日経新聞 社説1 首脳会談が覆い隠した日米同盟の現実(11/14)
「首脳会談に失敗なし」という言葉がある。鳩山由紀夫首相とオバマ大統領との日米首脳会談は典型だった。それは必ずしも「成功」を意味しない。周到な準備が同盟の最前線にある現実を覆い隠した。
首相は10日に大統領と電話で話し合い、東京での首脳会談を「未来志向の日米関係強化に向けた機会としたい」と述べた。「未来志向」が奇異に響いた。
歴史問題で日中、日韓関係がぎくしゃくした時に使われた言葉だったからだ。現状から視線をそらすのに使う外交表現である。10月のゲーツ米国防長官との会談の冷たい空気を考えれば、首相がこの言葉を選んだのは自然だった。
両首脳は13日の会談で、アフガニスタン支援や地球温暖化対策などでの協力を話し合い、温暖化問題と核軍縮で共同文書を発表した。鳩山、オバマ両氏の初の出会いとなった9月のニューヨークでの会談でも、環境や軍縮など総論で合意がしやすい問題を取り上げた。
日米首脳会談は、2回続けて両国関係の中核である安全保障問題に正面から取り組むのを避けた。日米関係は安保問題だけではないし、安保問題は沖縄の普天間基地の移設問題だけではない。が、意見調整を要する最も重要な問題が、今回は普天間問題だった。
日米の外交当局は事前に閣僚級の協議機関を設ける合意をし、それを首脳会談の主要議題からはずした。首脳会談は外交の場である。意見が違う問題があれば、最終決着させるのが本来の機能である。一致できる問題だけを取り上げるのは、外交よりも「社交」に近い。
外交修辞を取り除いて眺めれば、日米同盟の最前線は、問題解決の見通しを立てようとしない鳩山首相に対する不信感を強めていた。今度の首脳会談は、それをぬぐい去る結果になっただろうか。儀礼に近い首脳会談が2回も続けば、両首脳の外交的な言葉とは裏腹に日米同盟には距離感がでてくる。
それは鳩山政権にとって「対米追随」からの脱却かもしれないが、危機に助け合うのが同盟である。重要なのは「同盟の深化」といった美しい言葉よりも、具体的行動である。それなしの同盟は、危機に機能しない、絵に描いたモチになる。
首相は普天間問題を「できるだけ早く解決する」と述べた。具体的行動とは、この言葉の実行である。遅くとも年内に解決できなければ、既に始まっている日米同盟の空洞化は止まらない。
------------------------------------------
「くらべる一面」 編集局から
朝日新聞
オバマ米大統領が13日、来日しました。早速、鳩山首相との首脳会談に臨み、その後、共同会見を行いましたが、ある質問に答えませんでした。原爆投下について「現在も正しかったと考えていますか」。オバマ大統領は「広島と長崎で被爆した日本は核兵器について独特の視点を持っている」と述べるだけでした。一泊二日の駆け足滞在で、オバマ氏は何を語り、何を語らないのか。今日と明日の紙面でたっぷりお伝えします。(圭)
日本経済新聞
首相官邸で13日開いた日米首脳会談で、鳩山首相とオバマ大統領は日米同盟の深化に向け閣僚級の新協議を開始することなどで合意しました。沖縄・米軍普天間基地移設問題での合意が間に合わなかったための苦肉の策とも言えますが、安全保障だけでなく医療、教育など多様な分野での協力を日米同盟に取り込む新協議が始まります。来年は日米安保条約改定50周年。日米同盟を多極化する今の時代に合わせ、1年をかけて再定義する試みとも言えます。言葉が踊っただけ、という結末にならないよう、両首脳の実行力と指導力に期待します。(井)
読売新聞
鳩山政権下で日米関係に亀裂をもたらしている沖縄・普天間基地移設問題。日米首脳会談で迅速に結論を出すことで一致しました。慎重に検討との姿勢を示していた鳩山首相ですが、「できるだけ早く結論を出したい」と明言しました。オバマ大統領は「迅速に」と力を込めました。米国が求めるのは年内決着。結論が先送りされれば、日米の亀裂は一層拡大するでしょう。首脳会談での発言の重みを踏まえ、首相には早期解決を図ってもらいたいものです。(尾)
............................................................................
日経新聞 社説2 やはり「小切手外交」の愚(11/12)
行政刷新会議の事業仕分け人たちに任せたら、どう裁くだろう。
これまでの事業は費用が年間100億円以下だが、国際的な評価も得ている。これに替わって始める事業には年間900億円を注ぐ。使い切れるかわからないから、とにかくばらまかねばならない――。
政府は新たなアフガニスタン支援策として、2009年から約5年間で最大50億ドルを拠出する。反政府武装勢力タリバンの元兵士への職業訓練実施やインフラ整備など民生分野が中心となる。鳩山由紀夫首相がオバマ米大統領に伝える。
岡田克也外相がインド洋での海上自衛隊による給油中断を表明した際、私たちは「やはり『小切手外交』を繰り返すのか」と疑問を投げた。給油中止の事実上の代替措置となる民生支援は、小切手外交そのものである。日本は再び「汗をかくかわりにカネを配る国」になるのか。
日本は02年に20億ドルの支援を約束した。治安が悪いなかを援助関係者が駆け回って調整を進め、8年間に約18億ドルを消化した。これに比べ、5年間50億ドルは、援助関係者によれば「途方もない数字」である。
治安の悪さを考えれば、消化できない可能性もある。その場合には、国連機関や非政府組織(NGO)にカネを渡して使ってもらう「丸投げ援助」になる。アフガニスタン情勢の改善につながるのであれば、意味がないわけではないが、日本の納税者はどう思うだろう。
行政刷新会議が予算圧縮を議論している時である。1年10億ドル(約900億円)は小さな額ではない。決定過程を見ると、事業内容を固めて数字が積み上がったのではなく、初めに数字ありきにみえる。
一方の給油は100億円もかからない。野党時代の民主党は、この活動を「憲法違反」と断じたが、マニフェスト(政権公約)では触れず、活動はいまも続く。鳩山首相らは「単純延長はしない」と含みを残すが、具体論には踏み込まない。
50億ドルの民生支援は、きちんと使われれば意味があるが、それに比べ給油は費用対効果の点ではるかに意味があるだけでなく、欧米諸国からも感謝されている。給油継続に向けた具体的議論を急ぐ必要がある。<rdf:RDF xmlns:rdf="http://www.w3.org/1999/02/22-rdf-syntax-ns#"
xmlns:trackback="http://madskills.com/public/xml/rss/module/trackback/"
xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/">
<rdf:Description
rdf:about="http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/1fc4b323fabd3bd270cff6d157d795c5"
trackback:ping="http://blog.goo.ne.jp/tbinterface/1fc4b323fabd3bd270cff6d157d795c5/c0"
dc:title="日本は再びカネを配る国になるのか 5年間50億ドル(1年=約900億円)、納税者はどう思うだろう"
dc:date="2009-11-12T11:15:28+09:00"
dc:description="アフガニスタン支援策 「小切手外交」の愚"
dc:identifier="http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/1fc4b323fabd3bd270cff6d157d795c5" />
</rdf:RDF>
-->