「アホ判決」91歳の認知症夫が電車にはねられ、85歳の妻に賠償命令 実名と素顔を公開 この裁判官はおかしい——原発訴訟でもトンデモ判決の「前科」があった!
現代ビジネス 2014年05月28日(水) 週刊現代 賢者の知恵
「話せばわかる」裁判官は、もはや相当に少数派であるらしい。誰が見てもおかしな冤罪事件、常識はずれの判決を生み出すエリートたち。お勉強はできても、世間というものがわかっていないのだ。
*どうやって防げというのか
〈配偶者の一方が徘徊等により自傷又は他害のおそれを来すようになったりした場合には、他方配偶者は、それが自らの生活の一部であるかのように、見守りや介護等を行う身上監護の義務があるというべきである〉
認知症患者Aさん(91歳・当時)がJR東海の線路に入り込み、快速列車にはねられて2万7000人の足に影響を与えた責任は、介護をしていた妻のB子さん(85歳・同)にある—。
4月24日、名古屋高裁が下した判決は、あまりに非情かつ非常識なものだった。
事故が起きたのは、'07年12月7日の夕方。愛知県大府市に住むAさんは'00年から認知症の症状が出始め、このころには要介護4と認定されるほど症状が進んでいた。自分の名前も年齢もわからず、自宅がどこなのかも認識できない。昼夜を問わず「生まれ育った場所に帰りたい」と家を出る。
それでも家族はAさんを必死に介護した。長男は月に数度、週末を利用して横浜から大府にやってきた。長男の嫁は単身、大府に転居。B子さんと一緒に介護にあたった。自宅周辺にはセンサーを設置して、Aさんが外出するとチャイムが鳴るようにした。
*それでも悲劇は起こった。
夕刻、長男の嫁が簡易トイレを片付けているほんの一瞬、B子さんがウトウトした隙にAさんは家を出てしまったのである。チャイムの音が大きくてAさんが怯えるため、センサーのスイッチは切られていた—。
交通機関はこうした場合、機械的に遺族に損害賠償請求をするが、「株主の手前、形式的に請求はしますが、本気で損害金を回収しようとは思っていないケースも多い」(JR東海関係者)。
ところが今回、長門栄吉裁判長は360万円の支払いを妻のB子さんに求めたのだった。
「家族に責任が一切ないとは誰も思っていません。しかし、徘徊となるとこれは防ぎようがない。24時間、常に誰かが見張るなど、不可能だからです。現在、国内に認知症患者は約500万人います。85歳以上の40%が罹患しますが、有効な予防法はありません。これは国が背負うべき問題なのです。実際、特別養護老人ホームの待機者は52万人もいるのです。ところが、裁判官は、国の責任には触れようともしない。われわれは、この判決が前例となることを危惧しています」
この「認知症の人と家族の会」高見国生代表の主張を「もっとも」だと言うのは木谷明弁護士。東電OL殺人事件で、無罪判決を受けたゴビンダ氏をなおも勾留しようとした検察の要請を退けた元東京高裁判事である。
「残念ながら、裁判官は国や大企業など、権力に弱いのです。JR東海のような巨大組織が原告の場合、たとえ賠償請求を却下しても上級審で覆されることが多い。そうなると自らの経歴に傷がつくから迎合したのでしょう。それにしても、裁判官が徘徊老人を介護する家族の苦労をまったく理解していないのは恐ろしい」
昨年8月の名古屋地裁の一審判決はもっと酷かった。
上田哲裁判長は〈民間のホームヘルパーを依頼したりするなど(在宅介護をするうえで)支障がないような対策を具体的にとることも考えられた〉などとして、別居の長男にも720万円の賠償命令を下したのだ。老老介護状態だったB子さんにも容赦しない。
〈まどろんで(Aさんから)目を離していたのであるから、注意義務を怠った過失がある〉と、やはり720万円の支払いを命じている。
国民の多くが「そんなバカな」と仰天する判決を下す裁判官たち。彼らはいったいどのような人物なのか。
*いつでも権力に味方する
写真は『司法大観平成八年』(法曹会)より
一審の上田裁判長はそのキャリアのほとんどを東京地裁で過ごしている。
「東京地裁の判事時代には、業務上過失致死罪で、〝血友病の権威〟安部英医師が逮捕・起訴された薬害エイズ事件を担当。安部医師に無罪判決を下しています。その直後、出世コースである最高裁の調査官に栄転。千葉地・家裁判事などを経て、'12年から名古屋地裁の部総括判事に就任しました。幹部候補生であることは間違いない」(全国紙司法担当記者)
