日産ゴーン元会長、逮捕後初のインタビュー 「不正調査は策略であり、これは反逆だ」日本経済新聞 2019/1/30

2019-01-30 | 社会

統治不全生んだ「すれ違い」 ゴーン元会長と日産 
本社コメンテーター・中山淳史
ゴーン元会長、独占インタビュー 2019/1/30 18:00 (2019/1/30 18:36更新)日本経済新聞
 20分間の短い取材だった。黒のフリース、グレーのスエットパンツ姿で東京拘置所(東京・小菅)10階の面会室に現れたカルロス・ゴーン日産自動車元会長は思った以上に元気そうで、精悍(せいかん)になった印象さえ感じさせた。
 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告に逮捕後初のインタビューを行った日本経済新聞社の田中暁人記者が、BSテレビ東京「日経プラス10」で解説した。
 「時間がない。始めよう」。アクリル板ごしに取材が始まると、元会長はまくしたてるように話し始め、発言をメモする係官も手が追いつかない様子だった。15分の規定時間が近づくと「少し延長できないか」と係官に自ら直談判した。5分の延長が認められた。
 日本経済新聞社は昨年のゴーン元会長逮捕以降、正規のルートを通じて同氏への単独取材を要請してきた。承諾の知らせが来たのは今週だった。規定時間内に面会を終えられるよう、あらかじめ英文の質問書を送り、取材当日もすべて英語でやり取りした。
 パリでルノーの取締役会に出席して自らの立場を説明し、その後に記者会見をする。そんな計画もあったようだ。だが、勾留の長期化で実現のめどは立たず、先週にはルノーの最高経営責任者(CEO)の職も解かれた。復権や名誉の回復には暗雲が漂っていた。
 有罪か、無罪か。すべては裁判で判断されるべきことだ。ただ、日産子会社を通じてブラジルやレバノンに自宅用物件を購入したとの疑惑について質問が及んだ時だった。元会長は「私は弁護士ではない。問題があるのならなぜ(その時に日産の関係者が『会長、それはだめです』と)私に教えてくれなかったのか」と眉をつり上げながら反論していた。
 「みなが知っていた」とすれば、日産の関係者にも不作為があった可能性がある。元会長による人事面での報復を恐れた。「会長だから仕方ない」との忖度(そんたく)が働いた――。理由は様々考えられるが、報酬などをめぐる問題がルノーでは起きず、日産だけで起きたことを考え合わせれば、日産のガバナンスが取締役会から執行の様々な層に至るまで、機能不全に陥っていたことは確かだろう。
自分が日産を救ったリーダーだと信じていた元会長。いつしか独裁者だと感じるようになったそれ以外の人々。問題の底流には両者のすれ違いもあったとは言えないか。
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日産
ゴーン元会長、逮捕後初のインタビュー
【イブニングスクープ】
ゴーン元会長、独占インタビュー自動車・機械社会 2019/1/30 17:00
 会社法違反の特別背任罪などで起訴された日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(64)が30日、勾留先の東京拘置所(東京・小菅)で日本経済新聞のインタビューに応じた。中東の知人側への巨額送金について「必要な幹部が(決裁に)サインした」とするなど改めて違法性を否定し、検察側との主張の食い違いが鮮明になった。

