「民主党 小沢の読み通り反対派拡大」日刊ゲンダイ /「増税前にやることある」小沢グループがのぼり旗

2012-06-08 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

民・自・公「15日までに結論」 民主党内は真っ二つ
日刊ゲンダイ2012年6月8日 掲載
小沢の読み通り反対派拡大
  それみたことか。消費増税のために自、公との修正協議を始めた野田政権に、案の定、民主党内から反発が噴出し始めた。
  当たり前の話で「修正協議」という名の「自民党案丸のみ交渉」であるのは歴然だからだ。このままでは自民党にのみ込まれる。焦った中間派の議員たちが動き出したのである。
  そのひとつが「党の『民主的合意形成』を実現する集い」だ。党内の複数のグループにまたがっている議員らが呼びかけたもので、7日の会合には28人が出席した。旧民社党系を束ねる田中慶秋副代表があいさつに立ち、「自分たちは社会保障が前提で、消費増税が前提なのではない」とぶちかました。
  民主党は自民党との修正協議の実務者に、「ミスター年金」長妻昭と細川律夫の元厚労相コンビを内定していたが、自民党が「1人にしてほしい」と言い出したため、長妻を細川の補佐役に回らせた。マニフェストにこだわる長妻を引かせたことで、ますます、党内の警戒感が強まっている。
  内閣改造で農林水産相を外された鹿野のグループも不満タラタラだ。「党内を切り捨てて、どんどん自民党に傾斜している」(中堅)という怒りが渦巻いている。こうした動きを受けて、小沢元代表は意気軒高だ。7日の若手との会合では「約束をホゴにしていいんだということになれば、ちっちゃな子供たちの教育もできない」と野田首相を切り捨てた。
 「野田首相との会談の中身も漏れてきました。首相が小沢氏を説得したのではなく、小沢氏が野田さんに『こりゃ無理だよ』と諭す場面が多かったらしい。『党内の反対は自分たちだけではないぞ』『どんどん広がるぞ』という趣旨のことを小沢氏は言ったそうで、その通りの展開になってきました」(民主党関係者)
  修正協議で自民党は「最低保障年金」や「後期高齢者医療制度廃止」の撤回を求めるほか、増税する際の経済成長率の目標値も引っ込めさせる腹積もりだ。民主党内の議論を全部、蹴散らすつもりである。輿石幹事長は必ず、党に持ち帰り、了承を求めることを約束している。民・自・公は修正協議の初会合で「15日までに結論」を確認したというが、絶対、スンナリまとまらない。
======================
「増税前にやることある」=小沢グループがのぼり旗
時事通信2012/06/08-17:07
 民主党の小沢一郎元代表が主宰する勉強会「新しい政策研究会」は8日、消費増税関連法案反対を訴えるのぼり旗を150枚作成し、同研究会に所属する議員向けに配布した。街頭活動などで使われる。
 小沢氏は、野田佳彦首相による政策の優先順位の付け方を批判しており、のぼり旗には、白地に赤で「増税の前にやるべきことがある」と書かれている。「前」の文字だけ赤白を反転させ、首相との「時間軸」のとらえ方の違いを際立たせた。
 小沢氏は7日に開かれた自らを支持する若手議員の会合で「国民の中に、大衆の中に入れ」と地元活動を強化するよう呼び掛けている。
===========================
小沢、“野田殺し”始動!民主中間派を切り崩して法案つぶし
ZAKZAK 2012.06.08
 民主党の小沢一郎元代表が、消費税増税を柱とする「社会保障と税の一体改革」法案を潰すため、中間派に接近している。表向き、増税が先行して社会保障改革が先送りされることをけん制しているが、野党ペースで衆院解散・総選挙の時期が早まり、自分たちの議席が失われることへの警戒感・恐怖心も見え隠れする。民主、自民、公明3党の実務者は8日から修正協議を始めたが、民主党内の主導権争いも絡み、難航は必至だ。
 「われわれの議論の前提は社会保障改革だ。消費税増税ではない」