裁判官の世界ではエリートだが、常識はない。25年前から認知症患者のケアをしている精神科医の和田秀樹氏が憤る。
「地裁はAさんの4人の子供のうち、最も介護に腐心した長男の責任だけを認定しました。これでは、怖くて誰も親の面倒をみられなくなってしまう。正直者がバカを見ることになるからです。二審は妻の責任だけを認めましたが、老老介護の立場になったら、認知症になった連れ合いを捨てるか、心中してしまえと言わんばかり。家族の不安をひどく煽っています」
二審の判決を下した長門裁判長は横浜地裁で判事補としてキャリアをスタートさせた。以後、松江、盛岡、大阪、京都と20年以上にわたって地方の裁判所を転々としたが'00年4月、名古屋高裁の判事に抜擢されると、名古屋地裁の部総括判事、名古屋高裁金沢支部の部総括判事と出世を果たした。
実はこの長門氏、金沢支部の部総括判事時代、重要な判決に関わっている。'06年3月、金沢地裁の井戸謙一裁判長が原発推進という国の意思に逆らって、志賀原発2号機(北陸電力)の運転差し止めを命じた。日本各地で同様の訴訟が行われていたが、原告側が勝訴したのは、井戸氏の判決を含めてわずかに2件。控訴審の判決次第では、国の原発行政の行方も左右しかねない裁判として注目された。
その控訴審で名古屋高裁金沢支部は井戸裁判長の「真っ当な判決」をひっくり返し、原告の住民たちが敗訴した。この二審の審理に、長門氏は裁判長として加わっていたのだ。
現在は滋賀県で弁護士をつとめる井戸氏が言う。
「かなり思い切った判決でしたし、一審の後に国の耐震設計審査指針が新しくなってしまったので、高裁で判決が維持されるのは難しいとは思っていました。それにしてもJR東海の控訴審判決を下したのが、あの長門氏だったとは……。事件の被告と原告、どちらの言い分が正当なのかを判断するのが裁判官本来の仕事です。しかし、なかには裁判官の判断が個別事件を離れて一般的な影響を持つことがある。裁判所が下した判断が社会を変えていく力になり得るわけです。裁判官はそういうことにも目配りをしなければならない。今回の判決が社会的影響まで考慮して下されていたかといえば、疑問です」
長門氏の人となりについては、こう評した。
「そんなに特徴のある裁判官ではなかった。若いころは苦労したというか、そんなに処遇が良くなかった。島根県の松江市に6年くらい、いたはずです。それが異例の人事で名古屋高裁管内に来てから、ポンポンと出世するようになった」
実は長門氏は、井戸氏が下したもう一つの「思い切った判決」も潰している。
住民基本台帳ネットワークの運用について全国で初めて「プライバシーの侵害にあたり違憲」とした金沢地裁・井戸裁判長の判決を二審で取り消していたのだ。
その後、航空自衛隊小松基地の騒音問題で、自衛隊機と米軍機の飛行差し止めを求めた住民側の請求を退けると、長門氏は岡山家裁所長、福井地・家裁所長を経て、名古屋高裁部総括判事と出世コースに乗った。
*考えないのが出世の近道
裁判官がおかしい。
最難関の国家試験のひとつである司法試験を突破したエリートが、ちょっと考えれば誰もが違和感を抱くような、現実離れした判決を下している。
事件から48年たって、ようやく再審開始が決定した元死刑囚・袴田巌さんのケースもそうだろう。25年にわたって袴田事件を追っているジャーナリスト・山本徹美氏が解説する。
「冒頭陳述で事実と認定された犯行時の着衣が初公判から10ヵ月後に突如、変更されました。調書の信憑性は大きく揺らぎ、当然、不採用となると思われましたが、なぜか静岡地裁は変更を受け入れたのです」
その後、都合よく見つかった「犯行時の着衣」などの証拠が、今年3月に静岡地裁で「捜査機関が捏造した疑いがある」と切り捨てられたのは周知のとおりだ。
東京地裁裁判長、最高裁判所調査官などを務めたものの、裁判官の劣化、腐敗ぶりに辟易して退官、『絶望の裁判所』を著した元エリート裁判官・瀬木比呂志氏は「官僚裁判官システム」が諸悪の根源だと指摘する。
「弁護士を長期間やった人が裁判官に選ばれる英米に対して、日本は司法試験を突破した学生の中でも成績優秀者を純粋培養する官僚システム。特別な見識も教養もなく、視野の狭い裁判官が増えるのは当然です」
