中国が軍備拡張 /2012年 国防予算 8兆7千億円/日本にシーレーンの危機管理シナリオはあるか

2012-03-05 | 国際/中国/アジア

中国が軍備拡張、日本にシーレーンの危機管理シナリオはあるか?
 中国の全国人民代表大会第5回会議が3月5日から開かれる。国防予算が注目の的になっているが、日本もそれに対応したシーレーンの危機管理シナリオを策定しておくべきではないだろうか。
 藤田正美の時事日想:Business Media 誠 2012年03月05日 07時59分 UPDATE
 中国の国防予算は1989年以来ほぼ一貫して10%前後の高い伸び率を保ってきた(リーマンショック後の2009年の公表数字も7.5%増だった)。ほぼ5年で倍になるようなペースである。全人代の李肇星報道官(前外相)はこのことについて、「中国は沿岸線も長く、広大な国土を守らなければならず、この金額でもGDP(国内総生産)の1.38%と、ほかの大国に比べて多いわけではない」と強調している。
  もっとも中国の国防予算の数字が実態とはかけ離れたものだということも広く言われている。例えば、2011年の米国防総省による連邦議会への報告書によれば、2010年の中国国防予算は公表数字のほぼ倍の1600億ドル(約12兆8000億円)に達するとしている。軍事予算の透明性を周辺各国から要請されていることから、中国政府の姿勢にも変化が現れていると評価されているが、それでも今年の予算も「過少申告」されていることは間違いあるまい。
  周辺諸国にとって大きな問題は、中国が隠そうともしない中国の資源ルートへの野心だ。とりわけ現在の焦点は南シナ海。ここではフィリピン、ベトナムなどが中国との領土紛争を抱えている。中国がこの地域を「核心的利益」として西沙諸島や南沙諸島などの領有権を主張しているからだ。
  このため中国人民解放軍は空母機動部隊を編成することを当面の目標とする。旧ソ連から購入した空母は改装を終え、試験航海を繰り返しているほか、自前でも2隻の空母を建造中だ(実際に、運用されるまでには数年はかかるだろうし、3隻の空母を保有しても同時に任務に就くのは1機動部隊だとある軍事関係者は言う)。
  中国人民解放軍海軍のこうした戦力増強は、中国が資源の輸入国になったからである。国益を守るために、原油や鉱物資源がアフリカや中東から運ばれてくるシーレーンを防衛するというわけだ(日本でもシーレーン防衛が議論されたことはあるが、自衛隊の能力を大きく超えることもあって立ち消えとなった)。つまり中国海軍の任務は、従来の沿岸防衛から遠洋へ拡大したのである。
■日本も危機管理のシナリオを
  こうした中国海軍の「質的変化」にとって、最も警戒すべき相手が米海軍であることは言うまでもない。このため中国人民解放軍は米海軍機動部隊を寄せ付けないために、弾道対艦ミサイル(東風21D)を開発した。射程が3000キロとされ、「これを防ぐ有効な手段が米軍にない」と軍関係者は言う。そうなると空母は東シナ海に入ることが難しくなり、大幅に米海軍の能力が制限されてしまう。
  日本にとっては、米海軍の行動が制限されることも大きな問題だし、南シナ海の自由航行が阻害されるかもしれないことも大問題である。日本に入ってくる原油の約8割が南シナ海を通過する。もちろん原油だけではない。そのほかの資源もかなりの量が南シナ海を通って運ばれてくる。
  ある米軍関係者は、「だから戦前の日本軍は南方へ進出した。その状況は今でも変わらないのに、南シナ海への日本のコミットは弱い」と言う。むろん海上自衛隊そのものが南シナ海に「進出」するということではなく、日本が南シナ海の周辺諸国とどのような関係を結び、中国をけん制するのかということだ(そうした観点から見た時、沖縄の普天間基地移設問題で日米間をギクシャクさせた鳩山元首相の責任はあまりにも重い)。
  李肇星報道官がどう言いつくろうと、中国の軍事予算の膨張が周辺諸国に緊張をもたらしていることは間違いない。第二次大戦で敗戦国になって以来、とかく我々は安全保障問題から目をそむけがちだ。目をそむけることで経済的繁栄を謳歌してきたことも事実である。
  しかし東アジアから東南アジアにかけての軍事バランスが大きく変化することが、日本にどのような影響をもたらすのかということを真剣に見つめる必要がある。変化の過程では必ず緊張が生まれる。そして場合によっては、当事者が意図しない力が働いて、緊張がやがて暴発する可能性もある。