 中間派に属する旧民社党系グループの田中慶秋副代表は7日夕、国会内で開いた「民主的合意形成を実現する集い」で約30人の出席者に語り掛けた。小沢氏側近の山田正彦元農水ら、複数の小沢系議員も出席した。「中間派切り崩し」の思惑があるようだ。
 野田佳彦首相が、法案成立に「政治生命を懸ける」としていることに対し、中間派は「独断で増税先行の法案修正を受け入れることは許さない」(出席議員の1人)、「マニフェストをあっさり撤回するつもりか」(中堅議員)などと、公然と反旗を翻し始めた。
 これに先立ち、別の中間派新人議員らも、輿石東幹事長を国会内に訪ね、「自民党案の丸のみは国会審議と党内議論の否定だ。国民も納得しない」と訴えた。小沢氏と気脈を通じる輿石氏は「高い山にはゆっくり登らないといけない」と応じ、法案の早期採決に重ねて慎重な姿勢をにじませた。
 中間派と小沢氏ら、反増税派が一致しているのは、低支持率の野田首相が選挙に打って出ても多くが討ち死にするとの危機意識、いわば「選挙恐怖症」だ。
 小沢氏は7日、自らのグループ会合で「法案を通すために国民との約束(=マニフェスト)を全部放棄してもいいという人がいる。それは政党政治の破壊につながる。民主主義の冒涜(ぼうとく)だ」と、政府を痛烈に批判した。
 民主党は前回衆院選で「2万6000円の子ども手当」「高速道路無料化」「ガソリンの暫定税率廃止」といったバラ色のマニフェストを掲げて政権交代を実現したが、その多くが「絵に描いたモチ」だったことは、大多数の国民は気付いている。
 それを今さら持ち出すあたりが、民主党議員の体質を表しているが、小沢氏周辺は「民主党内の早期採決反対派は相当増えている。修正協議をまとめることは不可能だ」と分析する。
 仮に、法案修正で与野党が合意しても、小沢グループと中間派が結集すれば、党内の了承手続きは紛糾必至だ。
 民主党では3月、関連法案の事前審査に計50時間近い議論を重ねた。中間派の若手議員は「法案の事前審査と同じぐらいの時間をかけるべきだ」と主張。ひとたび本格的な議論が始まれば、野田首相が望む21日までの会期内の採決は極めて困難となる。
 日本の「決められない政治」「何も進まない政治」は続きそうだ。
===============
野田首相板挟み、小沢氏と谷垣氏から重圧
日刊スポーツ[2012年6月8日8時50分]
 消費税増税法案の修正協議と衆院採決を急ぐ野田佳彦首相が7日、増税に対照的な立場の小沢一郎元民主党代表と谷垣禎一自民党総裁にプレッシャーをかけられ、板挟みの立場が浮き彫りになった。
 首相は修正協議で15日までの合意、21日までの衆院採決を思い描く。しかし小沢氏は、「誰が言っているか知らないが、国民との約束を全部放棄しても、何でもかんでも消費税さえ賛成してもらえばどうでもいい、という人がいると聞く。民主政治の冒涜(ぼうとく)、破壊につながる」と、首相の方針を猛烈に批判した。
 一方、協議入りを求める谷垣氏は「わが党の社会保障制度改革基本法案を受け入れるのが、議論の前提。我々は覚悟を持って臨む。首相も逃げないでほしい」と、民主党の基本政策の撤回と、小沢グループ以外にも異論が強い、自民党案の“丸のみ”を要求。「法案を受け入れれば、解散の道筋を歩むのが筋」と、小沢氏が反対する早期の衆院解散にも言及した。
 民主、自民、公明3党の修正協議は今日8日に始まるが、時間も限られ合意は至難の業。さらに、もともと採決に慎重な民主党の輿石東幹事長は、修正協議で合意しても党内で了承を得る必要があると無理筋な認識を示し、首相の思惑には暗雲が漂っている。
日刊スポーツ[2012年6月8日8時50分 紙面から]
==================================================
民主・再稼働「慎重」要請117人議員名一覧 大飯原発再稼働を慎重に判断するよう求める署名 2012-06-06 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
 小沢、“野田いじめ”始動!原発再稼動でも倒閣へ
 ZAKZAK2012.06.06