  
    日産自動車のカルロス・ゴーン元会長 イラスト デザイン編集部 萩原 始。
    東京拘置所で取材に応じるゴーン元会長=面会した記者の説明を基に作製しました

 日産と仏ルノーの経営統合案について、2018年9月に日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)と協議し、持ち株会社方式を検討していたことも明かした。
 18年11月19日の最初の逮捕以来、ゴーン元会長が報道機関の面会に応じるのは初めて。約20分間、英語でのやり取りに答えた。
 ゴーン元会長は面会で、自身が使途を決められる「CEO予備費」を使ってサウジアラビアの知人側に約12億8千万円を支払わせたとされる特別背任罪の起訴内容について「他地域でも同じように予備費からインセンティブを支払っているが、問題視されていない」と主張。「予備費はブラックボックスではなく、必要な幹部がサインをしている」とし、正当な支出だったと強調した。
 これに対し、日産の中東担当幹部は東京地検特捜部の聴取に「必要のない支出だった」などと証言しているもよう。特捜部はこの支出について、知人がゴーン元会長の信用保証に協力した謝礼などの趣旨だったと判断している。
 ゴーン元会長は面会で、2度の保釈請求が認められず勾留が70日を超えていることに「なぜ勾留が続いているのか理解できない」「証拠は日産がすべて持っている。どうやって証拠隠滅できるのか」と不満を表明。「私は逃げない。しっかりと(法廷で)自分を弁護する」と述べた。
 日産とルノーの経営統合案を巡っては、日産の西川社長に「昨年9月に話した」と説明。統合構想は「1つの持ち株会社の傘下で、(それぞれの会社が)事業運営の独立を確保する内容だった」とし、ルノー、日産、三菱自動車を持ち株会社方式で経営統合させる計画が社内で進行していたことを明らかにした。
 自身の逮捕につながった日産の社内調査は「策略で反逆だ」と主張。自身が進めていたルノーとの経営統合に反対する日産内の一部グループと関連していたことは「疑いようのないことだ」と話した。
 ルノー、日産、三菱自のアライアンス(企業連合)の将来については「推測を述べることはできない」と言及を控えた。
 健康状態を尋ねると「大丈夫だ」とし、現在の自らの状況について「人生山あり谷ありだ」と述べた。終始、疲労や動揺は見せなかった。
 ゴーン元会長は18年11月に特捜部に逮捕され、これまでに会社法違反(特別背任)と金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴された。
 逮捕前、ルノー大株主の仏政府はゴーン元会長に対し、ルノーと日産の関係を「後戻りできない関係」にするよう求めていた。仏政府は逮捕後にも日本政府関係者に日産とルノーを経営統合させたい意向を伝えているが、西川社長は「今は(統合などの)形態を議論する時ではない」としている。
 日産はゴーン元会長の逮捕を受けて18年11月に会長職と代表権を解いた。4月中旬の開催を検討する臨時株主総会で取締役からも解任する見通しだ。ルノーでは1月24日付でゴーン元会長が会長兼CEOを退任し、仏ミシュラン出身のジャンドミニク・スナール氏が後任会長に就任した。
 三菱自を含む3社連合は31日、オランダ・アムステルダムでトップ会談を開く。ルノーのスナール新会長と日産の西川社長が初めて対談するとみられる。

 ◎上記事は[日本経済新聞]からの転載・引用です
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「これは反逆だ」 ゴーン元会長会見全文  
 ゴーン元会長、独占インタビュー自動車・機械 2019/1/30 17:03
仏ルノー・日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告の30日のインタビューの発言は以下の通り。
――日産自動車によるゴーン被告の不正調査と、仏ルノーとの経営統合に反対していた一部関係者が関連していたと思いますか。
「疑いようがない。(不正調査は)策略であり、これは反逆だ」
――「独裁者」であり「会社を私物化していた」との批判にどう反論しますか。
「私は日産を再生させた。日産を愛しているし、すばらしいことをしてきた。(私がやってきたことは)独裁ではなく、強いリーダーシップだ。一部の関係者が現実をゆがめるために、強いリーダーシップを独裁だと説明している。その目的は私を排除するためだ」
――2018年春に日産とルノーの資本関係見直しを表明していた。この計画はどこまで進んでいましたか。
「経営統合のプランはあった。18年9月に(日産の)西川(広人社長兼最高経営責任者=CEO)に話をした。(三菱自動車の)益子(修CEO)さんにも会話に加わってほしかったが、西川が一対一での会話を求めてきた」
「(統合構想は)1つの持ち株会社の傘下で(ルノー、日産、三菱自の)それぞれの自主性を確保する計画だった。私が過去17年間取り組んできた方針に沿った内容だ。あくまでも各社の自主性を尊重する内容だった」
――日産とルノーの経営から退くことになった。日仏連合の将来をどう見ていますか。
「アライアンス(企業連合)の将来については推測できない」
――日産の海外子会社を通じて不動産を不正に購入したとの疑惑があります。
「私には安全に仕事をして(業務上)人を招く場所が必要だった。一連の手続きは(CEOオフィスの)ハリ・ナダ(専務執行役員)がすべて担当した。私は弁護士ではなく、すべての関係者が把握していた。(問題があるのなら)なぜ私に言ってくれなかったのか分からない」
――中東の知人への巨額送金で罪に問われている。なぜ資金源に「CEO予備費(リザーブ)」を使ったのですか。
「(送金は)すべて各国の責任者である幹部がサインしている。他の地域でも同じように予備費からインセンティブが支払われているのに問題視されていない。『CEOリザーブ』はブラックボックスではなく、必要な幹部がサインをしている」
――日本の刑事司法についてどう思いますか。
「なぜ勾留が続いているのか理解できない。私は逃げもしないし、しっかりと自分を弁護する。証拠は日産がすべて持っており、社員との接触も日産が禁じている状態で、どうやって証拠を隠滅できるのか」
――今の状況は。
「人生山あり谷ありだ」
――健康状態はどうですか。
「大丈夫だ」

