秋葉原無差別殺傷事件〈加藤智大被告〉第9回公判2010.5.24証人尋問 -中-

2010-05-24 | 秋葉原無差別殺傷事件

秋葉原無差別殺傷事件〈加藤智大被告〉第9回公判2010.5.24目撃者証人尋問、証拠調べ-上-」からの続き
 裁判長「それでは午後の審理を始めます」
 検察官「証人は警察官ですね」
 《証人は平成元年4月に警視庁警察官を拝命。以降、城東警察署や機動隊での勤務を経て、20年5月21日に万世橋警察署地域課地域第4係に配属。その後、同年9月16日に警務課留置係勤務となり、現在に至るという》
 検察官「巡査部長にあたるわけですね」
 証人「はい」
 検察官「証人は20年6月8日当時、万世橋警察署地域課地域第4係に勤務し、事件当日は秋葉原交番に勤務していたのですね」
 証人「はい」
 検察官「証人は左側の被告のことを知っていますか」
 証人「はい」
 検察官「証人は6月8日午後0時半過ぎ、被告人が起こした事件の状況を目撃していますか」
 証人「…もう一度お願いします」
 検察官「証人は6月8日午後0時半過ぎ、被告が起こした事件の状況の一部を目撃していますか」
 証人「はい」
 検察官「証人自身も被告から攻撃を受けていますか」
 証人「はい」
 検察官「証人はその後、被告人を現行犯逮捕していますか」
 証人「はい」
 検察官「6月8日当日は午前9時ごろから秋葉原交番で勤務していましたか」
 証人「はい」
 検察官「服装はどのようなものですか」
 証人「夏服で制帽、長袖シャツ、その上に耐刃防護衣を身に付けていました」
 《検察官は、ポリ袋に入った耐刃防護衣や、内側に入っている金属板、サイドプロテクターなどを次々と証人に示していく。最後に大型モニターに警察官の写真を示し、当日の服装を確認した》
 検察官「6月8日午後0時半ごろ、証人は具体的にどのような職務をしていたのですか」
 証人「秋葉原交番入り口付近で立番(りつばん)勤務をしていました」
 検察官「立番勤務とは、交番前に立って、警戒や地理案内をすることですね」
 証人「はい」
 検察官「証人のほかに誰かいましたか」
 証人「交番相談員のナカガワさんがいました」
 検察官「何か異変があったのですか」
 証人「外神田3丁目方向からガシャンと大きな音がしました」
 検察官「何が起きたと思いましたか」
 証人「交通事故が発生したと思いました」
 検察官「何か見えましたか」
 証人「右斜め前方から白いトラックが止まるのが見えました」
 検察官「トラックはどのような状況でしたか」
 証人「フロントガラスがクモの巣状に割れたりしていました」
 検察官「トラックを見てどう思いましたか」
 証人「交通人身事故が起きたと思いました」
 検察官「証人は近くにいた交番相談員のナカガワさんに、トラックの運転手について何か言われましたか」
 証人「はい。『運転手が降りて外神田3丁目の方へ向かった』というようなことを言われました」
 検察官「トラックの状況とナカガワさんに言われたことを踏まえて、証人はどう思いましたか」
 証人「交通上のトラブルか、けんか等が起きるのではないかと思いました」
 検察官「証人はどういう行動を取りましたか」
 証人「外神田3丁目の方向を向いて走りました」
 検察官「走っているときに何か見ましたか」
 証人「3、4人が倒れていました」
 検察官「周囲にも人がいましたか」
 証人「救護している人がいました」
 検察官「服装で特徴があった人は?」
 証人「警察官です」
 検察官「その警察官は何をしていましたか」
 証人「しゃがんで救護していました」
 《ここで検察官が証人に視力を確認。左右とも裸眼で2・0という》
 検察官「警察官を見ながら走っていて、どういう状況を目撃しましたか」
 証人「白い服を着た男が警察官に近寄るのが見えました」
 検察官「白い服を着た男は走っていましたか」
 証人「はい」
 検察官「白い服の男はどういう行動に出ましたか」
 証人「右ひじを曲げて、警察官の背中にぶつかるように見えました」
 検察官「警察官はどういう体勢でしたか」
 証人「立とうとしたところでした」
 検察官「白い男の右手には何があったのですか」
