<秘密保護法案>公明党が了承 政府22日にも閣議決定

2013-10-17 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

<秘密保護法案>公明党が了承 政府22日にも閣議決定
 毎日新聞 10月17日(木)2時46分配信
 政府と公明党は16日、国家機密の情報漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法案の修正協議で、取材行為に関して「著しく不当と認められない限り、正当業務行為とする」との規定を追加することで大筋合意した。取材の自由を具体的に担保することで政府が譲歩する一方、「不当」と判断する基準はなおあいまいで、取材活動への萎縮効果が残る懸念がある。政府は22日にも法案を閣議決定し、今国会での成立を目指す。
  礒崎陽輔首相補佐官と公明党プロジェクトチームの大口善徳座長が合意した。同党は17日の幹部協議後、正式な表現も確認した上で法案提出を受け入れる。
  取材行為を罰則から除外する規定を巡っては、「知る権利と一体」と明記を求める公明党が、「取材行為は法令違反、著しく不当な方法と認められない限りは正当業務行為として罰しない」との修正案を示していた。政府は「情報漏えいの教唆(そそのかし)があった場合、漏えいした側だけが罰せられるのは不公平」と拒否してきたが、16日の協議で、公明案から「罰しない」との表現を外すことで双方が譲歩した。
  特定秘密を指定する基準作りについては「専門家から識見を聞く」とし、有識者の関与をある程度担保。歴史の検証などの観点から公明党が法案の付則に加えるよう求めていた公文書管理法、情報公開法の改正は明記せず、衆参両院の付帯決議や国会答弁で補う。
  同法案にはこれまでの修正協議で、報道の自由以外に知る権利、取材の自由を尊重する規定を追加。特定秘密の指定が30年を超える場合は内閣の承認が必要との修正も加えていた。【小山由宇、高本耕太】
 最終更新:10月17日(木)2時53分
 *上記事の著作権は[Yahoo!JAPAN ニュース]に帰属します
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「秘密保全法」考 中日新聞/週プレニュース/日刊サイゾー/讀賣新聞/産経新聞/後藤昌 2013-09-13 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
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◇ 「秘密保護法」考 / ちなみに、ソ連邦の崩壊は、「情報公開(グラスノスチ)」が大きなきっかけになった 2013-09-23 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
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◆ 尖閣諸島ビデオ「なぜ公開許されないのか」=一色正春元海上保安官 2011-01-21 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
一色正春元保安官 尖閣ビデオ流出 2010-12-25 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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◇ 秘密保全法案 言論に配慮し情報管理を 産経新聞【主張】 2013/8/18 Sun. 2013-08-18 | 政治
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◇ 秘密保全法案 中日新聞 【特報】 2013/08/17 Sat. 2013-08-18 | 政治
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◆ 「隠蔽だらけの民主党が進める秘密保全法(反情報公開推進法)を許してはならない」西山太吉氏が警告 2012-02-25 | 政治 
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◆ 『沖縄密約』西山太吉・澤地久枝・吉野文六「嘘をつく国家はいつか、滅びるものです」/小沢一郎氏裁判 2012-02-19 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
「沖縄密約証言」をよみくらべる 2009-12-03 | 政治 
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◆ 秘密警察が跋扈する 後藤昌弘(弁護士) 2013-09-15 | 後藤昌弘弁護士 
 中日新聞を読んで 秘密警察が跋扈する 後藤昌弘(弁護士)
  2013/9/15 Sun.
