《第13回前半》陸山会事件公判 水谷建設元運転手が調書内容を否定「ハラがたってます」

2011-05-30 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

《第13回前半》陸山会公判傍聴記 ── 水谷建設元運転手が調書の内容を否定「ハラがたってます」
2011/5/25《THE JOURNAL》

5月24日雨。今日は水谷建設元会長の水谷功氏が出廷するため、傍聴希望者がいつもより多い。約55席の傍聴席に対して、90人ぐらいは並んでいた。たしかに、水谷元会長は日本全国を揺るがせた陸山会事件のキーマンの一人で、ウラ金の実態をどう証言するかでこの裁判の行方が大きく左右されることは間違いない。
そのほか、水谷元会長の前には水谷建設の元専属運転手が弁護側の証人として出廷する。ウラ金を渡したとされる時期に社用車の運転手をしていたのは彼だけで、これもまた重要な証言となる。まずは午前に行われたこの元運転手の証言から報告する。

10時開廷。午前中は、水谷建設の元専属運転手が出廷。元運転手は、事情聴取のときに川村元社長が04年10月15日に石川知裕氏に5000万円を渡した際、受け渡し場所となった全日空ホテル(現・ANAインターコンチネンタルホテル)まで川村元社長を送ったと話し、その時の様子が調書にまとめられている。石川氏に渡したとされる5000万円については証言や物的証拠が極端に少ないので、運転手の証言は検察側の立証にとって重要な意味を持つ。まずは弁護人による尋問。
(──は弁護人、「」内は元運転手、※は筆者注)
── あなたは川村元社長を全日空ホテルまで車で送ったことはありますか
「1回か2回ぐらいあると思います」
── 時期についての記憶はありますか?
「会長(注:水谷功元会長のこと)が脱税事件で逮捕された以降だと思います」
※補足。水谷功元会長が脱税容疑で逮捕されたのは06年7月。川村元社長がウラ金を渡したと証言しているのは04年10月と05年4月。つまり、元運転手はウラ金渡しの際に川村社長を社用車に乗せて全日空ホテルに行ったことはないと証言していることになる。
──そのことは検察官に説明しましたか
「はい」
── 検察官に何を聞かれましたか
「全日空ホテルで車を待機させるときのことを聞かれました」
── それは04年10月15日ではなく、全日空ホテルで車を停めるときの方法を聞かれたということですか
「はい」
── 車はどのように停めていたのですか
「川村社長だけではなく、会長を送るときも含め、2階のロビーで降ろして、ボーイさんに頼んでその近くで待機していました」
── 川村元社長の手荷物について聞かれましたか
「『覚えておりません』と答えました」
※補足。「手荷物」とは川村元社長が届けたとされる5000万円入りの紙袋を指す。検察は、何としてもこの運転手に「川村社長は、全日空ホテルに送ったときに手荷物を持っていた」という調書をとりたかっただろう。というのも、石川氏に渡したとされる5000万円については川村元社長の証言以外に証拠はなく、当日に本当に川村元社長が全日空ホテルに行ったという証拠もないからだ。しかし、その調書は元運転手の記憶とは異なるものだったことが明らかになっていく。
── あなたは調書を訂正したいと思っていますか
「はい」
── 川村社長を全日空ホテルに送ったときは、出発の直前に指示されたとの供述がありますが
「日常的にどこに行くのかは直前に言われることもあったので、こういうことを言いました」
── ということは、特定の時期の話ではなくて、一般的な話だったということですね
「はい」
── 検事は、その説明を(特定の日付の話であるかのような)こんな書き方をしたのですか
「はい」
── 調書を訂正するのなら、どのように訂正したいですか
「この日の記憶がほとんどなかったので、(日付を)限定できるということはないと思います。(検事には)この当時の記憶がほとんどなかったので『送った記憶がない』と言ったのですが、こういう調書になってしまいました」
── 検事から手荷物について聞かれたことについては
「手荷物については一般的なことで言ったので、川村社長を全日空ホテルに送った時の話をしたわけではないです」
── 調書にサインを求められたとき、どのように感じましたか
「10月15日ということで限定していたので、不安を感じました」
── 検事にはどのように話しましたか
「10月15日について限定されていることを指摘して、『サインできません』と言いました」
── 検事はどう言いましたか
「『サインしてもらわないと困る』と。私が『10月15日に限定しているのは直せないのですか』と聞いたら『直せない』と言われました」
── サインをしなくちゃいけないとも言われたのですか
「『サインして下さい』と言われたので、『サインはできません』と申し上げたのですが、『これは今日あなたが話したことをまとめたものだ』と」
── なぜサインしてしまったのですか
「『サインをしなきゃいけない』と言われました」
── 当時はなぜ(10月15日のことについて)聞かれているのかわからなかったのではないですか
「はい」
── サインしたことで後悔はしていますか
「10月15日に限定されたことが、私には覚えがありませんので、こういう書き方をされたのは直してほしいとおもっています」
── こういう調書がつくられたことについては
「できるならば、日付は削除してほしいです」
── こういう調書ができたことについて、どのように感じていましたか
「多少、ハラがたっていますね」
── 04年10月15日に、川村元社長を全日空ホテルに送ったという記憶はないんですね
「はい」
── 川村社長はこの公判で、全日空ホテルへの交通手段について『社用車がタクシーで』と答えていますが
「タクシーであれば、会社に領収書があると思います」
※弁護人の尋問終了後、検察側の反対尋問が行われる。運転手の調書否定証言に対し、検察側は川村元社長を議員会館の小沢事務所に訪ねていたことを尋問する。狙いがどこにあるかがよくわからなかったが、川村元社長が小沢事務所を訪ねていたことを証言させ、水谷建設と小沢事務所の関係の濃さをアピールしたかったのかもしれない。それに対し、元運転手は手帳に書かれているものは議員会館に行ったことを認め、一方で「日付はわかりませんが、手帳に書いた以外はないと思います」と答える。