 証人「よく見えませんでした」
 検察官「その後、男はどのような行動を?」
 証人「付近の人や救護の人にぶつかっていくように見えました」
 検察官「男は走りながらぶつかっていったと?」
 証人「はい」
 検察官「男が走り去った後、救護していた人たちに何が起きましたか」
 証人「みんな、ひざから崩れるように路上に倒れました」
 検察官「証人は男の行動などを見て、どう思いましたか」
 証人「ナイフによって刺されたと思いました」
 検察官「どうしようと思いましたか」
 証人「すぐに対応しないといけないと思いました」
 検察官「男の行動を止めようとしたのですね」
 証人「はい」
 検察官「証人はどのような行動に出たのですか」
 証人「中央通りを南下していきました」
 検察官「男を追いかけていったということですね」
 証人「はい」
 検察官「男を追いかけながら何か行動を取りましたか」
 証人「無線の緊急ボタンを押して、警棒を取り出しました」
 検察官「証人は男を追いかけながら何か言いましたか」
 証人「はい。待て、やめろ、と言ったと思います」」
 検察官「男はどういう行動に出ましたか」
 証人「Kさんの背中の下の方にナイフを突き出すようなことをしました」
 検察官「ナイフはKさんの背中に当たったのですか」
 証人「当たりました」
 検察官「証人と男の距離はどのくらいでしたか」
 証人「3、4メートルです」
 検察官「証人はその際、どう思いましたか」
 証人「Kさんに対する殺人未遂で現行犯逮捕できると思いました」
 検察官「男はその後、どのような行動を取りましたか」
 証人「南下していって、人垣で(その先に)行けなくなりました」
 検察官「男は証人に対して向き直したのですか」
 証人「はい」
 検察官「証人が対峙した男性は、そこに座っている加藤被告ですか」
 証人「はい」
 検察官「対峙したとき、証人はどのような体勢をとりましたか」
 証人「右手にのばした警棒を持ち、警棒の先を加藤被告に向けました」
 検察官「その際、加藤被告はどのような様子でしたか」
 証人「右手にナイフを持ち、左足を前に出していました」
 検察官「2人の距離はどのぐらいでしたか」
 証人「1、2メートルまで迫っていました」
 検察官「証人は加藤被告に対し、なんと話したのですか」
 証人「『ナイフを捨てろ、武器を捨てろ』と言いました」
 検察官「そこで、加藤被告はナイフを捨てましたか」
 証人「いいえ、ナイフの刃先を私に向けた状況でした」
 検察官「それで、加藤被告はどうしたのですか」
 証人「左足を踏み込み、ナイフを私の胸に向かって突き刺してきました」
 検察官「そして、証人はどうしましたか」
 証人「はい、右手に持った警棒を、加藤被告の右腕の付け根めがけて振り下ろしました」
 検察官「ナイフはどうなりましたか」
 証人「私の胸に当たりました。衝撃はありませんでしたが、ガシャンと音がしました」
 検察官「警棒はどうなりましたか」
 証人「加藤被告の左の額にあたりました」
 検察官「ナイフと警棒、どちらが先に当たりましたか」
 証人「ほぼ同時だったと思います」
 検察官「加藤被告はナイフをどうしましたか」
 証人「離さずに持っていました」
 検察官「それでどうしましたか」
 証人「警棒を、横向きの『8』の字を描くように振り回し、威嚇しました」
 検察官「加藤被告はどうでしたか」
 証人「同じように、ナイフを横『8』の字を描くようにして向かってきました」
 検察官「威嚇しながら、どうしましたか」
 証人「人の少ない路地に加藤被告を追いつめようとしました」
 検察官「路地に行きましたか」
 証人「はい、警棒で追いつめると、加藤被告は後ずさりしながら路地に入りました」
 検察官「刃先はどこを向いていましたか」
 証人「私の方を向いていました」
 検察官「そこからどうしようと考えましたか」
 証人「警棒を持ち替え、拳銃で威嚇することにしました」
 検察官「どのように行いましたか」
 証人「警棒を左手に持ち替え、すぐに腰のサックから右手で拳銃を抜き、銃口を加藤被告に向けました」
 検察官「その際、撃鉄を起こしましたか」
 証人「起こしませんでした」
 検察官「そこで、なんと言ったのですか」