  緊張状態が生まれた時、日本がどうするのか。危機管理のシナリオを作っておかないと、いざという時に状況に対応するだけで手一杯になってしまうかもしれない。福島第一原発のオフサイトセンターは、放射能を防ぐことができず、また停電時の対策もなかったために、何の役にも立たなかった。「最悪のシナリオはありえない」ということが何の根拠もない楽観論だったことが今さらながら身にしみる。まさか一国の将来がかかる安全保障で根拠のない楽観論に身を任せているなんてことはないと思いたいが、どうだろうか。
著者プロフィール:藤田正美
 「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年~2000年に同誌編集長、2001年~2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
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「中国の正体」に気がつかない日本 米国の専門家が分析する中国軍拡の最終目標とは2012-02-08 | 国際/防衛/(中国・・・)
 「中国の正体」に気がつかない日本 米国の専門家が分析する中国軍拡の最終目標とは
 JBpress 2012.02.08(水)古森 義久
 米国の国政の場では、2012年となっても中国の軍事力増強が依然、重大な課題となったままである。いや、中国の軍拡が米国の安全保障や防衛に投射する重みは、これまで以上となった。今や熱気を増す大統領選挙の予備選でも、対中政策、特に中国の軍拡への対応策は各候補の間で主要な論争点ともなってきた。
 中国の軍拡は、わが日本にとっては多様な意味で米国にとってよりも、さらに切迫した課題である。日本の安全保障や領土保全に深刻な影を投げる懸念の対象だと言える。
 だが、日本では中国の軍拡が国政上の論題となることがない。一体なぜなのか。そんな現状のままでよいのか。
■中国はこの20年間、前年比で2桁増額の軍拡を続行
 私はこのほど『「中国の正体」を暴く』(小学館101新書)という書を世に出した。自著の単なる宣伝とも思われるリスクをあえて覚悟の上で、今回は、この書が問う諸点を提起したい。中国の史上前例のない大規模な軍事力の増強と膨張が、日本にとって明らかな脅威として拡大しているからである。今そこにある危機に対し、日本国内の注意を喚起したいからでもある。
 この書の副題は、「アメリカが威信をかける『赤い脅威研究』の現場から」。本書に付けられたキャッチコピーの一部から、概要が分かっていただけると思う。
「450発の核弾頭、空母、ステルス戦闘機、衛星破壊兵器、宇宙基地、サイバー攻撃・・・」
「増大するその脅威はかつてのソ連を凌ぐ!」
「今、アメリカが最も恐れる国」
「ワシントン発! 中国研究の先鋭たちを徹底取材」
「サイバー攻撃に関する限り米中戦争はもう始まりました」
 この書の主体は米国側の政府や議会、さらには官民の専門家たちが中国の軍拡をどう見るのかの報告である。
 中国が公式に発表する国防予算だけでも、ここ20年ほど一貫して前年比で2桁増の大幅な増額を果たしてきたことは周知の事実である。その上に公表されない領域での核兵器や弾道ミサイル、空母、潜水艦、駆逐艦、戦闘機などのハードウエアの増強がさらに顕著なのだ。
■中国の軍拡は米国や日本への明らかな挑戦
 中国の軍事の秘密の動向は米国でしか実態をつかめない部分が大きい。なにしろ唯一のスーパーパワーたる米国の情報収集力は全世界でも抜群なのである。日本が足元にも及ばないほどの諜報の能力をも有している。人工衛星や偵察機による偵察、ハイテク手段による軍事通信の傍受、あるいはサイバー手段による軍事情報の取得などの能力は米国ならでは、である。
 私は『「中国の正体」を暴く』で、米国の中国軍事研究の専門家たち少なくとも12人に詳細なインタビューをして、彼らの見解をまとめて発表した。
 その結果、浮かび上がった全体像としては、第1に、中国の大軍拡が疾走していく方向には、どう見ても米国が標的として位置づけられているという特徴が明白なのだ。
 第2には、中国の軍拡は日本や台湾に重大な影響を及ぼし、その背後に存在する米国のアジア政策とぶつかるだけでなく、米国主導の現行の国際秩序へのチャレンジとなってきたという特徴がさらに屹立する。