 民主党の小沢一郎元代表が、新たな倒閣運動に乗り出した。同党の有志議員117人が5日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を慎重に判断するよう求める署名を、野田佳彦首相あてに提出したが、大半が、非主流派の小沢氏や近い議員だったのだ。「消費税増税反対」に加え、「原発再稼働問題」という武器も手に入れ、一気に「野田降ろし」に突き進むのか。
 「本当に国家、国民、次世代を考えたとき、何をやらなければいけないかは、多くの人が分かっている。当たり前のことが当たり前のように決まる政治を実現したい」
 野田首相は5日午後、都内で開かれた経団連の定時総会で、消費税増税、原発再稼働、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を挙げて、こう意気込みを語った。
 しかし、民主党内の動きを見ると、野田首相の苦境は明らかだ。
 5日に提出された署名を呼びかけたのは、菅直人前首相グループの荒井聡元国家戦略担当相と、内閣改造で閣外に去った中間派の鹿野道彦前農水相グループの増子輝彦元経産副大臣ら。だが、名簿の半数以上は、小沢氏をはじめ、鳩山由紀夫元首相や岡島一正衆院議員など小沢系議員がズラリと名を連ねた。「117」という数字は、民主党議員の3分の1にのぼる。
 小沢氏に近い議員は「増税反対だけでなく、再稼働問題でも、数の力を見せつけることができた。この問題は、大阪市の橋下徹市長ともつながる。これにTPPを加えれば、人数はさらに増える。『野田降ろし』に向けて、着々とウイングが広がっている」とほくそえんだ。
 実際、民主党内の“野田包囲網”は確実に狭まっている。
 30人を抱える中間派の鹿野グループは内閣改造で閣僚がゼロになったため、「誰のおかげで首相になれたと思っているのか」(幹部)と反発を強めている。輿石東幹事長は増税法案の与野党協議について、自民党が求めている採決日の確定を拒否。修正協議の実務者である長妻昭元厚労相らは自民党案の丸飲みに強く反対している。
 世論も野田首相には厳しい。内閣改造後の世論調査で、内閣支持率は、共同通信が32%(前回比4ポイント増)、朝日新聞は27%(同1ポイント増)となっており、効果はほとんどみられなかった。それどころか、増税法案を「今国会で成立させるべき」は17%と低調だった。
 ただ、小沢氏にとっては、「9月の代表選で野田首相を引きずり降ろし、息のかかった新代表・首相を誕生させるのが上策。小沢系議員は選挙基盤が弱いので、野田首相を追い詰めすぎて衆院解散・総選挙を打たれたら最悪」(民主党中堅議員)だけに、厳しい駆け引きが続く。
================================================
◆民主・再稼働「慎重」要請117人議員名
署名議員
<衆議院>
逢坂誠二(北海道8区)
鳩山由紀夫(北海道9区)
階猛(岩手1区)
黄川田徹(岩手3区)
小沢一郎(岩手4区)
石山敬貴(宮城4区)
石原洋三郎(福島1区)
渡部恒三(福島4区)
福島伸享(茨城1区)
松崎哲久(埼玉10区)
松崎公昭(千葉8区)
櫛渕万里(東京23区)
羽田孜(長野3区)
斎藤進(静岡8区)
萩原仁(大阪2区)
稲見哲男(大阪5区)
村上史好(大阪6区)
梶原康弘(兵庫5区)
馬淵澄夫(奈良1区)
吉川政重(奈良3区)
古賀敬章(福岡4区)
菊池長右エ門(比例東北)
石井章(比例北関東)
高野守(比例北関東)
水野智彦(比例南関東)
川島智太郎(比例東京)
小林興起(比例東京)
田中美絵子(比例北信越)
今井雅人(比例東海)
大山昌宏(比例東海)
笠原多見子(比例東海)
室井秀子(比例近畿)
永江孝子(比例四国)
道休誠一郎(比例九州)
野田国義(比例九州)
<参議院>
主浜了(岩手)
岡崎トミ子(宮城)
行田邦子(埼玉)
小見山幸治(岐阜)
斎藤嘉隆(愛知)
福山哲郎(京都)
姫井由美子(岡山)
江田五月(岡山)
佐藤公治(広島)
武内則男(高知)
大久保潔重(長崎)
外山斎(宮崎)
江崎孝(比例)
ツルネン・マルティ(比例)
那谷屋正義(比例)
西村正美(比例)
藤原良信(比例)
呼び掛け人
<衆議院>
荒井聡(北海道3区)
佐々木隆博(北海道6区)
畑浩治(岩手2区)
