川崎・老人ホーム３人転落死 今井容疑者「感謝の言葉がやりがい」 逮捕前、関与否定
毎日新聞2016年2月16日 東京夕刊
「家族が亡くなったのがきっかけで、お見送りをやりたいと思い、介護業界を選んだ。やりがいは感謝の言葉をかけてもらえること」。川崎市幸区の有料老人ホーム「Ｓアミーユ川崎幸町」（積和サポートシステム運営）で発生した転落死事件。殺人容疑で逮捕された今井隼人容疑者（２３）＝横浜市神奈川区立町＝は３件の転落死が発覚した昨年９月、毎日新聞などの取材に応じ、介護の仕事についてこう語り、事件への関与を否定していた。【国本愛、福永方人】
今井容疑者は、介護職を選んだ理由について「できるだけ（人生の）最後を幸せに過ごしてほしいと思いながら仕事をしている」と説明。転落死に関しては「どうして防げなかったのか。３人が亡くなったことへの悲しみと、仕事で葬儀に行けなかったことへの心残りがある」などと話していた。
今井容疑者は母親、妹と横浜市内でマンション暮らし。近所の住民によると、父親は電器店を営んでいたが、数年前に病死して廃業した。
今井容疑者は以前はよく店番をしていたといい、ある男性は「真面目でおとなしく、友達と遊んでいるのを見たことがないが、まさか人を殺すような感じではなかった」と振り返る。
県内の高校を卒業後、医療系専門学校に進み、２０１４年５月にＳアミーユ川崎幸町に就職した。だが昨年５月、入所者の所持金を盗んだとして窃盗容疑で逮捕され、懲戒解雇された。
横浜地裁川崎支部の公判では１９件の窃盗を繰り返したことも明らかになり、同９月に懲役２年６月、執行猶予４年の有罪判決を受けた。
今井容疑者が介護を担当し、複数回現金を盗まれたという７０代女性は今井容疑者について「ムスッとしていて人付き合いが下手な感じだが、そんなに悪い人ではなかった」と話す。
窃盗について問いただしたが、「そんなことはしていない」と否定したという。
■本格捜査、３件目後
Ｓアミーユ川崎幸町で入所者の転落死が相次いでいるとの情報が、神奈川県警内部で共有されていなかったことが分かった。現場で対応した幸署が３件目の初動の捜査を終えた後、初めて不審な点があると県警本部に報告した。
捜査関係者によると、２０１４年１１〜１２月に起きた３件の転落死では、いずれも幸署員が鑑識活動などを行った。県警本部の検視官も現場で遺体を確認した。だが以前にも施設で転落死が発生しているとの情報がなく、県警本部は「連続転落死」とは捉えなかった。県警は転落による外傷以外に目立った傷がなかったことから転落死として司法解剖をしなかった。
一方、ベランダに設置された柵は高さ約１２０センチで、死亡した３人の入所者は８６〜９６歳と高齢で身長が約１５０〜１６０センチ。３人が自分で乗り越えるのが困難とみられる点もあったため、県警は「変死」と判断したが、３件目の転落死の初動捜査後、幸署から施設で転落死が続いているとの報告があり、本格的な捜査を始めた。
こうした経緯を踏まえ県警は昨年８月、同一施設での死亡事案に関する情報を直ちに共有できるようシステムを改善したという。
川崎市によると、１件目と２件目の転落死が発生した後、施設側から報告があった。担当者は２件連続したことを不自然に感じたが、県警から「事故」との説明を受けたため、施設側への聴き取りなどはしなかったという。【村上尊一】
■今井容疑者送検
今井隼人容疑者は１６日午前８時５分ごろ、神奈川県警幸署から捜査車両で横浜地検に送検された。
■「重く受け止め」 親会社コメント
Ｓアミーユ川崎幸町を運営する積和サポートシステム（東京都中央区）の親会社「メッセージ」（岡山市南区）は１６日、「子会社の元社員が入居者を殺害したことが事実とすれば決してあってはならないことで、とても重く受け止めています。亡くなられた入居者の方のご冥福をお祈りします」との佐藤俊雄社長のコメントを発表した。【太田圭介】
■施設系列会社、虐待が相次ぐ
Ｓアミーユ川崎幸町を運営する積和サポートシステムと親会社で介護サービス大手の「メッセージ」が運営する介護付き有料老人ホームでは虐待が相次いでいたことが明らかになっている。
第三者委員会が昨年１１月に公表した調査報告書によると、Ｓアミーユ川崎幸町のほか、「アミーユ豊中穂積」（大阪府豊中市）や「アミーユ大曽根」（名古屋市北区）など５施設で虐待があったとされる。従業員が入所者に暴行したり、入所者の頭に未使用のおむつをかぶせたりするなどした。
◎上記事は［毎日新聞］からの転載・引用です
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〈来栖の独白〉
大変に残念な事件。介護職、介護職員への社会的評価を落す。それでなくても離職率の高い職種。このような事件の一報を受けて、現場に働く人たちは、どんなに辛いことだろう。系列会社の職員だけのことを云っているのではない。介護の現場で働く多くの人たちの胸中について云っている。このような事件ほど現場を萎えさせるものはない。
それにしても、3名もの老人を殺害とは・・・。分らない・・・。
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◇ [川崎老人ホーム転落死]元職員今井隼人容疑者、3人殺害認める2016/2/16 （昨年は窃盗罪で執行猶予４年）
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