 4日の朝刊に、特定秘密保護法案に関するパブリックコメント(意見公募)が始まった旨が報じられていた。見出しには「知る権利に一定配慮」とある。しかし本当に配慮されているのだろうか。
 法律案の概要を見ると、保護対象となる秘密が別表に列記されている。しかし、いったん法律が制定された後に、別表の内容が加えられる可能性は常にある。拡張解釈の禁止規定を定めることとされてはいるが、解釈するのは国自身であり、法律制定後に恣意的な解釈がされてきた事案は嫌というほど見てきている。
 さらに怖いのは、特定秘密を扱う公務員や企業の社員について、行政機関の長または警察本部長が個々の職員の適性を評価することとなっている点である。評価対象は、テロ活動に関する交友関係から犯罪歴、精神疾患、酒癖の悪さ、経済的信用状況まで多岐にわたる。警察が市民の交友関係から飲酒歴、信用状況まであらゆる個人の情報を調査できることになっているのである。適性評価については一応本人の同意が必要とされるようだが、対象者が拒否などできるはずもないし、調査に必要だから、との名目でどんな情報が集められるのか国民には知りようもない。
 別表の内容にも問題がある。現在、自衛隊の兵器配備状況はネットで調べられるが、今後は秘密となる。政府がどんな兵器に幾ら金を使ったのか、国民は知ることができなくなる。外交分野も政府間の密約などは秘密となる。政府は臭い物にふたができる。原発もテロ被害の対象となり得るから、原発の構造上の欠陥を政府が秘密の対象に含めることすらできるのある。
 この法律の目的はスパイ対策といわれている。しかし法律は日本国内でしか適用できないから、外国に逃げた者は処罰などできない。結局この法律は国民を監視する機能しか持たない。こんな法律は断じて許してはならない。こんなことを書くと、私などは真っ先に素行調査の対象にされるのだろうが。
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〈来栖の独白2013/9/15 Sun. 〉
 戦後アメリカの占領政策の成果で、日本人の国防、インテリジェンス意識は、奇妙なものになってしまった。というより、「自国を自分で守る」という、国際社会においては当然の「義務」すら果たさない国民となった。
>現在、自衛隊の兵器配備状況はネットで調べられるが、
 この状況は、当然、我が国の防衛状況が(実際は、防衛といえるほどのものはないのだが)外国に筒抜けであることを意味する。
 たとえば、武器輸出三原則についてだが、輸出するほどのものを持っておらず、武器は買うばかりの国であるなら、「防衛」は不可能である。日本においては戦闘機も護衛艦もアメリカ製である。ということは、現在、武器の大半はソフトウェアであるから、アメリカが工作しようとすればいくらでもできてしまう。作動不能にすることも、アメリカ(武器輸出国)には可能だ。
 戦後教育の成果であろうか、日本人は何かにつけ、オープンでクリーンであることが善いことと信じてきたようだ。が、これでは、世界に対して、国は守れない。  
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◇ 国際情報戦の裏側 大使館など対象「公然の秘密」 盗聴反発--実はポーズ? 中日新聞 《特報》 2013-07-04 | 国際  
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◇ 中国の一貫した謀略戦(長期間かけた法律、世論、心理の三戦)に曝されている日本 尖閣諸島 2012-07-30 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
 日本を絶体絶命の危機に陥れつつある中国 長期間かけた法律、世論、心理の三戦を実施中
 樋口譲次 JBpress 2012.07.24(火)
 石原慎太郎・東京都知事によって、尖閣諸島の購入計画が明らかにされると、国内では大きな反響と支持の輪が広がり、すでに10億円を超える賛助金が集まっているようである。
 これに対し、中国は当然のように反発を強めているが、尖閣諸島略取の対日戦略は40年余りにわたり終始一貫して展開され、年を追うごとにエスカレートしてきた。その戦略は、いったいどのような思想の下に押し進められているのか?
