少年法見直しの議論は海外にも 綾瀬「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」主犯格の1人が再犯 2018/8/19

2018-08-30 | 少年 社会

29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の容疑者が再犯 少年法見直しの議論は海外にも 
2018年8月27日(月)15時00分
内村コースケ(フォトジャーナリスト)
<戦後最悪の少年犯罪と言われる29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の犯行グループの1人が、殺人未遂容疑で逮捕された。ネット上では、少年犯罪の厳罰化、匿名報道への異議が叫ばれている。海外では、そうした声に応えるような動きも見られるがー>
 8月19日、埼玉県川口市の屋外駐車場で、男性をナイフで刺したとして、埼玉県川口市に住む湊伸治容疑者(45)が殺人未遂容疑で逮捕された。軽トラックで駐車場に入ってきた2人のうち、32歳の男性の右肩を所持していた警棒で殴ったうえ、首の後ろをナイフで刺し、殺害しようとした疑い。駐車トラブルの末の犯行とされているが、『デイリー新潮』の詳報によれば、湊容疑者が駐車場で待ち構えていて、軽トラの2人に因縁をつけ、運転席の男性が窓を開けたところいきなり殴りかかったという。刺されたのは、争っていた2人を止めようとした助手席にいた男性だという。
 これが事実だとすれば、なんとも粗暴な犯罪だが、日本国内の新聞・テレビのほとんどはローカルニュースの片隅に、事実経過のみを淡々と伝えている。「殺人」ではなく、「殺人未遂」容疑故に、日本の大手報道機関のスタンスとしては平常運転だと言えよう。容疑者が成人であるため、住所氏名が明記されているのもごく普通の報道姿勢だ。新聞・テレビの報道だけを見れば、ほとんどの人が見過ごすようなニュースであろう。ところが、『デイリー新潮』が湊容疑者の過去にスポットを当てて事件を報じたところ、特にインターネット上で議論を呼ぶ注目のニュースとなった。
 新潮によれば、湊容疑者は、実は当時日本中を震撼させた1989年の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の犯行グループの1人だという。犯行の舞台となった自宅2階を提供した主犯格の1人だ。当時16〜18歳の少年4人が、埼玉県三郷市の路上で見ず知らずの17歳の女子高校生を拉致、東京都足立区の湊容疑者の自宅に監禁し、40日間に渡って凄惨な暴行を繰り返した末、殺害。遺体をコンクリート詰めにして江東区内の埋立地に遺棄したことから、事件の通り名がついた。当時16歳だった湊容疑者らには少年法が適用され、懲役4年以上6年以下の不定期刑が下された。今回の事件は、出所後の再犯ということになる。
*比ドゥテルテ政権は刑事責任年齢の引き下げと死刑制度復活を掲げる
  「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」は、殺害に至る過程があまりに残酷だったことから、特にネット上では今も強い嫌悪感と怒りをもって語り継がれている。そのため、今回の事件に関する新潮の記事が出るやいなや、ネット上には関連トピックが多く立ち、書き込みが殺到した。特に同事件への関心が高いとされる匿名掲示板『5ちゃんねる』は、「少年法って誰のため?」「当時死刑にしておけばこんな事件は起きなかった」といったコメントがあふれかえった。「別の主犯格も、出所後振り込め詐欺容疑で逮捕されている」という情報も実名入りで飛び交った。このように、度を超した凶悪犯にまで、「更生」を前提にした少年法を適用するはおかしいという市民感情があるのは確かだ。
 関連する海外の情勢に目を転じると、麻薬犯罪の撲滅を掲げて強硬路線を敷くフィリピンのドゥテルテ政権は、実際にこうした声に応えるかのような政策を掲げている。1つは、刑事責任年齢を18歳から9歳に引き下げるというもの。もう1つは、死刑制度の復活だ。とはいえ、前者の法案は国内外の人権擁護団体などから猛烈な批判を浴び、後に引き下げ幅を15歳に改めて法案が再提出されたが、これも昨年7月、議会の小委員会で否決された。
 一方、死刑制度復活の努力は、現在もドゥテルテ政権の最優先事項として継続中だ。法案は既に下院を通過し、今は上院の審議を待つ状態。ドゥテルテ大統領のスポークスマンは今月始め、フィリピン政府は「引き続き緩やかに前進を目指す」と表明した。同国の死刑制度は、アロヨ大統領時代の2006年に廃止されたが、犯罪(特に麻薬犯罪)の撲滅を目指すドゥテルテ大統領は、犯罪の厳罰化がその特効薬だとして、選挙公約に死刑制度の復活を掲げていた。ただ、フィリピン国民の85%が信仰するカトリック教会が反対を表明。フランシスコ・ローマ法王が死刑反対を公言したのも記憶に新しい。故にこちらも国内外からの圧力は相当に強く、法案が成立するかどうかは微妙だ。
*英国では元少年凶悪殺人犯の匿名性解除の動き
  「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の犯行グループは、未成年ゆえに実名報道されることはほとんどなかった。少年法第61条の規定により、容疑者本人の類推に資する全ての情報(名前、学校名、地名など)を報道することが禁止されているからだ。ただ、事件直後に発売された『週刊文春』が唯一実名報道に踏み切り、当時大きな議論を呼んだ。記事を書いたコラムニストの勝谷誠彦氏は、今回の湊容疑者の事件を報じた新潮の取材に「"野獣に人権はない"と言って、実名報道に踏み切ったわけです」と答えている。一方で、殺害された少女の方は写真付きで実名報道され、「不良グループの一員であり、被害者にも非があった」といった論調の誤報(実際にはごく普通の真面目な少女だった)もあって、報道による二次被害が発生している。
 凶悪少年犯罪の「匿名性」を巡る同様の問題は、イギリスでも起きている。1993年、当時10歳の少年2人が、イングランド北西部のリバプールで当時2歳の幼い男の子を拉致し、執拗な暴行を加えた末に殺害。遺体を線路に遺棄して轢断したというイギリス史上最悪とされる少年犯罪だ。事件発生直後は容疑者が匿名で報じられ、被害者のプライバシーは実名で詳報された。容疑者の元少年たちが出所後、それぞれ麻薬使用容疑と児童ポルノ所持容疑で再犯を犯している点も、「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」に似ている。
 ただ、被害者の名を取って「ジェームズ・バルガー事件」と呼ばれるこの事件の容疑者たちは、英国法務省が事件の重大性や世論を鑑みて下した決断により、裁判直前になってから実名報道された。しかし、2001年に18歳で出所した後は、国によって新しい身分を与えられ、居住地や職業などを報じてはならないという終身の匿名性が保証されている。これに対し、被害者の父親と叔父が犯人の1人、ジョン・ベナブルズが今年2月に2度目の児童ポルノ所持容疑で逮捕されたのを受け、この匿名性解除を求める訴えを起こした。BBCなどの英メディアの報道によれば、今年12月に公判が始まる。
 オウム真理教事件の死刑囚の連続死刑執行を機に、日本の死刑制度への海外からの批判が高まっている中、「犯罪者の人権擁護」という観点からは、少年犯罪を中心にこうした逆の動きも散見される。日本ではまだ、今回の事件の余波はインターネットの世界からは出てきていないようだが、いずれ全社会的な議論に発展するかもしれない。
 【訂正】日本の刑事責任年齢につきまして誤りがありました。削除訂正しました。

 ◎上記事は[NewsweekJapan]からの転載・引用です
――――――――――――――――――――――――
綾瀬「女子高生コンクリート詰め殺人」の“元少年”が、今度は殺人未遂で逮捕されていた 2018/8/19
..........


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。