 証人「『ナイフを捨てろ』と言いました。それでもナイフを持ったままでした」
 検察官「それでどうしましたか」
 証人「ひざを曲げて、大きな声で『撃つぞ!』と言いました」
 検察官「変化はありましたか」
 証人「はい、加藤被告はナイフを落としました」
 検察官「それで、どうしましたか」
 証人「近づいて、足元のナイフをけりました」
 検察官「それでどうしましたか」
 証人「加藤被告の右手をつかみました」
 検察官「加藤被告の様子はどのようでしたか」
 証人「崩れ落ちるように座ったと思います。それから、左側を下にして寝ころびました」
 検察官「何時でしたか」
 証人「12時35分でした」
 検察官「加藤被告が右手に持っていたナイフは、このナイフですか」
 証人「そうです、そのナイフだと思います」
 検察官「そこで、証人はなんと話したのですか」
 証人「加藤被告に『今までやったことは分かっているな』と話したと思います」
 検察官「加藤被告は答えましたか」
 証人「答えてはいませんが、無言でうなずいたと思います」
 検察官「そのほか、何か話しましたか」
 証人「『持っているものを自分で言ってくれるか』と言いました」
 検察官「それで加藤被告はなんと言ったのですか」
 証人「『ジャケットの内側に折りたたみのナイフが入っています』と言っていました」
 検察官「口調はどのようでしたか」
 証人「普通に、落ち着いた様子で応じてくれました」
 検察官「泣いていましたか」
 証人「涙が出ていたか覚えていませんが、手錠を付けた後は泣いていたように思います」
 検察官「少し前に戻りますが、ナイフを落としたときの加藤被告の表情はどのようでしたか」
 証人「がっかりしたような表情でした」
 検察官「被害を受けて防護衣の着用に変化はありましたか」
 証人「地域課に加えて交通課でも着用を義務付けられました」
 検察官「今回の事件を機に?」
 証人「はい」
 検察官「今回の事件で証人も刃物で突かれるような被害を受けましたが、被告に対してどういう気持ちですか」
 証人「自分が被害者の立場だったらどういう気持ちだったかをもう一回考えてほしい。やったことに対して相当の処分を望みます」
 検察官「私からは以上です」
 弁護人「拳銃を向けたときの被告の表情はがっかりしたようなものだったと先ほどおっしゃっていたが、調書だとおびえたような表情だったとあるが、そういう感じだったのか」
 証人「はい」
 弁護人「最初、交番でガシャンという音を聞いたときのことをうかがいますが、あなたは被告がトラックを降りて走っていったのを見ていませんか」
 証人「はい」
 弁護人「白っぽい服の男がトラックを運転していたかわからない?」
 証人「よく覚えていません」
 弁護人「マル1の地点で男を見ましたか」
 証人「はい」
 弁護人「男は走ってくる最中に声を上げていましたか」
 証人「いろんな人の悲鳴でかき消されていて覚えていません」
 弁護人「男の手の動きは?」
 証人「ひじを直角に曲げて肩から当たってくる感じ。走っているときは右手を突き出す感じでした」
 弁護人「見ていた人の中には、被告は手を地面と水平になる感じにして走ったという人がいましたが」
 証人「覚えていません」
 弁護人「K1からK2にKさんが移動するのは見ましたか」
 証人「気づいたら人垣で被告が止まっていました」
 弁護人「人垣というのはどの辺ですか」
 証人「歩道上や車道の付近です」
 弁護人「何人ぐらいいましたか。大体でいいです」
 証人「100人ぐらいいたと思います」
 弁護人「マル3からマル4に南下したとの話ですが、Kさん以外に倒れている人はいましたか」
 証人「おりません」
 弁護人「あなたが追いかけているときに『待て、やめろ』と声をかけましたか」
 証人「はい」
 弁護人「警察官ということはその時点で言っていませんか」
 証人「そのときは言っていません」
 弁護人「被告と対峙(たいじ)したときのことをうかがいますが、対峙して格闘している間、被告は『わー』とか声を上げていましたか」
 証人「無我夢中で覚えていません」
 弁護人「確認しますが、あなたが直接(ナイフの攻撃が)当たったと感じたのは最初の一撃ですか」
