南オセチア紛争 綱引きー苦悩の欧米 核・エネルギー複雑な利害

2008-08-10 | 国際

ロシアとグルジアの全面戦争懸念 南オセチア紛争
2008年8月9日 中日新聞朝刊
 【モスクワ=常盤伸】分離独立派勢力が実効支配する南オセチア自治州に、グルジア軍が全面攻撃に踏み切ったことで、ソ連末期から20年近くにわたる南オセチア紛争は重大な局面を迎えた。北大西洋条約機構(NATO)早期加盟を目指すサーカシビリ大統領は電撃的な軍事作戦で一気に南オセチアの主権回復を狙った格好だが、ロシアとの全面戦争の恐れもはらみ、情勢は混沌(こんとん)としている。
 領土の一体性を訴え今年初め再選したサーカシビリ大統領にとり、分離独立派が実効支配する北部の南オセチアと東部のアブハジア自治共和国の奪還は悲願。国内情勢の安定化はNATO加盟の条件で、軍事大国ロシアとの紛争を回避したいグルジア側はこれまで、交渉による情勢安定化を訴えてきた。
 サーカシビリ政権が今回、強硬路線にかじを切った背景にはグルジアのNATO加盟への動きが本格化した今春以降、両地域にロシアの支援が本格化したことがある。南オセチアの分離派勢力との間で散発的な衝突が続くなど緊張が高まり、サーカシビリ政権は危機感を募らせていた。
 サーカシビリ大統領は7日の国民向け演説で、グルジア軍の軍事行動抑制を指示したとしながら、その数時間後に全面攻撃を仕掛けた。最近の報道ではグルジアが戦闘準備を進めていたとの情報がある。全面攻勢の用意を周到に進めてきたのは確実で、ロシア側は北京五輪直前で、実力者プーチン首相の不在という虚をつかれた形だ。
 南オセチアでは、大多数のグルジア人が退去したアブハジアと異なり、首都ツヒンバリ周辺にはグルジア人住民が多数を占める地域もある。ロシア軍が仮に大兵力でツヒンバリを奪還した場合でも、全土奪還は容易でないとみられ、紛争が泥沼化する恐れもある。
◆グルジア大統領 米に支援求める
 【ワシントン=立尾良二】グルジアのサーカシビリ大統領は8日、米CNNテレビのインタビューで「ロシアがわれわれに戦争を仕掛けている」と述べ、ロシア軍が南オセチア自治州をはじめグルジア国内へ侵攻し、市民を攻撃していると非難。「自由を愛するわれわれの国がまさに今、攻撃を受けている」として米国に支援を求めた。サーカシビリ大統領は「ロシア軍の戦車や戦闘機が市民の密集地を狙い、爆撃を続けている」と指摘した。
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ロシア、グルジア本格交戦 南オセチアめぐり
2008年8月9日 夕刊
 【モスクワ=中島健二】インタファクス通信などによると、グルジアからの分離独立を求める南オセチア自治州に軍事介入したロシア軍は8日夜(日本時間9日未明)、グルジア軍と激しい戦闘を展開した。グルジア軍が自治州に進攻後、ロシア軍との本格交戦は初めてとみられ、軍事衝突拡大への懸念が広がっている。
 現地からの報道によると、自治州の州都ツヒンバリでは9日未明にかけて、断続的に戦闘が続いたもよう。平和維持部隊として自治州に駐留するロシア軍は、8日夜のグルジア軍との砲撃戦で兵士12人が死亡したことを明らかにした。
 ロシア軍の情報筋は本紙に対し、ロシア軍が同日、グルジア領内の4カ所の基地や黒海沿岸にあるポチ港を空爆したことを認めた。
 グルジアの国家安全保障会議当局者は9日、サーカシビリ大統領が近く非常事態を宣言すると述べた。
 同大統領は8日夜、ロシア軍の攻撃で兵士ら約30人が死亡したと主張。
 南オセチア自治州のココイトイ大統領は、グルジア軍の攻撃で住民ら1400人以上が犠牲になったとしている。
 ロシア外務省の声明によると、ラブロフ外相は同日夜、ライス米国務長官と電話会談し、グルジアに軍事行動の即時停止を説得するよう要請した。
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グルジアが戒厳令 ロシア空爆、戦闘全土に
2008年8月10日 朝刊
 【モスクワ=常盤伸】グルジアからの分離独立を求める南オセチア自治州に軍事介入したロシア軍は、9日もグルジア軍との激しい戦闘を続行。グルジア中部のゴリ周辺を空爆し、市民に犠牲者が出た。親ロシア派勢力が実効支配するグルジア西部のアブハジア自治共和国内でも、北東部にあるグルジア支配地域のコドリ渓谷の2つの村をロシア軍機が空爆。グルジアとロシアの戦闘は南オセチア自治州からグルジア全土に拡大している。
 グルジアのサーカシビリ大統領は同日、15日間の「戒厳令」を宣言、同国議会が承認した。ロシアのコワレンコ駐グルジア大使によると、グルジア軍の攻撃による同自治州内の死者は約2000人に拡大。タス通信によると、自治州から3万人が難民としてロシアに避難した。
 グルジアの首都トビリシではロシア軍の空爆に備え、政府関係省庁などの避難が始まった。グルジア政府は9日、アゼルバイジャンからグルジア経由でトルコに送油するBTCパイプラインがロシア軍の空爆を受けたが無事だったと公表した。
 南オセチアの州都ツヒンバリでは、ロシア軍とグルジア軍の激戦が続いている。プーチン首相は同日、中国から帰国、同自治州に隣接する北オセチア共和国に到着した。

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中日新聞朝刊2008/08/10【核心】より抜粋

綱引きー苦悩の欧米  核・エネルギー複雑な利害

 米国は、グルジアのNATO加盟問題やミサイル防衛(MD)東欧配備などでロシアと対立関係にあるものの、イランや北朝鮮の核問題の協議では、両国への影響力を持つロシアの存在は欠かせない。欧州もエネルギーの多くをロシアに依存する関係にある。

 一方のグルジアは、2003年のバラ革命で誕生したサーカシビリ政権が欧米寄りを鮮明にし、米軍主導のイラク駐留多国籍軍に大規模派兵してきた経緯がある。特に欧州にとって、ロシアのエネルギー支配に対抗可能な資源ルート「カスピ海ー地中海石油パイプライン」が通るグルジアの安定は不可欠だ。 


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