*中国の三戦、「世論戦」+「心理戦」+「法律戦」
 いつもながら中国に対する控えめな表現が目立つ防衛白書(平成23年版)であるが、中国の「三戦」については、次のように記述している。
 「中国は、軍事や戦争に関して、物理的手段のみならず、非物理的手段も重視しているとみられ、「三戦」と呼ばれる「輿(世)論戦」、「心理戦」および「法律戦」を軍の政治工作の項目に加えたほか、『軍事闘争を政治、外交、経済、文化、法律などの分野の闘争と密接に呼応させる』(2008年中国の国防)との方針を掲げている」と。
 1963(昭和38)年に公布された「中国人民解放軍政治工作条例」は、2003(平成15)年に改正され、「世論戦」、「心理戦」および「法律戦」の実施を明確に規定した。
 過剰なまでにシビリアン・コントロールを強調する戦後の日本にあっては、軍が行う「政治工作」という概念が理解できないかもしれない。
 中国軍の「政治工作」とは、対内的には「共産党の軍隊」であるとの基本原則を堅持するための政治思想教育の徹底であり、対外的には国家目標を達成するため「軍隊の戦闘力を構成する重要な要素」としての軍による政治活動を、前もって相手国(その同盟国を含む)に仕かけることを意味していよう。
 軍による対外的政治工作は、軍事を純粋に軍事力という物理的要素からだけではなく、心理的、政治的要素にも重きを置いて考える「孫子」の戦略思想を反映したものである。
 時々、中国政権内部における軍の独走が話題になる。しかし、「世論戦」、「心理戦」および「法律戦」を代表的手段として行われる軍の政治工作は、軍単独ではなく、政治、外交、経済、文化、法律などの分野の闘争と密接に絡ませ、国家のあらゆる機能を駆使して展開される。その策動の目標の1つが、まさに尖閣諸島なのである。
*「孫子」の「戦わずして勝つ」の現代的実践としての三戦
 一般的に、戦争は、相手国を軍事力で撃破して目的を達成するものと考えられがちだ。しかし、孫子は、相手国の占領支配を目的とする戦争においては、敵国を保全したまま勝利を獲得するのが最上の策であると主張する。
 つまり、「不戦而屈人之兵、善之善者也」(「孫子」第3章謀攻篇)、すなわち「戦わずして勝つ」ことである。
 中国では、王朝の交代のたびに繰り返されてきた残虐な戦いで、何千万とも言われる大量の人命と莫大な財産が失われてきたが、この歴史が、上記の考えを補強してきたのは、なるほどとうなずけるところである。
 ヘンリー・キッシンジャー博士は、米国の親中派の代表と目される重鎮であるが、回顧録「中国(上)」(岩波書店)の中で、「中国人は、常にぬけ目のないリアルポリティクス(現実的政治)の実行者である」と喝破している。
 古来、中国は、権謀術数の国であり、極めて策略的である。そして、中華人民共和国(人民解放軍)を作った毛沢東がそうであったように、中国は「孫子」の忠実な実践者であり、その「戦わずして勝つ」の現代的実践の手段が、中国が三戦として掲げる「世論戦」、「心理戦」および「法律戦」なのである。
 米国防省は、2010年8月の「中華人民共和国の軍事および安全保障の進展に関する年次報告」の中で、中国の三戦について、次のように説明している。
 「世論戦」は、中国の軍事行動に対する大衆および国際社会の支持を築くとともに、敵が中国の利益に反するとみられる政策を追求することがないよう、国内および国際世論に影響を及ぼすことを目的とするもの。
 「心理戦」は、敵の軍人およびそれを支援する文民に対する抑止・衝撃・士気低下を目的とする心理戦を通じて、敵が戦闘作戦を遂行する能力を低下させようとするもの。
 「法律戦」は、国際法および国内法を利用して、国際的な支持を獲得するとともに、中国の軍事行動に対する反発に対処するもの。
 いずれにしても、中国の三戦を一言で置き換えれば、「謀略戦」で勝つということである。「謀略戦」は、平・戦両時にわたって展開されるが、特に、平時の戦いにおける主要手段として重視して運用される。
