秋葉原無差別殺傷事件〈加藤智大被告〉第9回公判2010.5.24目撃者証人尋問、証拠調べ-上-

2010-05-24 | 秋葉原無差別殺傷事件

 《村山裁判長の指示で、証人が右手の扉から入廷してきた。スーツ姿のビジネスマン風の40代くらいの男性》
 検察官「あなたは平成20年6月8日、秋葉原で起きた事件の目撃者ですね」
 証人「間違いありません」
 検察官「どうして秋葉原にいたのですか」
 証人「仕事で近くで勤めていたからです」
 検察官「事故のあった外神田3丁目の交差点近くのビルで勤めているということですね」
 証人「間違いありません」
 検察官「秋葉原で何年仕事をされているのですか」
 証人「15、6年です」
 検察官「それでは秋葉原の地理はよく分かっていますね」
 証人「はい」
 検察官「あなたは当日、何か音や異変を感じたそうですが、どんなことが起きたのですか」
 証人「大きなドンという音がしたので、表に出ました」
 《ここで、検察官は事件現場の見取り図を大型スクリーンに映し出した》
 検察官「あなたは勤務先の建物の外に出た後、交差点を見たということですが、まず何を見たのですか」
 証人「交差点の中央のところで男の人が倒れていました」
 検察官「その位置を赤ペンでマルAと書いてください」
 検察官「Aの男性はどんな様子でしたか」
 証人「頭を北側に向けて倒れていました」
 検察官「身動きや呼吸はしていましたか」
 証人「いっさい身動きはしていませんでした。呼吸は確認できませんでした」
 検察官「Aの男性を介抱していた人はいましたか」
 証人「はい。女性でした」
 検察官「女性はどんな服装でしたか」
 証人「黄土色のTシャツを着た女性でした」
 《その後、女性は見取り図にマルDと書かれた》
 検察官「交差点でほかに倒れていた人はいましたか」
 証人「年配の人が倒れているのを確認しました」
 《証人は検察官に促され、見取り図にマルBと書いた》
 検察官「男性ですか女性ですか」
 証人「男性です」
 検察官「身動きはしていましたか」
 証人「していませんでした」
 検察官「AとBを見て何が起きたと思いましたか」
 証人「交通事故が起きたと思いました」
 検察官「その後、現場の交差点で何が起きましたか」
 証人「右(東側)の方から男の人が走ってきました」
 《証人は見取り図にマル1と書いた。これが加藤被告だ》
 検察官「男の年齢や服装などについて覚えていることはありますか」
 証人「薄いベージュのスーツで年齢は25、6歳でした」
 検察官「若い男だったと」
 証人「はい」
 検察官「顔の特徴は?」
 証人「眼鏡をかけていました」
 検察官「A、Bの男性の方以外に印象的な方はいましたか」
 証人「警察官がいました」
 検察官「何をやっていましたか」
 証人「男性が倒れていたので、どういう様子か確認していたと思います」
 検察官「マル1の男はその後、どうしましたか」
 証人「走ってきて警察官の方に突き上げるようにパンチするように見えました」
 検察官「殴っているように見えたと?」
 証人「はい」
 検察官「警察官の体勢は?」
 証人「座っていて立とうとした中腰でした」
 検察官「男の動作をもう一度」
 証人「パンチを下から突き上げるように。こういう風に…」
 検察官「あなたは今、右手でされたが、右手でいいのですか」
 証人「はい」
 検察官「ボクシングでいうボディー打ちみたいな感じですか」
 証人「はい」
 検察官「その後、男はDの女性に近づいたということですか」
 証人「はい」
 検察官「Dの女性に何をしましたか」
 証人「先ほどの警察官と同じようにパンチを突き上げるようなことをしました」
 検察官「同じ右手ですか」
 証人「はい」
 検察官「女性はその後どうなりましたか」
 証人「両手でおなかをおさえてひざまずくように倒れました」
 検察官「警察官はどうなりましたか」
 証人「同じく右手を腰に当てて倒れました」
 《証人は、その後、男がさらに交差点内で、別の男性に同じようにパンチを突き上げ、両膝から倒れた状況を証言した》
 検察官「交差点にいた人の動きはどうでしたか」
 証人「声までは覚えていませんが、一斉に逃げまどうのを確認しました」
 《その後、証人は加藤被告とみられる男を追いかける途中で、男が右手に黒いものを持っているものを確認したという。次に男が目撃したのは、男と警察官が対峙した場面だった》
 検察官「そこで、男は何をしていましたか」
 証人「警察官と向かい合っていました」
 検察官「警察官は何をしていましたか」
 証人「警棒を出して、男を制止しようとするしぐさをしていました」
 検察官「男はどうしていましたか」
 証人「立ち向かうような感じでした」
 検察官「男は右手の黒いものを持って、何かしていましたか」
 証人「(警察官と加藤被告が)2人でパチンパチンと…。時代劇でいう立ち回りのようなことをしていました」
 《証人は、加藤被告が手に持っていた黒いものと、警察官の警棒が当たる音をこう表現した》
 検察官「男は黒いものを振り回していたということですか」
 証人「はい」
 検察官「その後、警察官はどうしましたか」
 証人「男の人がなかなか抵抗をやめなかったので、警棒を置いて拳銃を抜きました」
 検察官「それを見てどう思いましたか」
 証人「正直、これで終わったなと思いました」
 検察官「『終わった』というのは、(男が)逮捕されるということですか」
 証人「はい」
 検察官「その後はどうなりましたか」
 証人「(勤務先の)ビルに戻りました」
 検察官「この事件に関係している車は見ていますか」
 証人「見ました」
 検察官「どのような様子でしたか」
 証人「運転席側のドアが開いていて、フロントガラスはクモの巣状になり、バンパーはずれていました」
