟むように左右二手に分かれ、緩い円弧状の法壇に着席。正面向かって左側に女性の裁判員3人、右側に女性裁判員2人、男性の裁判員1人が一列に並んだ。
補充裁判員3人はいずれも男性で、その後方に座った。
予断を与えないよう、裁判員の入廷前に被告の手錠と腰縄が外された。
弁護側はモニターで図解を見せながら、以前からの近隣トラブルが背景にあり、積極的な殺意はなかったと訴えたのに対し、検察側は「ほぼ確実に死ぬ危険な行為と認識して刺した」と反論。
検察側は「殺意には強いものから弱いものまで濃淡がある」と平易な言葉で述べ、イラストなどで致命傷の刃の向きや深さが分かるように工夫、強い殺意があったことを訴えた。
裁判員は双方の主張に真剣に耳を傾け、メモをとる姿も見られた。
検察側は証拠説明の中で「ショックでご覧になりたくないかもしれないが、重要な証拠なので見てください」と断り、被害者の遺体の写真を裁判員らの手元にある小型モニターに表示。顔を背けるようなそぶりを見せる女性裁判員もいた。
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●事件の概要
東京地裁で3日始まった裁判員裁判第1号の事件概要は次の通り。
検察、弁護側双方で争いのない点として、藤井勝吉被告(72)と被害者の女性は幅約2・3メートルの路地を挟んではす向かいに居住。被告は数年前から、女性が自宅前の路地にバイクや植木鉢を置いているのを邪魔だと思っていた。注意をしても言い返され、女性を嫌っていた。
5月1日午前、被告が外出した際、自宅前の路上で被害者と出くわし、注意をすると、口論になった。被告はいったん自宅に戻り、持ち出したサバイバルナイフで、被害者の胸や背中などを何度も刺して殺害した。
検察側は「被告は口論で『ぶっ殺す』と言い、刺した後も被害者を追い掛けるなど、強い殺意に基づく執拗(しつよう)で残忍な犯行」と主張。弁護側は「口論で『やるならやってみろ』と言われ、突発的に刺した。死んでほしいとは思わなかった。殺意は弱い」と反論している。
=2009/08/04付 西日本新聞朝刊=
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「生活保護を貰っているくせに!」
(文句いえる身分か!)
そんなふうにいわれれば、おれは、躍りこむぜ。
コメント、ありがとう。以前のTBも、心より嬉しく感謝しています。
本件と裁判員裁判につきましては、ファイルを作ったりしながら、更に考えてゆきたいと思っています。許し難い悪制度が発足してしまったものです。ろくに審理をさせないということは、被告人のみ、不利益を被るということです。16年の求刑、15年の判決・・・何もかも唖然としてしまいます。
「ホームレスのくせに!」
「生活保護を貰っているくせに!」(文句いえる身分か!)
忍びがたい暴言です。心が波立って抑えることができせん。読めば読むほどに、ひどいです。