懲役・禁錮を「拘禁刑」に 2022年3月8日、閣議決定された刑法改正案

2022-03-09 | 行刑/司法/検察

 懲役・禁錮を「拘禁刑」に 

     中日新聞2022年3月9日

 刑務作業が義務付けられる懲役と、希望すれば作業ができる禁錮が「拘禁刑」に一本化される見通しとなった。8日に閣議決定された刑法改正案は政府が進める再犯防止の考えが色濃く、拘禁刑の目的は「改善更生」だと明記。「応報」のイメージの強い刑罰の概念が大きく転換する可能性がある。矯正の現場では、社会復帰に重点を置いた作業や指導の試みが既に始まり、体制をどこまで充実させられるのかが問われる。

刑法改正案 閣議決定
 刑務作業が義務付けられる懲役と、希望すれば作業ができる禁錮が「拘禁刑」に一本化される見通しとなった。8日に閣議決定された刑法改正案は政府が進める再犯防止の考えが色濃く、拘禁刑の目的は「改善更生」だと明記。「応報」のイメージの強い刑罰の概念が大きく転換する可能性がある。矯正の現場では、社会復帰に重点を置いた作業や指導の試みが既に始まり、体制をどこまで充実させられるのかが問われる。

社会復帰に重点  「応報」概念を転換 / 個人に合った指導/個人に合った指導

 ■「作業」
 「もう一回やってみましょうね」。作業療法士の女性に声を掛けられるとうなずき、運動用バイクをゆっくりこぎ始める作業着姿の男性。隣には別の高齢男性が床と平行のポールをつかみ、歩行訓練をする。
 介護施設ではない。国内最大規模の府中刑務所(東京都府中市)で見られる光景だ。懲役の受刑者は通常、溶接や木工などの刑務作業が義務付けられるが、二〇二〇年度から「作業」枠でのリハビリが試行されている。作業の義務がなくなれば、こうした理屈付けは必要なくなる。
 法務省幹部は「体の自由が利かない高齢者に作業をさせるよりは、リハビリの方が社会復帰につながる」と法改正の意義を強調する。

 ■理念
 刑務所では福祉的支援だけでなく、社会生活に必要な知識を教えたり薬物依存からの脱却を指導したりする「改善指導」や、小中学校レベルの基礎学力を習得させる「教科指導」も実施されている。
 根拠となっているのは、2001~02年に名古屋刑務所で受刑者が死亡した事件を受けて監獄法を全面的に見直してできた刑事収容施設法だ。今回の刑法改正案に先んじ、処遇の目的は改善更生の意欲喚起にあると明記した。
 現在は刑法に縛られ刑務作業は省略できないが、法改正されれば刑務所の裁量は大きくなり、個人の特性に合った指導に専念できるようになる。
 「懲役の本質は応報だと解釈されていたが、社会復帰を図る方向にシフトしている」。監獄法改正に関わった関係者の一人は刑罰の概念が変化していると指摘。その理念を示す「改善更生」の文言が基本法である刑法に明記されるのは「画期的だ」と語る。

 ■専門性
 懲役・禁錮の一本化と同様の議論は戦後の刑法改正の際にもあった。ただ、禁錮は過失犯のほか、内乱罪や私戦予備罪といった「政治犯」にも多く、殺人や強盗など他の犯罪とは一緒に扱うべきではないとの考えが根強く、区別されたままになった。
 こうした背景から、今回の法改正に懸念の声もある。龍谷大の石塚伸一教授(刑事法)は、受刑者の思想や内面に関わる指導につながる可能性があると危ぶみ「懲役よりも実質的に課される義務が多くなる恐れがある。刑罰の内容を刑事施設での拘禁に限るべきだとする国際的な潮流に反する」と批判する。
 別の法務省幹部は「どうしてそういう指導をするのか、受刑者の納得が得られるようにすることが重要だ」と話す。さまざまな境遇の受刑者に対応するには、職員の専門性を高めることも求められる。「現場には大きな転換になる。再犯防止の実を挙げるため、体制構築を急ぎたい」

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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