 検察官「その後、交差点でどのような様子を見ましたか」
 証人「いろいろな人が介抱されているのを見ました」
 《加藤被告にパンチをされたように見えた男性警察官や女性は交差点内で倒れたままの状態で、証人は「いずれも自分の力で立てなくなっていた」と証言した》
 検察官「こうした様子を見てどのように思いましたか」
 証人「とんでもないことが起きた、これはただごとじゃないと思いました」
 検察官「現場に血は流れていましたか」
 証人「血が道路にびっしり流れているのを…」
 検察官「交差点以外で倒れている人はいましたか」
 証人「1人だけ見ました」
 検察官「男性でしたか、女性でしたか」
 証人「男性です」
 検察官「どんな様子でしたか」
 証人「身動きを一切していませんでした。周りの方が心臓マッサージなど、いろいろされていました」
 検察官「こうした状況を目撃し、事件後、あなたへの悪影響はありましたか」
 証人「食事、睡眠など…。なかなか寝付けない日々が…」
 検察官「最も衝撃的だったのは、どの場面ですか」
 証人「道路についた血を見た瞬間が焼き付いています」
 検察官「仕事面への悪影響はありましたか」
 証人「事件後、1~2カ月は秋葉原に来る方が少なくなり、(勤務先の)売り上げも激減しました」
 検察官「裁判官や被告人に言いたいことは?」
 証人「裁判官の方たちには、法に基づいて極刑にしていただきたい」
 証人「被告にはきちんと遺族や関係者に説明責任を果たしてほしい。そして、あなたが帰ってくる場所はもうないですから。きちんと反省してください」
 弁護人「男が警察官や女性にパンチを繰り出したように見えたというのは、走りながらですか」
 証人「はい。走りながら、こう、下から突き上げるように…」
 弁護人「男は手に何か持っていましたか」
 証人「そこは確認していません」
 弁護人「男は移動する間、ずっと走っていたのですか」
 証人「はい」
 弁護人「どんな様子で走っていましたか」
 証人「もう、全力疾走でした」
 弁護人「警察官と対峙しているとき、警棒と男が手に持っているものは何回ぐらいぶつかっていますか」
 証人「3回ぐらいです。カチンカチンカチンと。時代劇の立ち回りみたいに…」
 弁護人「男と警察官が向かい合っていたのはどのくらいの時間でしたか。かなり長い時間でしたか」
 証人「その時はそう思いました」
 検察官「ちょっとだけうかがいます。図面の補充などです。トラックの位置を先ほど書いてくれましたが、図面に『トラック』と書いてください」
 検察官「マル1からマル6の男の位置について、マル2とマル3は男が移動した方向を矢印で書いてください」
 《続いて、3人の検察官は、現場で撮影された写真を証人に示した》
 検察官「この画像にはあなたは写っていますか」
 証人「はい」
 検察官「黒ボールペンで囲ってください」
 検察官「これはガードレールに乗っている場面ですか」
 証人「そうですね」
 検察官「どういう場面ですか」
 証人「ごめんなさい。記憶にないです」
 検察官「覚えていない理由は?」
 「自分自身パニックになっていたので…」
 検察官「写っているのはあなただが、記憶にありませんか」
 「はい」
 《証人は最後に勤務先を赤丸で囲み、図面の補充は終了した》
 裁判長「弁護人は質問ありますか」
 弁護人「ありません」
 検察官「検察官から1つだけ。先ほどの証言で、警察官が中央通りの交差点の南から走ってきたというのは確実ですか」
 証人「はい
 検察官「これまでの裁判では北から走ってきたというのはたくさん証言があったが、北からの間違いでは?」
 「僕の記憶では間違いないです」
 検察官「覚えているのを正直に言ったということですか」
 「はい」
 裁判長「それでは審問としては終了します。印をつけたものがあるので、それらに今日の日付とお名前を」
 裁判長「証人はおつかれさまでした。退廷してください」
 裁判長「検察官は準備は良いですか」
 検察官「はい。それでは証拠を展示していきます」
 検察官「この耐刃防護衣には正面と背面に『警視庁』と書いてありますが、正面の『警視庁』の字の所に3カ所損傷があります。また、左胸部、側胸部に刃物で切られたことによる損傷が認められます」
 検察官「耐刃防護板を展示します。こちら金属製のもので、左胸に斜めにこすりつけられた損傷が認められます」
 検察官「続いて耐刃防護板カバーを展示します。白色の布製だが1カ所穴が空いているのが分かります」
 検察官「続いてサイドプロテクター1組を展示します。こちら2つで1組で、片方は縦に流れるようにこすれた跡が付いているのが認められます」
 検察官「最後にサイドプロテクターカバーを展示します。紺色の布製で2つのうち1つにはサイドプロテクターカバーと書いてある布が張り付けられていますが、そこにちょうど穴が空く形で損傷があります」
 検察官「証拠物の展示は以上です。証拠は、午後の証人尋問で証人に示して使用します」
 裁判長「証拠物を午後使うのは、もちろん認めます。午前中の証拠調べの予定はここまででよろしいですか」
 検察官「結構です」
 裁判長「証人尋問の時間が短めだったので、午前はこれで終了。午後1時30分から再開とします。それでは被告人は退廷してください」」

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です

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秋葉原無差別殺傷事件〈加藤智大被告〉第9回公判2010.5.24証人尋問 -下-


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