私は、もとより国会にも拙速立法の責任はあるが、法務省と最高裁が裁判制度の専門家として裁判員制度に反対しなかったことは、司法制度始まって以来の大失策であると思う。私が上記指摘した数々の問題点は、単に私一人のものでなく多くの法律家が共有するものだが、これについて国民はほとんど何一つ説明されていない。法務省も最高裁も説明できないのだ。
日本弁護士連合会は、被告人の権利擁護が重要な使命だろうが、既述のように裁判員制度は幾多の場面で被告人の権利侵害を伴なわざるを得ない制度だ。日弁連はなぜこの制度に反対しないで推進に努めるのか。
本来ならば失策はどこかで清算されなければならない。しかし法律になってしまった以上、前途にいかなる破綻が待っていようと、とにかく前を向いて自転車のペダルを踏みつづけるほかはない。制度を推進する当局の姿勢は、私の目にはこのように映るのだ。国民は何も知らずに司法の大失策に付き合わされているのである。
http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/adagio/ column裁判員制度のウソ、ムリ、拙速