 「謀略戦」は、「間諜」(スパイ活動)や「詭道」(相手を偽り欺くこと)などとともに併用され、その狙いは、相手国の意図を測り、油断を誘い、戦備を弱め、そして戦意を挫くことにある。同時に、相手国の同盟関係(日米同盟)を機能不全とし、あるいは解体するにある。
 この「謀略戦」は、尖閣諸島などを標的に、すでに我が国に対して広範に仕かけられており、明らかに現在も進行中である。
 そして、今後も執拗に続いて行くものと覚悟しなければならない。従って、その狙いと実態を十分に承知し、これに打ち勝つ対中戦略を練り、国を挙げて対応する体制を整備することが必要である。
*謀略戦に乗じられやすい民主国家の弱点
 建国以来、米国が、唯一敗北を味わったのはベトナム戦争である。
 「孫子」の弟子である北ベトナムのホー・チ・ミン大統領やボー・グエン・ザップ将軍は、その間接的な攻撃と心理戦の原則を自分たちの戦争に適用した。
 そして、その巧妙な報道操作によって、南ベトナム国家警察本部長官によるベトコンの銃殺、「ソンミ村事件」に代表されるベトナム住民の虐殺、爆撃で焼き出され裸で泣きながら逃げ惑う少女の姿など、参戦の大義に対する疑念と戦争の残虐さをアピールする映像がテレビなどで繰り返し米国のお茶の間へ持ち込まれた。
 米国内では、ベトナム戦争派兵の支持率は急速に低下し、反戦の声は高まり、厭戦思想(気分)が全国規模にまで拡大して米軍の撤退を早めた。ベトナム戦争は、史上初めて、戦場ではなく新聞の紙面やテレビの画面で勝敗が決まった戦争(「テレビ戦争」、「リビングルーム戦争」)だと言われている。
 1993年10月、「ブラックホーク・ダウン」で有名になったソマリアの「モガディシュの戦闘」でも同様なことが起こった。米軍の「MH-60ブラックホーク」がソマリア民兵に撃墜された。そして、18人の米兵が殺戮されて市中を引きずり廻されるテレビ映像が公開された。
 米国民の間には衝撃が走り、一挙に撤退論が噴出して、ソマリア内戦で発生した難民に食糧援助を行うために参加した平和維持活動(PKO)の目的を果すことなく撤退を余儀なくされた。自由な民主社会における情報の持つ威力である。
 一方、中国あるいは北朝鮮のように、共産党(朝鮮労働党)一党独裁で、思想・言論・報道の自由を認めず、強度の統制を行う国家では、このような事態には陥り難い。ちなみに、ソ連邦の崩壊は、「情報公開(グラスノスチ)」が大きなきっかけになったと指摘されている。
 このように、強権支配の全体主義国家と自由な民主主義国家との抗争においては、非対称の政治社会体制が戦いの帰趨を左右する大きな要因となり得る。
 特に、意見の多様性を認め、情報の自由な発信・交換を認める国家では、政治家、軍隊、国民そしてマスコミまでもが謀略戦の格好の対象となり、敵に乗じられやすい社会環境が存在する。
 秘密保護法もスパイ防止法もない我が国は、その不備を深刻に認識し、法制定やマスコミのあり方などを含めて弱点の解消策を真剣に検討する必要がある。
*我が国への「三戦」の仕かけ~その実態
 そこで、現在、日中間で最大の懸案事項となっている尖閣諸島問題を題材に、中国の「謀略戦」の実態について公刊資料を基に概説してみよう。
 尖閣諸島は、歴史的にも、国際法的にも我が国の固有の領土であり、我が国が実効支配している。
 この尖閣諸島に対して、中国は、自国領土である根拠も、実体も皆無であるにもかかわらず、あたかもそうであるかのように捏造し、略取する「謀略戦」を大胆かつ執拗に仕かけている。誠に不届き千万、厚顔無恥な国家と言わざるを得ないのだが・・・。
 そもそも、中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは1971年12月である。1968年秋、日・台・韓の専門家が中心となり、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の協力を得て行った学術調査の結果、東シナ海に石油埋蔵の可能性があるとの指摘がなされたのが発端だ。