 ◎上記事は[日本経済新聞]からの転載・引用です
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カルロス・ゴーン氏の勾留生活 体重は10キロ減、たった一人で65歳の誕生日
「週刊文春」編集部 2019/02/20 source : 週刊文春 2019年2月21日号
 日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(64)の新たな“私物化問題”が2月上旬、立て続けに報じられた。
「16年にベルサイユ宮殿で開いたキャロル夫人との結婚式では、宮殿の使用料約620万円を仏ルノーの資産から不正に支出していたと指摘されました。同宮殿で14年3月に行われた日産・ルノー提携15周年パーティは、約7500万円に及ぶ費用を両社の統括会社が負担していましたが、実際はゴーン氏の60歳の誕生日会。レバノンの有力者数十人や再婚前のキャロルさんなどが招かれ、星付きシェフによる豪華な料理が振る舞われていた。ともにルノーの社内調査で明らかになりました」(社会部デスク)
 ここに来て、本格的に“ゴーン追放”に舵を切ったルノー。ゴーン氏側近が明かす。
「ゴーン氏はいずれも『適切な手続きを経ており、問題ない』というスタンスを取っています。しかし、自身を裏切るようなルノーの動きには苛立ちを見せている。声を荒げることもありました。これまではゴーン氏の意を受けて水面下で動いていたルノーのボロレCEOも、日産の西川廣人社長と急接近しています」
*体重は10キロ減……ゴーン氏の勾留生活はいつまで続く?
 そしてゴーン氏の苛立ちに拍車をかけるのが、終わりの見えない勾留生活だ。
「1月末、ゴーン氏は日経新聞、仏AFP、仏レゼコーのインタビューに相次いで応じました。面会を申し込む報道機関に取材趣意と質問項目を書面で事前に通知させ、自ら目を通していた。フランスの2社は大使館経由でスンナリと決まったようです。自身の主張が存分に反映された日経の記事には『グッドだ』と満足していた。どのインタビューでも、保釈申請が繰り返し却下されたことを強い口調で批判し、世論にアピールしていました。食事が口に合わず、体重は往時より10キロ前後落ちたままです」(同前)
 一方の特捜部は日産の子会社「中東日産」からオマーンの販売代理店に支出させた約39億円を、私的流用した疑惑などを追い続けている。
「ゴーン氏は『そろそろ代理店にお歳暮をあげるためのシナリオを用意して』と日産の役員に指示していたといいます」(前出・デスク)
 3月9日に迎える65歳の誕生日。ベルサイユ宮殿とは程遠い小菅の単独房で1人過ごすことになる。

 ◎上記事は[文春オンライン]からの転載・引用です
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