最高裁判所を頂点とするヒエラルキーの中で生きる裁判官たち。外部との接触は制限される。政党に入ることも、「日本野鳥の会」といった趣味の団体に所属することすら禁じられ、自宅と裁判所を専用バスで往復する毎日。3~5年で転勤となるから地域との関係も希薄なままだ。しぜん、裁判官同士の共通の話題は「あいつは支部に飛ばされた」といった人事の話になる。そして、人事権を握る最高裁判所の影響力が増していく。瀬木氏が続ける。
「権力側を批判するような立派な判決を出すと、一瞬は脚光を浴びます。ところが、その裁判官が何年かすると、左遷人事を受ける。そんなケースを私は山ほど見てきました。良識派と言われる裁判官は、どれだけ優秀でも東京高裁の裁判長止まりでしょう。出世しようと思ったら、最高裁の意向をつねに気にする、ヒラメ的な裁判官になるしかない。自分では何も考えず、ただ追随するしかない。だから、判で押したような、おかしな判決が下されるのです」
『裁判官幹部人事の研究』などの著作がある明治大学政治経済学部の西川伸一教授の見通しも暗い。
「刑事事件の場合、有罪率は99・9%。裁判官には『検事の調書は間違いない』という先入観がある。法曹ムラの仲間である検察を疑おうとしない。くわえて、彼らは月300件もの裁判を抱えています。どんどんこなしていかないと最高裁に『処理能力が低い』と報告され、次にいい任地に行けなくなってしまう—そういう恐怖心を持っている。彼らにとって裁判は急いでこなすべき事務処理であり、被告や原告の名前は記号に過ぎないのです」*責任は一切問われない
裁判官の意識の低さ、常識のなさなんて、自分には関係ない。そう思っていたら大間違いだ。一番わかりやすい例が痴漢冤罪だろう。
ジャーナリストの日高薫氏が言う。
「病気で指が曲がらないと医師の診断が下っている被告を『激痛に耐えれば痴漢は可能』と有罪にするなど、アホ判決が多すぎるのです。最近では昨年5月、東京地裁立川支部の倉澤千巖裁判官が下した判決が酷かった。バス車内での痴漢事件だったのですが、車載カメラには左手で吊り革を持ち、右手で携帯のメールを打つ、被告の証言通りの姿が映っていました」
しかし、この男性にも有罪判決が下る。
「倉澤裁判官は、バスが揺れ、被告男性がカメラからフレームアウトした瞬間を指して、『揺れている状況下で、右手で携帯電話を操作しながら左手を吊り革から離し、痴漢行為をすることは容易とは言えないが、不可能とか著しく困難とまでは言えない』と、常識では考えられない判決を書いたのです。数秒でカメラのフレームに戻ってきた被告はしっかりと左手で吊り革を握っていました」(日高氏)
袴田事件など、トンデモ判決を下したり、追認した裁判官たちの多くが出世し、叙勲を受けている。
その一方で、他人の人生をめちゃくちゃにした責任が問われることはない。
「無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会」副代表の門間幸枝さんが述懐する。
「今回、再審開始という判決が出て、私たちは涙を流して喜びました。しかし冷静に考えると、なんでこんな当たり前のことに48年もかかったのか、私たちはそこに目を向けないといけない。活動初期、袴田さん支援の署名を集めようとしても、皆『お上が間違ったことをするわけがない』と相手にしてくれなかった。裁判官ほど、国家権力に庇護されている存在はないのです」
認知症の夫を抱えた85歳の妻の苦労はいかばかりか。普通の想像力があれば、今回のような判決はありえない。その「普通の感覚」を持ち合わせていないのが、裁判官というエリートたちなのである。
「週刊現代」2014年5月24日号より
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◇ 認知症男性の列車事故 妻(92歳)に360万円損害賠償命令 名古屋高裁 長門栄吉裁判長 2014-04-24
認知症で電車事故 妻に賠償命令
NHK NEWS WEB 4月24日 19時29分
