経済の基礎体力の低下 日本経済が直面する試練の厳しさ

2009-10-31 | 社会
デフレ色長引く恐れ 日銀予想「物価3年連続マイナス」
 物価下落が長引く懸念が強まってきた。日銀は30日の金融政策決定会合で「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)をまとめ、2011年度まで3年連続で消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率がマイナスになるとの見通しを示した。世界経済の急激な落ち込みで生産設備や労働力の過剰感が強まっているためだ。物価の下落が続くと、消費や企業収益に下押し圧力がかかる。「デフレ」色が強まれば、景気回復の足かせとなりかねない。
 展望リポートの物価見通しは09年度がマイナス1.5%、10年度がマイナス0.8%、11年度がマイナス0.4%。日銀は景気回復が力強さに欠くため、労働や設備の過剰感の解消は緩やかなものになり、物価の下落幅の縮小はなかなか進まないとみている。需給ギャップが解消するのは12年度以降になる見通しだ。(日経2009/10/31/)
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日経新聞 社説1 政府・日銀はデフレを軽視するな(10/31)
 日銀が発表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」は、日本経済が直面する試練の厳しさを改めて浮き彫りにした。消費者物価は3年連続で下落見通しである。経済の基礎体力の低下に焦点を据え、政策を運営していくべきである。
 昨年秋のリーマン・ショックから1年たち、経済は徐々に持ち直してきた。とはいえ、回復は景気対策と外需頼み。企業が過剰雇用を抱えるなか、日本経済はなおもろさを抱えている。供給力に比べて需要が不足しているために、物価の下落はしばらく続く――。「展望リポート」の見通しはそんなところだ。
 日銀は物価安定のメドとして、消費者物価変動率でゼロ%からプラス2%という水準を挙げている。物価下落つまりデフレは、日銀が望ましいとみる物価変動率を下回った状態である。素直に考えれば、一層の金融緩和が必要になるところだ。
 これに対し白川方明総裁は、無担保コール翌日物金利を0.1%とする現在の金融政策を「十分に緩和的」という。現状の金融緩和を「粘り強く続ける」としたうえで、「景気回復や金融システムの安定化に伴って緩和効果は強まっていく」との見方を繰り返した。
 リーマン・ショック後に導入した金融市場安定のための緊急対策についても、いきなり解除したりはせず、「市場に不測の事態を与えないようにする」と述べた。できることはやっているというのだろう。問題は一連の策によって、本当に企業や家計の心理が好転しているかだ。
 デフレから脱却できるかどうかのカギを握るのは、企業や家計の中長期的な成長期待が回復し、予想インフレ率が上向くことである。この点でショッキングだったのは、経済が無理なく成長できる潜在成長率の推計が、今回の「展望リポート」で従来の1%前後から0%台半ばに下方修正されたことである。
 潜在成長率が低下すれば、実際の成長率が低くても需給ギャップ(需要不足)は解消しやすくなるとの指摘も可能ではある。だが、現実に即していえば企業や家計の行動がますます慎重となり、低成長のワナにはまりこみかねまい。デフレの長期化はそうしたリスクを映し出しているのではないか。
 潜在成長率を回復させるためには、日銀ばかりでなく経済活性化に向けた政府の取り組みが欠かせない。現状ではその戦略は著しく欠如している。政府と日銀が足並みをそろえた成長戦略を打ち出さないことには、日本経済の展望も開けない。

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