光市事件 死刑判決で弁護団記者会見2008.4.22 真実を明らかにすることで被告の本当の反省と贖罪が…

2008-04-23 | 光市母子殺害事件

光市母子殺害事件【死刑判決で弁護団記者会見】
産経ニュース2008.4.22 18:07~

        

   死刑判決後の記者会見で、厳しい表情を見せる安田好弘主任弁護人(左端)ら元少年の弁護団 22日午後2時49分、広島市中区の広島弁護士会館
 山口県光市の母子殺害事件で、男性被告(27)=事件当時(18)=に死刑判決が出たこと受け、被告側の弁護団は22日、広島市内で記者会見し、「極めて不当な判決」と述べた。
 会見の詳報は以下の通り。
 《弁護団は閉廷後に判決内容を吟味するなどしていたため、記者会見は予定よりやや遅い午後2時半スタートとなった。弁護団21人の弁護士のうち13人が出席。出だしから判決に対する批判を展開した》

本田兆司弁護士「それでは記者会見をしたいと思います。本日この不当な判決が出たので即日、21名の弁護士名で最高裁判所に上告の申し立てをした。判決の問題点や感想などは、出席している弁護士からいろいろ聞いてもらいたい」
 《本田弁護士の言葉に続くように、弁護団のメンバーが判決に対するそれぞれの見解を表明した》
安田好弘弁護士「最高裁の判決に忠実に従った極めて不当な判決だ。証拠の評価方法は基本的に間違っている。弁護団では、自白ではなく客観的事実からその信用性を見直して吟味すべきだと主張していた」
 《安田弁護士は殺害方法の鑑定結果など、時折身ぶり手ぶりを交えながら、判決の事実認定について批判を加えた》
安田弁護士「加害者が右手で逆手で押さえたものとしか認定できないにもかかわらず、裁判所は逆手であることを全面的に否定した。こういうふうな認定はあちこちにあった。被告人の新供述は死刑をまぬがれるためにやった虚偽の供述と断定しているが、事実と反している。むしろ彼はひとつひとつ事実について思いだして、記憶に忠実に話してきたんです。死刑を免れるというものではなく、有利不利を問わずすべてを話すという気持ちから話しているのに、裁判所は被告人の心を完全に見誤っている」
村上満宏弁護士「18歳1カ月という未熟な未成年の犯行ということを真正面からとらえていない判決だ」
新谷桂弁護士「ほとんど何も認めてもらえなかった。今日の判決はわれわれの言っていることを理解していない。判決に書いているのはまったくの詭弁(きべん)だろう」
岩井信弁護士「なぜ18歳1カ月の青年がこのような犯行を犯したのかという部分に答えていない判決といわざるをえない」
 《判決結果に感情が高ぶり、声を詰まらせる弁護士もいた》
井上明彦弁護士「判決では新しい供述を信用できないとされた。その理由は、1審でも控訴審でも争っておらず、今いきなり出てくるのは信用できないということだ。しかし、この不合理な判決を下す裁判所が存在する限り、被告人は怖くて争うことができない。少し争っただけで反省の気持ちがないということになり、死刑になってしまう。そんなリスクがあるのに、争っていないことについてあそこまで断じられてしまうなんて。私は非常に憤りを感じます」
岡田基志弁護士「被告の声が裁判所に届かなかったというか、(裁判所が)受け付けなかった。危惧するのはそういうものを受け付けない社会的な大きな流れが背景にあるのかなと感じ
た」
北潟谷仁弁護士「法医学の証拠の認定など今回の判決には問題があるが、決して無駄ではなかった。高裁が証拠をよく理解していないということが分かった」
大河内秀明弁護士「失望させられる判決」
足立修一弁護士「(判決が信用性を認めた)旧供述は重大な少年事件でありながら、弁護人の面会がほとんどない中で作り上げられた。司法に絶望しかけているけれども、事実を明らかにする中でこの判決を打ち破っていきたい」
小林修弁護士「少年に何が起きたかを知るためには、少年の供述だけに寄りかからずに、証拠を見て真実を見るのが裁判所の役割だ」
山崎吉男弁護士「最低の判決。最高裁の意向がこんなに影響があるのか」
新川登茂宣弁護士「高裁は新供述は信用できないと断定し、なぜか死刑回避の目的だと断言した。裁判所は本当のことを話したいという被告の姿勢を逆手に取っている」
 《閉廷後、4人の弁護士が被告と接見した。山崎弁護士が簡潔に、そのときの様子を語った》
山崎弁護士「被告人はいたって冷静だった。マスコミに言いたいことがあるかと聞けば、『いままで記憶があいまいな部分もあり、間違っているところもあるかもしれないが自分にとって真実を今まで述べきた』と語った。それだけです」
