財務官僚は政治家を恐れない 国税調査権&予算編成権握り官邸には秘書官ネットワーク
高橋洋一 日本の解き方 2018.3.22
財務省の文書改竄(かいざん)をめぐっては、官僚が安倍晋三首相を忖度(そんたく)したというストーリーが多く語られているが、実際に財務官僚は政治家をそこまで恐れているものなのか。
今回の朝日新聞のスクープ記事は快挙だが、マスコミ報道全体について、まだ、安倍首相の関与に話を持っていきたいような印象操作の感がある。過去の本コラムでも、理財局長を務めていた佐川宣寿氏の国会答弁の間違いを指摘しており、「首相の関与という誤った方向に議論しなければ佐川氏のクビは取れたはずだ」と書いている。
それなのに、いまだにほとんどのマスコミは、佐川氏が安倍首相を忖度して書き換えたというストーリーのようだ。佐川氏が官邸を忖度したから国税庁長官のポストを得たという構図を指摘する向きもあるが、まずこの段階で疑問だ。
20年前の大蔵省スキャンダル以降、17人の国税庁長官がいるが、その本省最終ポストをみると、理財局長8人、主税局長6人、その他局長3人となっている。要するに、国税庁長官ポストは、主税局長と理財局長からの上がりポストだ。
事務次官は主計局長出身が多いが、主税局長から出ることもある。そして次官になれなかった主税局長は国税庁長官になる。理財局長からは事務次官になれないが、国税庁長官にはなれるというわけだ。この意味で、佐川氏が国税庁長官に就任したのは、ごく普通の人事である。
もし佐川氏が官邸に忖度して、それが受け入れられたなら、もっと上のポストについていてもおかしくない。逆にいえば、財務省内ではこうした独自の人事システムがあり、政治家も手が出せない「独立性」が保たれているといってもいい。
その理由は、財務省は他省庁にない権限を持っているためだ。伝統的に財務省は、予算編成権と国税調査権に加え、官邸内の人的ネットワークがある。このため政治家は怖くない。むしろ財務省が政治家を政治的に抹殺することもある。
内閣人事局の設置により、官邸を忖度せざるを得なくなったというストーリーもよく聞く。他省庁ではそうかもしれないが、財務省については疑問だ。財務省は首相、官房長官、副長官の全てに秘書官を出している。この官邸ネットワークで、かなりのコントロールが可能だ。内閣人事局発足後も、天下りを含めて財務省の意向に反した人事は行われていない。
旧大蔵官僚当時の筆者も正直、政治家を恐れたことはなかった。税務署長時代にはこんなことがあった。未納者に自動的に納税を促すシステムにより、ある政治家に税務署長名で納税書が発行された。即座に税務署に電話があり、政治家本人が納税しにきた。その政治家と会ったところ、「税金を納めたい」というので驚いた。選挙間近だったので、税金滞納とのニュースを恐れたのだろう。
その後の予算編成でも、数多くの政治家から陳情を受けた。こうしたことが重なると、財務官僚は政治家を恐れなくなる。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
◎上記事は[zakzak]からの転載・引用です
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◇ 佐川宣寿氏 首相や昭恵夫人らの指示は「ございませんでした」 参院予算委での証人喚問 2018/3/27
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