最後に裁判官による尋問。
(──は裁判官、「」内は元運転手、※は筆者注)
── あなたが手帳をつけていた理由はなぜなのですか
「会社には日報があったのですが、私が行動していたことを自分で後で確認することも含めて、会社に聞かれたときのために書いていました」
※補足。会社に提出していた日報は、手帳に書かれているものに比べればおおざっぱなもので、詳細は書かれていないという。
── 手帳はどういう時に書いていましたか
「その時に応じて書く場合と夕方に書いていました」
── 何日かまとめてということは
「それはほとんどないと思います」
── 書き漏らしはありますか
「(仕事が)重なった時などはあると思うんですが」
── もうちょっと具体的にお話いただけますか
「時間的に会長と社長がバッティングしてしまったりした時ですね」
── 書き漏らすこともあったということですか
「忘れることもあったと思います。その日、書くのを忘れて、そのまま書いていないということはあると思います」
── 手帳はあなたのスケジュール表としても使っていたのですか
「そうです」
── スケジュールはあらかじめわかっているものなのですか
「先にわかっているというのは少ないですね。(指示が来るのは)当日か前の日で、事前に連絡がきていれば手帳に書きますが、当日に書くことが多かったです」
── それが当日が前日に書くことが多かったということですね
「はい」
── 直前に言われて書き忘れるということは
「それもあると思います」
── 10月15日に川村社長を送ったかどうかですが、あなた自身は記憶がないのですね
「はい」

以上で午前の部が終了。裁判官も、04年10月15日に元運転手が全日空ホテルまで川村氏を送迎したかどうかに強い関心を持っているようだ。
元運転手が証言したように、川村氏が水谷建設東京支店で金庫から5000万円を引き出した後、全日空ホテルまでタクシーで移動したのであれば、領収書が何らかの形で残っている可能性が高い。しかし、それがないのであれば社用車で移動したことになり、それは元運転手の証言とは矛盾してしまう。川村氏の移動手段をどのように事実認定するかも、裁判の重要なポイントとなるだろう。
そのほか、元運転手の証言によって検察による調書の取り方の問題点がまたもや明らかとなった。おそらく、元運転手の聴取を担当した検事は、上司の思い描くストーリーのままの調書をつくったのだろう。しかも、検察はこの調書の内容を一部の記者にリークして、「石川有罪」の空気作りまでしていた。リークをした検察関係者が、このような杜撰な聴取で調書が作られていたことを知っていたかは不明だが、検察の情報操作の巧さを感じさせる。
引き続き、午後は水谷建設元会長の水谷功氏が出廷する。ここでも石川氏に渡したとされる5000万円の流れについて証言が行われる。
※一問一答は筆者の傍聴記メモを元に主要部分を再構成したものです
2011/5/25(《THE JOURNAL》編集部 西岡千史
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