 証人「はい。後からほかに当たったかもしれません」
 弁護人「(防護衣の)中のものも(新たに支給されたのか)?」
 証人「中はちがいます」
 弁護人「毎日着用していましたか」
 証人「はい」
 弁護人「中の防護板は取り外しますか」
 証人「取り出すこともありますが…」
 弁護人「対峙したときのことに戻ります。最初は(ナイフを)突き出してきましたか」
 証人「はい」
 弁護人「ナイフを持っている手に警棒を振り下ろした記憶はありますか。ナイフを落とそうとしたんですか」
 証人「そういう行動をとっていると思います」
 弁護人「手に当たったかは覚えていませんか」
 証人「覚えていません」
 弁護人「警棒は何センチでしたか」
 証人「柄の部分を合わせて60センチです」
 弁護人「警棒は肩に当たりましたか」
 証人「よく覚えてないです」
 弁護人「路地に入る前のことを聞きますが、この時点で拳銃のホルダーに手はかけましたか」
 証人「覚えていません」
 弁護人「路地入り口のところで警棒はしまいましたか」
 証人「その付近で収めるとナイフで刺されたと思います」
 裁判長「あとどれくらいですか」
 弁護人「マル6の位置で対峙したときの話ですが、『撃つぞ』と言ってもナイフを下ろさなかったが、もう一度言ったところ、ナイフを下ろしたとのことですが、両手を被告が上げたのはいつですか」
 証人「落としてから上げたと思います。1度目の警告をした後、ナイフを落としてから被告が『ナイフ落としました』とか言ってから、手を上げたと思います」
 弁護人「それから崩れ落ちるようになって上から乗っかった感じですか」
 証人「はい」
 弁護人「靴下にあったナイフについてですが、走っていて落としたと言いましたか」
 証人「そのような感じで言っていたと思います」
 《証人に対する質問はここで中断した。弁護人は検察官のいる場所へ移動し、証人が身に付けていた耐刃防護板を検察官と確認している。防護板についた傷を確認しているようだ。そして弁護人は防護板を証言台の証人の所に持ってきて、見せながら質問した》
 弁護人「全体的に縦にすれた傷がありますが、これはいつのものですか」
 証人「分かりません」
 弁護人「他の人から受け継いだもので分からないということですか」
 証人「わかりません」
 弁護人「証人が最初に対峙したときのことをうかがいますが、振り返って対峙したときの被告の表情は?」
 証人「私の方に向かってくるような表情でした」
 弁護人「おびえたような表情ではない?」
 証人「そういった表情ではないです」
 検察官「あなたと被告の間に車が止まっていたということですが、被告とかの位置は見えましたか」
 証人「はい。邪魔にはなっていません」
 検察官「対峙して被告がついてきた状況をうかがいます。その状況を事件の年の9月に警察庁で再現していますね。思いだしたことは?」
 証人「ナイフに警棒を振り下ろしたのを思いだしました」
 検察官「その際に踏み込んでくる被告の額に当たったのを意識しましたか」
 証人「そう感じました」
 検察官「防護衣の傷と中の板の傷は重ねると一致するのは確認しましたか」
 証人「はい」
 裁判官「被告に対峙したとき、警棒を「8」の字に振ったというのは意識してやったんですか」
 証人「逮捕術の術科訓練でやった通りにやりました。凶器を振り回させないようにです」
 裁判官「被告はすきを狙ってナイフを振ったように見えましたか」
 証人「私もやるかやられるかだったので覚えていません」
 裁判長「尋問としては終了です。示した図面に名前と日付を記入してください。長時間お疲れ様でした」
 《裁判長が尋問の終了を告げた。20分程度の休廷に入った》」

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です

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秋葉原無差別殺傷事件〈加藤智大被告〉第9回公判2010.5.24証人尋問 -下-


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