京野公子(秋田3区)
太田和美(福島2区)
小泉俊明(茨城3区)
石森久嗣(栃木1区)
宮崎岳志(群馬1区)
小宮山泰子(埼玉7区)
小野塚勝俊(埼玉8区)
黒田雄(千葉2区)
岡島一正(千葉3区)
生方幸夫(千葉6区)
奥野総一郎(千葉9区)
東祥三(東京15区)
初鹿明博(東京16区)
岡本英子(神奈川3区)
首藤信彦(神奈川7区)
橘秀徳(神奈川13区)
樋高剛(神奈川18区)
篠原孝(長野1区)
加藤学(長野5区)
近藤昭一(愛知3区)
牧義夫(愛知4区)
杉本和己(愛知10区)
鈴木克昌(愛知14区)
平智之(京都1区)
大谷啓(大阪15区)
辻恵(大阪17区)
中川治(大阪18区)
坂口直人(和歌山2区)
山田正彦(長崎3区)
福嶋健一郎(熊本2区)
川内博史(鹿児島1区)
玉城デニー(沖縄3区)
瑞慶覧長敏(沖縄4区)
工藤仁美(比例北海道)
山口和之(比例東北)
三宅雪子(比例北関東)
柳田和己(比例北関東)
相原史乃(比例南関東)
山崎誠(比例南関東)
橋本勉(比例東海)
玉置公良(比例近畿)
菅川洋(比例中国)
皆吉稲生(比例九州)
<参議院>
徳永エリ(北海道)
舟山康江(山形)
金子恵美(福島)
増子輝彦(福島)
大河原雅子(東京)
森裕子(新潟)
米長晴信(山梨)
谷岡郁子(愛知)
中村哲治(奈良)
松野信夫(熊本)
相原久美子(比例)
有田芳生(比例)
石橋通宏(比例)
大島九州男(比例)
今野東(比例)
田城都(比例)
難波奨二(比例)
はたともこ(比例)
藤谷光信(比例)
================================================
野田内閣再改造 消費増税と取引する愚 / 「増税反対派」増やした改造人事 2012-06-05 | 政治 
 「増税反対派」増やした改造人事
 日刊ゲンダイ2012年6月5日 掲載
 中間派の鹿野グループ、長妻グループが反旗
 4日発足した「再改造内閣」について、「適切な時期に適切な人材を選んだ」と自画自賛している野田首相。しかし、これまで首相を支えてきたグループが「冗談じゃない」と大騒ぎしている。野田政権はいよいよ終わりだ。
 今回の人事でカンカンなのが、鹿野グループ(約30人)だ。鹿野道彦農相と前田武志国交相が外された上、新たな入閣者もいなかったからだ。「首相を支えてきたのに、裏切られた。増税法案にも協力しない」と反旗を翻す議員も次々と現れている。
「我々のグループの半分は、当選4回以上のベテランです。どうしても両大臣を内閣から外すというなら、大畠元国交相を再入閣させたり、末松前内閣府副大臣を昇格させたりすることも出来たはず。それなのに首相は一方的に『内閣改造をします』と鹿野さんに告げただけで、断行。民間人まで入閣させた。首相にはずっと協力してきたのに、この仕打ちは酷いですよ。これでは増税法案にも賛成できません。もともと反対だし、これを機に縁を切ろうという議員も多いです」(鹿野グループ中堅議員)
 鹿野グループといえば、昨年8月の民主党代表選の決選投票で、大半が野田に投票し、野田逆転勝利に貢献した。いわば野田政権誕生の立役者だ。野田は気を配らなければいけないのに、冷遇し、自民党の要求に沿った再改造内閣を発足させた。鹿野グループが「恩知らず」と激怒するのも当然だ。
 5日昼にグループ会合を開き、今後の増税法案への対応を話し合うが、この状況で「協力する」という議員は皆無だろう。
「鹿野グループに続き、中間派から増税反対にシフトしそうなのが、党の厚労部門会議の座長を務める長妻昭元厚労相のグループ(約20人)です。マニフェスト通り、後期高齢者医療制度の廃止の素案をまとめたのに、自民党が廃止の撤回を求めているため、野田首相は及び腰です。長妻グループからは『自民党にスリ寄るのもいい加減にしろ!』『マニフェストの旗を降ろせと言うなら、増税には反対する』との声が上がっている。鹿野だけでなく、長妻グループも増税反対に動けば、残る中間派も同調する。そうなると、首相を支えるのは岡田副総理や仙谷政調会長代行ら、わずか数十人。自民党全員が増税法案に賛成しても、衆院の過半数には達しないでしょう」(政治ジャーナリスト・小谷洋之氏)
