中日新聞 2018年8月14日 核心
米とトルコ 深まる亀裂
トランプ米政権が、トルコ在住の米国人牧師の拘束を巡り、経済制裁や大幅な輸入制限を相次ぎ表明、トルコ通貨リラが急落している。 経済危機に発展しかねない状況に、エルドアン大統領は「一人の牧師のために戦略的パートナーを犠牲にするのか」と猛反発。北大西洋条約機構(NATO)加盟国の亀裂が深まっている。 (カイロ・奥田哲平、ワシントン・石川智規)
拘束されているプランソン牧師は、2016年7月のクーデター未遂事件で、トルコが首謀者と見做すイスラム強指導者ギュレン師派を支援したとの疑いで逮捕され、現在は自宅軟禁状態。トルコが解放を拒否したためトランプ大統領は10日、トルコから輸入する鉄鋼の追加関税を50%、アルミニウムは20%にそれぞれ倍増する方針を表明した。
プランソン氏は保守的なキリスト教右派の福音派に所属。トランプ氏がNATOの同盟国をなりふり構わず攻撃する背景には、11月に中間選挙を控え、主要支持母体に解放をアピールする狙いがある。米保守系団体は「トランプ氏は公約を守った」と早速評価する声明を出した。
一方、トルコの政治評論家ガヘド・トゥーズ氏は「本当の狙いは、ロシアとイランとの関係を強化するエルドアン氏への圧力だ」と指摘する。トルコは最新鋭のロシア製地対空ミサイルシステム「S400」の導入を決めたほか、イラン核合意離脱に伴う米国の経済制裁にも反対姿勢を貫く。
エルドアン氏はトランプ氏が追加関税措置を発表すると、即座にプーチン大統領と電話協議に臨んだ。10日付けの米紙ニューヨークタイムズ(電子版)に寄稿し、「単独行動主義とトルコへの無礼な態度を改めなければ、新しい友人と同盟を探すことになるだろう」と警告。イランへの経済制裁に続き、トルコとの対立が激化すれば、中東情勢が一層不安になる。
エルドアン氏の強硬姿勢も為替相場を押し下げる一因となっている。中央銀行への介入をいとわない金融政策や娘婿を財務相に起用するなどの手法が不安視される。トルコは海外資金への依存度が高い。外貨建て債務を抱える金融機関や企業の返済負担が増せば、景気失速は避けられず、経済成長を背景に長期政権を築いてきたエルドアン氏の支持が揺らぐ可能性もある。
◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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◇ 『ユダヤとアメリカ 揺れ動くイスラエル・ロビー』立山良司著 中公新書
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