【伝統芸能】 <和菓子の芸心> 鬼婆に似たギャップ「黒塚焼き」 2018/11/12

2018-11-12 | 本/演劇…など

【伝統芸能】
<中村雅之 和菓子の芸心>鬼婆に似たギャップ 「黒塚焼き」(福島県二本松市・九頭見菓子舗)
2018年11月12日 Mon

   

     イラスト・中村鎭
  能や歌舞伎にもなった鬼婆で有名な奥州・安達ケ原は、現在の福島県二本松市安達ケ原だ。
 歴史的な地名が、簡単に変えられてしまうことが多い現代にあって、そのまま残っているというのは素晴らしいことだ。
 この地の観世寺という寺には、鬼婆の住処(すみか)だったとされる岩屋、遺骸が埋められたという「黒塚」がある。寺の縁起として次のような話が伝わる。
 都の貴族の屋敷に乳母として仕えていた女がいた。大切に育てた姫君が病に罹(かか)ると、「妊婦の生肝(いきぎも)を飲ませれば治る」という占いを信じ、生肝を求めて旅に出る。その末に、住み着いたのが安達ケ原だった。
 ある晩秋の夕暮れ、一夜の宿を借りに、一組の若夫婦が現れる。身籠(みご)もっていた妻が産気づいたため、夫は薬を探しに出る。その隙に女は、妊婦に襲いかかるのだった。虫の息の妊婦は、子どもの頃に生き別れた母を尋(たず)ね歩き、都から来たのだと語る。
 よく見ると、妊婦が持っていたお守りは、女の娘の物。気づいた女は気が触れて鬼と化し、旅人を襲うようになった。
 そこに現れたのが紀州・熊野の僧・祐慶。背負っていた如意輪観音の力により、鬼婆は退治され、祐慶は観世寺を建立したというのだ。
 観世寺の近くに店を構える九頭見菓子舗が、この岩屋をイメージして作ったのが、クッキー生地のお菓子「黒塚焼き」だ。確かに見た目は岩のようにゴツゴツしている。固いのかと思って食べたら実は柔らかかった。それも中には餡(あん)が。恐ろしい形相だが、内に深い悲しみを秘めている鬼婆のようなギャップのあるお菓子だった。 (横浜能楽堂館長)
<九頭見菓子舗> 福島県二本松市安達ケ原二の七の三。(電)0243・22・0080。1個113円。
 伝統芸能とゆかりの深い和菓子を横浜能楽堂の中村雅之館長が紹介します(随時掲載)。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖) *強調(=太字)は来栖
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黒塚(安達原)2018/10/20 Sat 名古屋能楽堂

  

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