 中間派には「小沢は嫌いだが、小沢の方がスジは通っている」と言い出す議員も目立ってきた。野田政権の終わりが、ぐっと近づいている。
===========================================
野田総理は「時間軸の違い」という技術論に矮小化したが、官僚統治こそが「決められない政治」の根本原因だ2012-06-06 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
 「永田町異聞」
 2012年05月31日(木) 官僚統治こそが決められない政治の根本原因だ 
 「増税の前にやるべきことがある。行政の仕組みを中央集権の官僚支配から地方分権に変える大改革を実行すると国民に約束した。それが緒に就いていない」
 小沢一郎は、「官僚支配体制」の解体という、政権交代時に厳然と存在した民主党の理念を野田首相に諄々と説いた。
 しかし、消費増税パラノ症候群に陥っている野田首相の耳には素直に入っていかない。
 マスコミもこれを「増税の前に行政改革」という定型句で素通りし、野田首相の言葉を借りて、「消費増税時期の時間軸の違い」という技術論に矮小化しようとする。
 官僚中央集権の統治機構こそ、「決められない政治」の根本原因である。政治家はなにごとも省益優先の官僚に依存し、「先生」とおだてられてその代弁者となり、「ご説明」にコロリと騙される操り人形に成り果てている。
 「議院内閣制」は名ばかりで、実態は「官僚内閣制」だ。
 各省庁が、天下り先の企業や業界団体の利害得失を優先した予算配分や政策を進めようとすれば、一般市民の価値観と対立するのは当然であり、そこから情報・便宜サービスによってマスコミを手なずけ世論を操作するという悪だくみも生まれてくる。
 性急な消費増税論に走るのも、停電恐怖で原発再稼働という特攻精神をあおるのも、政治家の裏で振り付けている連中の仕業である。
 国民に選ばれた政治家が「民権」を重んじず、実態として官僚組織に握られている「国権」の使い走りをやっている。
 憲法上、国権の最高機関であるはずの国会は、さながら、官僚に振り付けられた政治家踊りの舞台のようである。激しい論戦であるかのごとき質疑の多くは、地元や支持団体向けのパフォーマンスにしか見えない。
 小沢は、明治以来続いてきた骨抜き政治におさらばし、根本的に統治機構を変えたいと言っているのだ。
 これまでの統治機構の延長線上でお愛想ていどに行革をやればいいという、霞ヶ関への迎合的姿勢が、野田首相をはじめとする政権中枢の面々に見えるからこそ、検察の弾圧で疲れ切った身に鞭打って、あえてここで小沢は踏ん張ろうとしているのではないだろうか。
 それは、真の民主主義をこの国に確立したいという、多くの国民の願いと一致するはずだ。
 日本になぜ真の民主主義が育たず、官僚支配体制が続いてきたのか。
 その淵源は、大久保利通、木戸孝允、西郷隆盛らが相次いでこの世を去った明治11年以降、伊藤博文とともに政府の実権を握るようになった山県有朋が、ヨーロッパ視察でフランスの「民権」に恐れを感じて帰朝したあたりからみてとれる。
 富農層の政治参加要求がもたらした自由民権運動は、憲法制定と議会開催を求めて盛り上がり、各地の演説会場はあふれるほど聴衆がつめかけるようになった。
 山県は藩閥支配を脅かすこの運動に危機感をおぼえ、運動を弾圧するため、憲兵を設け、警官にサーベルをもたした。
 政府は明治23年の憲法施行、帝国議会開催を約束したが、それまでの間に、山県有朋は周到に、官の権力を温存する仕組みをつくりあげた。
 「天皇の軍隊」「天皇の官僚」。軍隊や官僚は神聖なる天皇のために動く。政治の支配は受けない。そんな仕組みを制度に埋め込んだのだ。
 明治18年に初代伊藤博文内閣が発足し太政官が廃止されるや、内務大臣となった山県はエリート官僚を登用する試験制度を創設し、中央集権体制を確立するために市町村制、続いて郡制・府県制を実施した。
 避けて通れないのが人心の問題だ。いかに政府の思うように大衆を引っ張っていくか。