7年前、愛知県内で認知症の91歳の男性が電車にはねられて死亡した事故を巡り、JR側が損害が発生したとして遺族に賠償を求めた裁判で、2審の名古屋高等裁判所は1審で認定された男性の長男の責任は認めなかったものの、男性の妻に対しては「夫を監督する義務があるのに十分ではなかった」と判断し、およそ360万円の支払いを命じました。
平成19年、愛知県大府市のJR共和駅の構内で近く住む認知症の91歳の男性が電車にはねられて死亡し、JR東海が事故で生じた振り替え輸送の費用など、およそ720万円の賠償を遺族に求めました。
1審は事故は予測できたとして男性の妻と長男の責任を認め、JR側の主張どおり賠償を命じていました。
24日の2審の判決で、名古屋高等裁判所の長門栄吉裁判長は長男については、「20年以上も男性と別居して生活していて、監督義務がなかった」として責任は認めませんでした。
これに対し、当時85歳だった妻については「配偶者として夫を見守って介護する監督義務があったのに、はいかいを防ぐため、出入り口のセンサーを作動させるなどの措置を取っておらず、監督が十分でなかった」と判断して責任を認めました。
その一方でJR側の駅での監視も十分でなかったとして、妻に対し1審で認めた賠償額の半分に当たるおよそ360万円の支払いを命じました。
判決のあと、遺族側の弁護士は報道陣の取材に対し、「遺族は十分に介護に努めていたと考えているので、判決には納得できない。今の社会では、認知症の患者の保護について、家族だけに責任を負わせるのではなく、地域で見守る体制を築くことが必要だと思われるが、判決はその流れに逆行するものだ。今後、最高裁判所に上告するかどうかは遺族と相談して決めたい」と話しました。
また、判決後に記者会見した「認知症の人と家族の会」の高見国生代表理事は「介護を行う家族の実態を考えず民法の規定に押し込めるような考え方は納得がいかない。高齢化が進み、お年寄りどうしの介護が進むなかで、同様のトラブルが起きた場合の救済措置を検討するよう国に求めていきたい」と述べました。
今回の判決について、JR東海の柘植康英社長は記者会見で、「まだ判決内容を見ていないのでコメントは差し控えたいが、いろいろな損害に対しては請求するということを基本として考えている」と述べました。
*専門家は「判決に疑問」
名古屋高等裁判所の判決について、認知症の人とその家族の法律問題に詳しい早稲田大学法学研究科の棚村政行教授は「1審判決と比較して、長男の責任を認めず、JR側の事故防止の義務を考慮して賠償金の金額を半分にした点は評価できる。しかし、高齢の妻が自分1人では介護できない状態にもかかわらず、夫婦としての監督責任を重くみて妻に賠償金の支払いを命じた点には疑問を感じる。認知症の人が増え続けるなか、国や社会の支援が整わないまま家族の責任を重く判断したことは家での介護を断念する風潮を呼びかねない」と話しています。
◎上記事の著作権は[NHK NEWS WEB]に帰属します
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〈来栖の独白 2014/4/24 Thu. 〉
現場を知らぬ司法官僚さんにも困ったもの。教育(学歴)の階段だけをトップクラスで登りつめ、人間の困窮のわからないエリートに、正しい判断がくだせるはずもない。
当時(平成19年)85歳だった妻。認知症の夫の介護は手におえなかったろう。その老いた妻(7年後の今は92歳)に、裁判官は360万円の支払いを命じた。なんという血も涙もない判決であることだろう。こんな裁判所ではだめだ。絶望の裁判所だ。
⇒ 認知症男性の列車事故死でJR東海が上告 約360万円の支払い命令を不服として 2014-05-08
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◇ 「裁判官が日本を滅ぼす」 認知症男性の列車事故 ■大飯原発差し止め命令 ■厚木 海自機飛行差し止め命令 2014-05-23
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◇ 名張毒ぶどう酒事件/「司法官僚」裁判官の内面までゆがめ、その存在理由をあやうくしているシステム 2012-07-01
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