 1972年の日中国交正常化交渉第3回田中・周会談において、周恩来首相は「尖閣諸島問題については、・・・石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ、台湾も米国も問題にしない」(服部隆二著「日中国交正常化」中公新書)とその事実を認めている。
 そのうえで中国は、当時、中ソ対立の激化にともない、対ソ戦略上日中講和を急いだため、自ら本問題の一時棚上げを提案した。
 しかし、中国の「謀略戦」は、1970年代初頭からすでに始まっていた。その主要な事象を追ってみよう。なお、文末の括弧内は、三戦のうち、どの戦いに該当するかを示している。
 1971年、米国サンフランシスコで中国人留学生らが尖閣諸島は中国固有の領土であると主張するデモを行い、これが世界中の中国社会にも拡大されて「保釣運動」へと発展した(世論戦)。
 1978年には、約100隻の中国漁船が尖閣諸島に接近し、領海を侵犯して違法操業を行った。この後、中国人活動家などの領海侵犯が繰り返されていく(世論戦、心理戦)。
 1992年、中国は「中華人民共和国領海法」を制定し、釣魚列島(尖閣諸島)が自国領であると規定した。(法律戦)なお、翌年(1996年)、国連海洋法条約が発効し、我が国は尖閣諸島周辺における排他的経済水域を設定した。
 2003年、厦門市で開催された全世界華人保釣フォーラムにおいて「中国民間保釣連合会」の結成を決定した(世論戦)。
 翌年、この連合会などが準備した抗議船2隻は、領海を侵犯し、魚釣島から約3海里地点に20個の石碑を沈めている。尖閣諸島には、かつて中国人が居住していたとの証を作為するためである(法律戦)。
 本問題とも関連するが、中国は、2004年4月、我が国の沖ノ鳥島は「島」ではなく「岩」であり、日本の領土とは認めるが、排他的経済水域は設定できないと主張した。
 そして、2009年8月の国際連合大陸棚限界委員会において、沖ノ鳥島を「人の居住または経済的生活を維持できない岩」であると認定するよう意見書を提出している。
 その主張に反して、南沙諸島西北部の群礁である赤瓜礁には人工建造物を構築しており、自国に有利なように国際法を解釈し、あるいは自国の主張を裏付ける国内法の制定を行うなど、近年積極的な法律戦を展開するようになっている。
 2008年には中国国家海洋局所属の海洋調査船2隻が、尖閣諸島付近の領海を約9時間にわたって侵犯した。これ以降、中国は国家機関を表に出して主権を主張するようになり、行動は一段とエスカレートした。
 我が国は、翌年、海上保安庁による同諸島周辺の監視態勢を強化するため、PLH型巡視船の常駐化を決めたが、中国外交部は北京の日本大使館に対し「日本が行動をエスカレートさせれば、中国は強硬な反応を示さざるを得ない」と、恫喝まがいの抗議を行った(心理戦、世論戦)。
 2010年9月7日、中国漁船が領海を侵犯し、海上保安庁の巡視船の停船勧告を無視して逃走する際、巡視船に衝突を繰り返したため、同船長が公務執行妨害で逮捕・勾留されるという「中国漁船衝突事件」が発生した。
 中国政府は、即座に複数の報復措置を繰り出した。
 日本との閣僚級の往来停止、航空路線増便の交渉中止、石炭関係会議の延期、日本への中国人観光団の規模縮小、在中国トヨタの販売促進費用を賄賂と断定、日本人大学生の上海万博招致の中止、中国本土にいたフジタ社員4人をスパイ容疑で身柄拘束、レアアースの日本への輸出停止などである。
 そして、9月10日には中国の漁業監視船「漁政201」と「漁政202」が尖閣諸島付近の日本の接続水域に侵入するとともに、18日、中国国内4都市では数百人規模の反日デモが組織され、21日、ニューヨークを訪れていた温家宝首相は「我々は(日本に対し)必要な強制的措置を取らざるを得ない」と述べた(心理戦、世論戦)。