 《一通り弁護団の発言が終わり、弁護団長の本田弁護士が記者からの質問を促す》
--上告の理由は
安田弁護士「著しく正義に反する事実誤認および量刑不当。また、従来の判例の適用を間違っている。永山判決を逸脱し、最高裁が手続きをふまえずに判例を変更し、高裁がそのままのっとった」
--「上告審段階で安田弁護士と接見して新たな供述が出たことに対して高裁は疑問を呈しているが、なぜ変わったのかもう一度教えてほしい」
安田弁護士「裁判所は死刑を免れるためにうその供述をしたと認定しているが、前提を間違っている。最初に被告が話したのは2年前の教戒師が初めて。弁護側は教戒師に証言を求める手続きを取ったが、裁判所が採用しなかった。最高裁の呪縛(じゅばく)が極めて厳しものだったのだろう。一体何を聴き、何を見てきたのか憤りを感じる」
--今回の死刑判決は厳罰化の流れに影響すると思うか
安田弁護士「彼の事件は厳罰化のために使われたといってもいい。最高裁は、3年半寝かした末、裁判長がやめる間際になって判決を出して、やむを得ないときだけ死刑は許されるという従来の判決をひっくり返した。(今回の判決で)凶悪な事件は原則として死刑なんだ、死刑を回避するためにはそれなりの合理性と正当性がなければならないと、立証責任を転換してしまった。『無罪推定の原則』とか『疑わしきは被告人の利益』といった哲学にまったく反している」
 《安田弁護士は来年5月に始まる裁判員制度を見据え、今回の判決に懸念を表明した》
安田弁護士「今後厳罰化はますます加速していく。実に危険な状態になってきたなと思いますし、来年からの裁判員制度でも大きな影を落とすだろう」
 《この事件が注目される一端ともなったのが被告の新供述。この“法廷戦略”の是非を問われると、安田弁護士は厳しい口調に》
--1審と控訴審で無期懲役になっていたことを考えると、被告の利益を考えてあえて新供述を出さずに、今までの供述を変えない法廷戦略もあったのでは
安田弁護士「それは弁護士の職責としてあり得ない。真実を明らかにすることで初めて被告の本当の反省と贖罪が生み出されると思う。そうすることでようやくこの事件の真相が明らかになる。なぜこの事件が起こったのか。どうすればこういった不幸なことを避けることができるのか。そしてどうすれば被害者の許しを請うことができるのか。戦術的に物事をとめるとか不当に終わらせることは決してやってはいけないことだ
--判決を受けて少年に対してどう日々を送ってほしいか
安田弁護士「今日の判決にかかわらず、私たちは彼のやろうとしていることを思い切り支えてやろうと思う。彼の目標や立場がしっかりしている以上は、今日の判決に影響されて自暴自棄になることはないと思う」
--昨年10月まで弁護人だった今枝仁弁護士とたもとを分かったのは、情状面を柱に主張する今枝弁護士と、あくまで客観的な事実認定にこだわる弁護団側の対立によるものか
安田弁護士「事実と違う。被告の信頼を失って彼は解任された。明らかに客観的事実と違う」
 《本田弁護士が「この辺でよろしいですか」と会見終了を促すが、続けて記者からは質問が出された》
--今回の弁護活動を通じてこれまで誤りがなかったと思うか
安田弁護士「私たちは悩みながら弁護活動を行ってきた。全面的に正しいとは思わないが、真剣に取り組み、正しいと自信を持ってやってきた。今回の判決で私たちの弁護(活動)が基本的に間違っていたと思っていない」
--(公平性を欠くと表明した)BPO(放送・倫理番組向上機構)の勧告についてはどう考えるか
岩井弁護士「弁護団は、BPOの勧告に基づいてメディアに対し、公正公平で客観的な報道をお願いした。今回の判決も旧供述と新供述の対立という枠の中だけで議論されたことは痛恨の極み。BPOの指摘についてメディアも考えてほしい」
--接見したとき、被告から遺族に対して何か謝罪の言葉はなかったのか
井上弁護士「ご遺族の方に関しては、日頃から反省と贖罪の言葉を言っており、今日もそのようなことを言っていた。今日、特に変わったことは言っていない」
 《午後3時半ごろ、再び本田弁護士が「ここら辺で終わりにします」と会見終了を告げる。記者から接見したときの被告の様子について質問が出るが、安田弁護士が「お話しできることは以上です」とだけ述べ、弁護団は会見場を去った》 

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です *強調(太字・着色)は来栖


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