卑見「光市事件裁判差戻し広島高裁判決文と裁判員制度」

2008-07-09 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

 本年4月22日、所謂事件名「光市母子殺害事件」の差戻し審判決があった。判決の理由・量刑すべて不服なまま、私は2ヵ月半を過ごした。
 判決文は、弁護側の主張を悉く退けた。徹底して検察の主張を容れた。情状面でも、被告人に改悛の情は見当たらないとし、そうさせたのは、21人からなる弁護団であるとまで言い切った。これでは事実は争えない、と判決後の記者会見で弁護団。
 先日、全判決文を拙HP http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/  column へUPし、要旨を読むのとは全く違う気分で、全文を読んだ。要旨を読んでいては見えなかったもの、全く異なるものが見えてきたように感じている。私は、市井の主婦に過ぎない。法律のイロハも解さぬ素人である。以下、そんな愚昧の「卑見」である。
 差し戻し審の審理中、広島高裁は、実に寛容に弁護側の申請を受け入れ、そして、判決で、すべて否定した。
 〈今一度、これは、素人の卑見にすぎないと断っておく。〉
 楢崎氏は、高裁裁判長の地位に昇った人で、更なる栄進の途上にある。本件重大事件につき、最高裁の意向に沿わぬ判決を書くとは到底考えられない。昨年の東海テレビ『裁判長のお弁当』(ギャラクシー大賞を受賞し、先日再放送)では、「法と良心」のみに従い、上に逆らって判決を出し、家裁や支所まわりで退官した「生涯1裁判官」の道のりを綴っていた。裁判所のヒエラルキーは、峻厳である。ピラミッドの上層に上り詰めるには、上の意向に沿う判決を書くことが先決である。
 楢崎氏のように高裁の裁判長に上り詰めた人が、最高裁からの差戻し案件に下手な判決を出すとは思えない。愚昧は、つぶさに楢崎氏の書いた判決文を読み、まるで炙り出しのように、氏の出世への熱い思いを感じた。模範的な判決文。楢崎氏は、転がり込んだこの上ない奇貨を無駄にしなかった。出世のために、生かしきった。
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 光市事件の判決も下り、拙HPへのアクセス数も沈静化すると思っていたが、そうでもない。秋葉原の事件や死刑の執行があったせいかとも思ったが、高いアクセス数は依然続いている。なぜだろう。サーチワードは「勝田清孝」であることに変わりはない。
 そんな折、Y新聞社から「裁判員制度⇒死刑制度」についての取材要請があったことで、理解できた。裁判員制度が目前であるから、アクセスが衰えないのではないか。裁判員制度とは、つまり死刑問題である。
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 裁判員制度について、私は否定的だった。しかし、ふと思った。裁判員は素人である。職業裁判官としての栄達が掛かっていない。それは、いいことではないか。そんな事を思って、HP「午後のアダージォ」のほうへ column「裁判員を担う」のupを始めた。本日、工事着工。中日新聞夕刊で、5回にわたって連載された記事である。
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2009/04/25 補遺 http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/ 

 裁判員・被害者参加制度 
▼被害者参加制度~被害者・遺族を“訴訟の当事者”とするのは妥当なのか?
被害者参加制度 12月施行
裁判員を担う~激変の兆し
  【1】脱「儀式」説得力が判決左右
  【2】公判前整理 迅速化の陰 予断潜む
  【3】弁護士の負担 人も時間も足りない
  【4】取り調べ全面録画 冤罪防止への突破口
  【5】捜査の在り方 迫る可視化の潮流
裁判員制度のウソ、ムリ、拙速~大久保太郎(元東京高裁部統括判事)
  現場の混乱で司法の質は暴落。こんな悪法は廃止しかない
   「違憲のデパート」
   「国民の自由」にも反する
   長期審理に対処不可能 はじめから破綻している制度
   違憲審査権はどこへいった?
   施行前に廃止を
裁判員制度 “賛成派”も批判~国民参加 隠れ蓑に 
  重大事件1審のみ関与 制度設計に問題
  代用監獄など課題放置も
  せめて中止、延期すべき---河上和雄弁護士に聞く
  “国民に司法を体験してもらうのに、いきなり死刑事件を担当させる、そんなバカな話、ありますか、人の命に関わることを。憲法に規定された『裁判官の独立』が侵されるという問題もある。”
裁判員制度導入で最高裁は報道規制を企んでいる~井上馨/弁護士・元判事  
  条文化は見送られたが・・・・
  最高裁参事官による報道規制要請
  報道規制の生み出す恐怖
  例えば秋葉原殺戮事件ならば
  確かに報道は判決に影響するが
  最高裁参事官も思っている「裁判は素人ではムリ」
  基本的人権すら危うくする
  報道は規制に立ち向かえ!
▼死刑とは何か~刑場の周縁から
▼死刑とは何か~刑場の周縁から(追加ファイル)
精神障害と責任能力
  難解な用語 - 専門家でも判断苦労
  香川・坂出3人殺害公判では
  「精神障害と責任能力」異なる鑑定 混乱の恐れ
  ジャーナリスト佐藤氏に聞く
  最高裁の考えに背く?地裁、結果尊重せぬ判決も
裁判員を担う~刑事責任
  刑事責任
  「不当な罰」生む危険
  責任能力の判断重荷
  責任能力判断
▼裁判員を担う~制度開始まで1ヵ月
 弁護士 不安消えず 
▼裁判員 裁けるのか  毒カレー事件死刑判決
▼容疑者の孤立救えるか~国選弁護 対象拡大に抜け穴
▼取り調べの可視化 〔捜査側×弁護側〕


2 コメント

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nul (narchan)
2008-07-09 19:03:21
直接関係ないことですが、わたしは、動機や殺意を裁判に持ち込むことに違和感を覚えます。本人以外に正確に知りえる人間がいるのでしょうか。百歩譲って、動機や殺意を言うのであれば、単に自供によるのでなく、誤りえない明確な客観的根拠を提示すべきだと思います。掛け替えのない人間の命が掛かっているのですから。疑わしければ被告の有利に判断するべきです。
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裁判官の独立 (F.O)
2008-07-10 09:14:27
 説得力あるエントリーだと思います。
 憲法は「裁判官の独立」を認めています。憲法76条。「裁判官はその良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律のみに拘束される」のです。が、裁判所も組織であり、現実に、人事権は最高裁が握っています。
 判決文を読んで、最高裁を強く意識しているなという感想をもちました。差し戻しですから、当然の事です。
>実に寛容に弁護側の申請を受け入れ
 その時点で、判決は、ほぼ予想しましたけどね。一種のセレモニーでもありますから。
>家裁や支所まわりで
 合議体としては、その裁判官は、ちょっと困る存在だったでしょう。
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