 これに屈したかのように、民主党政権は、25日、中国人船長を処分保留のまま釈放した。しかし中国政府は、中国人船長逮捕に関して日本に謝罪と賠償を要求するとともに、尖閣諸島海域における「漁政」によるパトロールを常態化させることを決定した(心理戦、世論戦、法律戦)。
 昨年(2011年)、香港の民間団体「保釣行動委員会」は、世界各国の保釣運動6団体を結集して「世界華人保釣連盟」(会長は台湾人)を設立した。両岸問題を抱える中台であるが、こと尖閣諸島問題に限ってはこの外交的演出を通して共闘関係にあることを見せ付けようと腐心している(世論戦、心理戦)。
 この年は、漁業監視船に加え、中国海軍Y8情報収集機とY8哨戒機、国家海洋局のヘリコプターそして海洋警備機関である海監所属の「Y12」プロペラ機など航空機による活動が活発化してきた。
 また、中国の海洋調査船「北斗」と「科学3号」が我が国の排他的経済水域内でワイヤー状のものを下し曳航しているのが度々確認されており、海洋調査を本格化させているのは明らかだ。これらの諸活動が、軍の統制下にあることは周知の事実であり、その行動の三次元化(立体化)が顕著となっている(心理戦、世論戦)。
 今年(2012年)になって、中国政府および政府系報道機関は、初めて釣魚列島(尖閣諸島)を、チベット・新疆ウイグル自治区および台湾と同じように中国の「核心的利益」と表現するようになった。
 3月には、中国国家海洋局所属の「海監50」と「海監60」が我が国の接続水域に侵入し、このうち1隻が25分にわたって領海を侵犯した。本行動について、同海洋局の海監東海総隊責任者は「日本の実効支配打破を目的とした定期巡視」と述べるまでに至っている。
*最後は、心理的な戦いだ
 「孫子」は、中国の春秋時代(紀元前8世紀~)末に呉王闔廬(こうろ)に仕えた兵法家・孫武が書き残した兵法書と伝えられている。その「孫子」以前に成立していたとされる「囲碁」は、中国人の戦略的思考を色濃く投影している。
 碁盤上では、同時に数か所で異なった戦いが繰り広げられるが、それらは相互に絡み合って展開され、最後は支配した領域の多寡をもって相対的優位を争う戦略的包囲戦である。
 また、日本の「将棋」や西洋の「チェス」を短期決戦とすれば、「囲碁」は長期持久戦である。
 「世論戦」、「心理戦」および「法律戦」は、独立した概念のように分類されているが、尖閣諸島問題に関する中国の対日戦略に見られる通り、実際は相互に密接不可分の関係にあって、三位一体として運用される。中国の三戦は、まさに「囲碁」のゲームの理論に沿って展開されるのである。
 「世論戦」は「心理戦」と「法律戦」の展開を促進するため国内外における同調意見の高まりを作為して相手の敵対心を弱め、「心理戦」は「世論戦」と「法律戦」の遂行を可能とするよう相手の意識を攪乱・操作し、「法律戦」は「世論戦」と「心理戦」を助長するための法的布石を打つという具合である。
 このように、中国の三戦は、戦略的包囲戦ならびに長期持久戦として巧妙にかつ何年もかけて忍耐強く遂行される。そして、「相手国の為政者と国民の目を曇らせ、心を腐らせる」ことを狙いとし、「熟柿(膿み柿)」になって落ちるのを待つ。
 すなわち、敵を絶体絶命の窮地に誘いこみ、戦う前にその軍隊や国が無傷のままで降伏するように陥れるのである。その要訣は、大きな軍事力を背景とした心理的な戦いをもって政治目的を達成することにほかならない。
 我が国が、中国の一貫した謀略戦に曝されている重大な事実と深刻な実態を、政府はもとより、国民も重々肝に銘じなければならない。
  *強調(太字・着色)は来栖
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