自殺原因、うつ病最多 昨年総数、10年連続3万人超

2008-06-19 | 社会

2008年6月19日 14時09分

  二〇〇七年中の全国の自殺者が三万三千九十三人となり、一九九八年以来、十年連続で三万人を超えたことが十九日、警察庁のまとめで分かった。〇七年は〇三年に次ぐ過去二番目の多さで、特に全体の三分の一以上を占める六十歳以上の自殺者数が過去最多を記録した。原因・動機別では「うつ病」がトップだった。

 警察庁によると、昨年は全体で前年に比べ九百三十八人(2・9%)増加した。男性が前年同様、全体の約71%を占めた。

 同庁は一昨年、原因・動機に関する側面を中心に「自殺統計原票」の改正を行い、昨年発生の自殺から、遺書や客観的資料を基に、より詳しい原因(複数計上)を記録する方式に切り替えた。

 この結果、従来に比べ、具体的な原因が判明。「うつ病」が原因と判断された人は六千六十人、以下「身体の病気」が五千二百四十人、「その他の精神疾患」が千百九十七人で、原因・動機が特定できた二万三千二百九人のうち「健康問題」が過半数を占めた。

 「経済・生活問題」では、「多重債務」が千九百七十三人と最多だった。

 また、「借金の取り立て苦」と「自殺による保険金支給」が原因で合わせて三百二十人が自殺した。

 職業別では、学生を除く「無職」が全体の約六割を占めた。このうち、単なる失業ではなく、病気などで職に就けない人のケースが九千五百二十八人(約29%)、生活保護、年金・雇用保険生活者は四千九百八十二人(約15%)に上った。

■『追い詰められる死』対策を

<解説> 「うつ病」が原因で年間六千人以上が自殺している事実は重い。警察庁は二〇〇六年に自殺対策基本法が制定されたのを機に、昨年から自殺の動機・原因を詳しく調査した。

 「うつ病」は「心の風邪」とも言われ、誰でもかかりうる精神疾患だ。早期に医師の診断を受ければ、薬物治療とカウンセリングで治るケースが多い。

 それにもかかわらず高齢者を中心に多くの人が自殺に至ってしまう背景には、「うつ病」を当事者の気分の問題によるものと誤解していたり、身近に相談できる社会的な受け皿がなかったりするなどの問題がある。

 なぜ「うつ病」になったかも検討が必要だろう。「うつ病」での自殺を職業別で見ると、病気などで働けない「その他の無職者」が約二千人と突出して多く、経済的困窮で心理的に追い詰められている様子もうかがえる。

 政府は昨年六月、自殺総合対策大綱を策定したが、決め手に欠けるとの指摘もある。

 警察庁は、調査結果を厚生労働省所管の自殺予防総合対策センター(東京)に提供、専門家による分析が行われる。

 周囲が「うつ病」を正確に理解することと、職場や地方自治体がどこまで「社会的に追い詰められた人たち」のサインを受け止められるかが、当面の課題だろう。 (社会部・長久保宏美)

(東京新聞)


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