 つまり、中国の軍拡は米国や日本への明らかな挑戦なのである。米国の専門家たちの大多数は少なくともそう見ているのだ。
 こうした特徴は私が本書で最初に紹介した米国防総省相対評価(ネットアセスメント)局の現職顧問、マイケル・ピルズベリー氏の次のような言葉にまず総括されていた。
 「中国がなぜ軍事力を増強するのか。いくつかの事実を見ると答えが自然に浮かび上がります」
 「まず現在、中国人民解放軍が開発を急ぐ対艦弾道ミサイル(ASBM)は明らかに米軍の原子力空母を標的にしています。この特定のミサイルが長距離で狙う艦艇というのは、米国しか保有していないのです」
 「中国は2007年1月に人工衛星を破壊するミサイルを発射し、見事に標的の破壊に成功しました。この種の標的も米軍以外にはありません。米軍が実際の軍事作戦で人工衛星の通信や偵察の機能に全面依存することを熟知しての動きでした」
■中国の軍拡の目標は台湾制圧の先にある
 中国の軍拡の最終目標については、従来、米国の専門家たちの間で意見が2つに分かれていた。
 第1はその究極目標が台湾有事にあるとする意見だった。中国は台湾を自国領土と完全に見なしており、その独立宣言などに対しては軍事力を使ってでも、阻止や抑止をすることを宣言している。中国はそうした有事のために台湾を侵攻し、占領できる軍事能力を保持しているという見方である。台湾有事以上には軍事的な野望はないという示唆がその背後にはあった。
 第2は、中国が台湾有事への準備を超えて、軍事能力を強化し、東アジア全体や西太平洋全域で米国の軍事プレゼンスを抑え、後退させるところまでに戦略目標を置いているのだ、という見解である。
 しかし私が2011年全体を費やして実行した一連のインタビューでは、米国の専門家たちの間では、すでに第2の見解が圧倒的となったことが明白だった。
 つまり中国は米国や米軍を主目標に位置づけて、台湾制圧を超えての遠大な目標に向けて軍事能力を強めている、という認識が米国でのほぼコンセンサスとなってきたのだ。
■日本に対する歴史的に特別な敵対意識
 では、中国の軍拡は日本にとって何を意味するのか。米国側の専門家たちが日本がらみで語ったことは注視に値する。
 ヘリテージ財団の首席中国研究員、ディーン・チェン氏は以下のような考察を述べた。
 「中国はもちろん日本を米国の同盟国として一体に位置づけ、警戒をしています。しかしそれだけではない点を認識しておく必要があります。私が会見した人民解放軍のある将軍は『私たちは米国とは和解や協調を達成できるかもしれないが、日本とはそうはいかない。日本は中国にとって、なお軍事的な脅威として残っていくだろう』ともらしました。日本に対しては歴史的に特別な敵対意識が存在するというのです」
 アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート(AEI)の中国研究員で元国防総省中国部長のダン・ブルーメンソール氏も次のように語った。
 「中国には、日本に対して歴史上の記憶や怒り、そして修正主義の激しい意識が存在します。その意識は中国共産党のプロパガンダで強められ、煽られ、今や中国が軍事力でも日本より優位に立ち、日本を威嚇する能力を持つことによって是正されるべきだというのです」
 要するに、中国共産党には軍事面でも日本を圧倒しておくことが歴史的な目標だとするような伝統がある、というのである。
 だからこそ、現在の中国の軍拡は日本で真剣に認識され、論議されるべきだろう。だが現実には国政の主要課題には決して上がることがない。私はこの点での日本の危機に対しても、この書で警鐘を鳴らしたいのである。
・古森 義久 Yoshihisa Komori
 産経新聞ワシントン駐在編集特別委員・論説委員。1963年慶應義塾大学経済学部卒業後、毎日新聞入社。72年から南ベトナムのサイゴン特派員。75年サイゴン支局長。76年ワシントン特派員。81年米国カーネギー財団国際平和研究所上級研究員。83年毎日新聞東京本社政治部編集委員。87年毎日新聞を退社して産経新聞に入社。ロンドン支 局長、ワシントン支局長、中国総局長などを経て、2001年から現職。2005年より杏林大学客員教授を兼務。『外交崩壊』『北京報道七00日』『アメリカが日本を捨てるとき』など著書多数。
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