 江戸日本人の道徳は藩主、すなわち恩ある殿様を敬い、従うという風であったが、明治になって、それに代わる忠誠の対象が必要になった。
 そこで山県を中心に考え出されたのが天皇の神格化であり、そのためにつくられたのが「軍人勅諭」や「教育勅語」である。
 山県は松下村塾以来の皇国思想をその基盤とした。天皇と国民が道徳的絆で結ばれることで日本の民族精神は確立する。そして、それは日本の古代からの伝統である、というものだ。
 ところが、記録のない古代はいざ知らず、実際にはこの国において天皇が国民と道徳的絆で結ばれて統治したという歴史はほとんどないといえる。
 壮大なフィクションで天皇統治の国体を創造し、軍や官僚を中心に西洋列強の圧迫を跳ね返す国力をつけようというのが山県のねらいだった。
 自由民権運動、政党の台頭、憲法制定という近代化の流れ。時代に逆らうことはできないと知りつつ、あたかもその推進力を形骸化するかのように、天皇の名の下に独裁に近い体制を築き上げていったのである。
 そうした軍部や官僚への政党の関与を許さない、天皇直属体制が、昭和になって統帥権の名のもとに軍部の暴走を許し、気に入らない政治家を暗殺する暴力装置として働いて、国あげての軍事態勢へと突入していった。
 そして、敗戦で過去の国家体制が崩壊し、新憲法で国民主権が謳われても、天皇の官僚は、必ずしも国民の官僚とはならなかった。
 官僚は難関の国家公務員試験をパスした者たちの集団であるがゆえに、「一般人とは違う」という、いわば「身分」のような意識が強い。
 封建的な表現でいえば、同じ身分、同じ階級の仲間共同体ができあがり、自分たちが国家を背負っているという自負心が増長しやすい。
 そこで、自分たちの身分共同体、すなわち非公式の階級を守りたいという、組織防衛の意識が異常に強くなり、それが国家国民の公益よりも優先されるようになってくる。
 そしてそのありがたい身分を老後まで守り抜きたいという思いが、共同体の掟のなかで受け継がれ、退職後の天下りやわたりの人事異動まで、出身府省の官房が世話をするという、生涯まるがかえの巨大官僚一家が構築された。
 そうした官僚独裁ともいえる権力構造の解体をめざした政権交代の理念とは裏腹に、野田首相は自民党政権時代と見紛うばかりの官僚依存に戻ってしまった。その象徴ともいえる方針転換が、内閣法制局長官の国会答弁復活だ。
 国の予算を握っているのが財務省とすれば、法の制定や解釈を左右するのが内閣法制局である。
 法解釈を盾に内閣法制局が省益を守る側に立ち、政治主導による政策遂行を妨げることがある。
 そのトップである内閣法制局長官を、民主党政権は国会で答弁する「政府特別補佐人」のなかから除外していたが、通常国会開会後の今年1月26日に復帰させた。
 そもそも、内閣法制局長官の国会締め出しは、代表時代から小沢一郎が主張していたことだった。脱官僚依存を実行するためには、この組織の権力を削がなければ話にならない。
 小沢は内閣法制局に自民党時代から何度も煮え湯を飲まされた経験がある。
 1990年、イラクがクウェートに侵攻して湾岸戦争がはじまったとき、小沢は海部内閣時代の自民党幹事長だった。国連決議で派遣された多国籍軍に協力するため自衛隊を活用すべきだと小沢は主張した。
 東西冷戦が終わり、日本も国際社会できちんと役割を果たす一人前の国家になるべきだという認識が小沢にはあった。
 その意見に強硬に反対したのが内閣法制局だ。憲法で禁じられた集団的自衛権の行使にあたるという理由だった。
 日本の石油タンカーが往来するペルシャ湾の危機に直面し、130億ドルもの巨額なカネを出しはしても、命を賭ける人的な貢献をしない日本政府に、多国籍軍に参加した各国から冷ややかな視線が向けられた。まさに外交敗戦だった。
 内閣法制局が担う役割は内閣法制局設置法で次のように定められている。「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること」。
 ところが、実態としては単なる意見具申機関にとどまらなかった。
 内閣法制局の判断に従って政府提出法案がつくられ、憲法などが解釈され、それに沿って政治、行政が進められてきた。各省庁は、法制局のお墨付きを得られなければ法案ひとつ作れなかった。
