タトゥー彫師、無罪確定へ
産経新聞 2020.9.17 19:22|社会裁判
医師免許がないのに客にタトゥー(入れ墨)を入れたとして医師法違反の罪に問われた彫師、増田太輝(たいき)被告(32)について、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は、検察側の上告を棄却する決定をした。罰金15万円とした1審大阪地裁判決を破棄し、無罪とした2審大阪高裁判決が確定する。16日付。3裁判官全員一致の結論。
焦点はタトゥーの施術が、医師法の「医療行為」に当たるかだった。
第2小法廷は、医療行為の定義を(1)医療に関連する行為(2)医師の施術でなければ危険な行為-と判示した。その上で、タトゥーの施術の危険性は認めつつも「装飾的な社会的風俗として受け止められてきており、医師免許の取得でタトゥーに必要な美術の知識を習得することも予定されていない」として、(1)の医療関連行為には該当しないと判断。医師免許がなくても同法で取り締まることはできないと結論付けた。
草野裁判官は補足意見で、近年はタトゥーを望む人もいる中、医師免許を必要とする解釈をすれば、タトゥーができない社会を強制的につくることになると指摘。危険を防ぐ法規制が必要なら「新たな立法で行うべきだ」とした。
1審は、医療行為の要件に(1)までは求めず「医師でなければ皮膚障害などの危害が生じる恐れがある」とし、(2)のみで医療行為に当たると判断。2審は(1)にも着目し、医療業務とは根本的に異なると認定して逆転無罪とした。
増田さんは、平成26~27年、医師免許がないのに女性客3人の腕や背中に入れ墨を施したとして略式起訴されたが、罰金30万円の略式命令を不服として正式裁判を求めた。
■危険性に警鐘も
医師法をめぐっては、厚生労働省が平成13年、「針で皮膚の表面に色素を入れる行為には医師免許が必要」とする通知を出した。当時、皮膚に針を刺して眉などを描く「アートメーク」で健康被害が相次いだことを踏まえての通知だったが、無資格のアートメークのほかタトゥーの摘発も同法によって相次いだ。
検察側は今回の公判で、美容整形手術やアートメークは同法の規制対象なのに、タトゥーが対象外になれば不合理だと主張してきた。これについて2審は「患者の身体の改善、矯正を目的とした広義の医療」などとしてタトゥーと線引きしたが、最高裁の決定では言及されなかった。
ただ今回の決定もタトゥー施術の安全性を担保したものではない。草野耕一裁判官は補足意見で「タトゥー施術は身体を傷付ける行為であり、施術内容や方法によっては傷害罪が成立し得る。決定の意義に関して誤解が生じることをおもんばかり、この点を付言する」とクギを刺した。
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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* タトゥー施術 大阪地裁 有罪判決 2017/9/27 増田太輝被告「医師免許を求められれば仕事できず」
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* タトゥーは犯罪なのか? 彫り師 増田太輝さんが法廷で挑んだ戦い 第一審の結果は如何に 2017年9月27日に判決が下る
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* 事実上の「失職宣告」彫師有罪の大阪地裁判決2017.9.27 / 【イタリア便り】入れ墨は市民のおしゃれ? / 日本でも増えてきた「タトゥー」 健康への影響は?