 積み上げてきた法解釈の連続性、整合性を、変転しやすい政治の動きから守ることこそ、自分たちのつとめだと信じて疑わないのが、内閣法制局の伝統的思想なのだ。
 法制局の言い分も分からぬではないが、それで時代の変化に対応していけるかとなると甚だ疑問である。法解釈の整合性を重視するあまり思考が硬直化し、迅速で柔軟な法案作成が必要なときには、障害になるだけだろう。
 とくに憲法解釈を内閣法制局が担うという実態には、根本的な問題がある。
 そもそも憲法は、国民から統治者へ向けた、いわば契約書である。国民が守るべきものは憲法ではなく、法律や法規範だ。つまり主権者である国民の利益に反したことをしないように、統治者が絶体に守るべき基本ルールとして定めるものが憲法である。
 その解釈を、行政サイドにある内閣の役人が担い、国民に選ばれて立法機関である国会に集まった政治家がそれに従うというのでは、国民主権と、憲法の目的からして、本末転倒なのではないだろうか。
 その本末転倒が許されてきたのは、政治家の不勉強による官僚依存、政官の馴れ合いなど、いくつかの要素が重なり、絡み合ってきたからにほかならない。
 小沢は、そうした日本政治のぬるま湯体質が、官僚の実質的支配につながり、ひいては役所や関連団体などの組織的増殖、天下りの横行を生んできたのだという問題意識を持ち続けてきた。
 そして、国会の論戦さえ法制局の判断に依存するという悪弊を断ち切るために、法制局長官の答弁禁止を主張し、政権交代によって実現させた。
 もちろん、法制局長官という強力な助太刀がないなかでの国会答弁は、閣僚に負担を強いることは確かである。
 鳩山内閣では枝野幸男が、菅内閣では仙谷由人が法令解釈担当として国会で答弁する役割を担ったが、昨年9月、菅から政権を引き継いだ野田首相は、早々に方針を転換し、現内閣法制局長官、山本庸幸を国会の自席の後部席に座らせた。
 失言へのガードが固い野田の性格がもろに出た手堅い変更といえるが、かつて自由党党首だった時代の小沢が、自民党との連立協議のなかで、官僚が代理答弁する政府委員制度の廃止を認めさせ、国会を議員どうしの討論の場にするよう変革を志した経緯を考えると、いささか、やるせない。
 小沢はその自自連立政権において、政府委員制度廃止とともに内閣法制局長官の国会答弁廃止も求めたが、自民党はついに首を縦に振らなかった。しかし、民主党への政権交代にともなって、ようやくそれが実現したのである。
 法案をつくるさい、各省庁は事前に法制局の審査を受け、承認を受けることではじめて閣議決定に持ち込み、国会に提出することができる。
 だが、官僚が官僚の作成した法案に権威づけをして国家運営をコントロールしているにすぎず、国民に必要かどうかを判断しているわけでは決してない。
 小沢はそういう官僚の脱政治的「職欲」とでもいうべきものを排し、政治家どうしの真剣な議論の末に法律や政策が決定される、ごくあたりまえの国会のありようをめざしてきたといえる。
 行政も、国会も、司法も、変わらなくてはならない。真の民主主義のために。
 「行政の仕組みを中央集権の官僚支配から地方分権に変える大改革を実行する」という小沢の統治機構改革が、いつの日か緒に就くことを期待したい。
 新恭(ツイッターアカウント:aratakyo)
==============================================
「指揮権発動について再び首相と会う前日に更迭された」「小沢裁判の虚偽報告書問題・・・」小川敏夫前法相 2012-06-07 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア 
-----------------------------------
東電OL殺害再審開始決定した小川正持裁判長 小沢一郎氏の控訴審担当/麻原彰晃死刑囚 地裁裁判長も2012-06-08 | 死刑/重刑/生命犯 問題


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。