大阪府の「君が代起立条例」が施行 [教育]「大阪維新の会」の〝強行〟に批判と不満

2011-07-22 | 政治

大阪府の「君が代起立条例」が施行 [教育]「大阪維新の会」の〝強行〟に批判と不満
現代ビジネス2011年07月22日(金)毎日フォーラム

 大阪府議会で6月3日、教職員に君が代斉唱時の起立を義務付ける条例が成立し、13日に施行された。橋下徹知事が代表を務める首長政党「大阪維新の会」が提出したもので、府議会で過半数を占める維新は他会派の抵抗を押し切り、わずか2日間の審議で可決させた。「義務化の必要性の論議が十分尽くされていない」との不満が渦巻いている。
 条例は「我が国と郷土を愛する意識の高揚」「服務規定の厳格化」などを目的に掲げて府立と政令市を含む市町村立の小中学校、特別支援学校の教職員を対象としている。「学校行事において行われる国歌の斉唱にあたっては起立により斉唱を行うものとする」と明記。さらに府施設での「日の丸」の常時掲揚も義務付けた。
 きっかけは、橋下知事が5月初め、今春の入学式で起立しなかった教諭に関する新聞記事を読んだことだった。府立高校で38人もいた事実を知った橋下知事は府幹部らにメールで「組織のルールに従えないなら辞めてもらう」と激しい怒りをぶつけた。一方で維新幹部にも問題点を投げかけ、条例案の作成を促した。議員提案という形式はとるものの、事実上は知事の発案によるものだ。
 もともと橋下知事は08年2月の知事就任以降、公務員組織の改革に力を注いできた。だが、「教育の政治的中立」などの観点から直接の権限が及ばない教育委員会の制度に対しいら立ちを募らせ、府教委が持つ教職員の人事権を市町村に移譲するなどの改革にも徐々に手を広げてきた。今秋に自ら知事を辞職し大阪市長選と知事選のダブル選挙に持ち込む戦略を描く橋下知事にとっては、今回の君が代不起立問題は教職員をも「統率」させるという実績作りに向けた格好の「突破口」を見いだしたという側面もある。
「追い風」も吹いた。卒業式の君が代斉唱時の不起立を理由に東京都教委が教諭の定年後の再雇用を拒否したことを巡って行われた訴訟で、最高裁は5月30日、「校長の起立斉唱命令は合憲」とする初判断を下し、橋下知事も「きちんとした判断が出た」と評価した。
 こうした中で維新の動きも加速した。
 幹部らで条例案の原案をまとめると3週間足らずで最終的な条例案を練り上げ議会に提出。6月2日の委員会、3日の本会議の2日間の審議で採決に踏み切った。公明、自民、民主など他会派は一斉に「条例案は拙速に出てきた。反対の意見もしっかり聞くべきだ」と反発したが、維新側は「政治のスピード感の違い。十分丁寧に説明している」と一蹴。
 橋下知事も答弁で全面支援。学校の組織マネジメントの必要性を訴え、起立しない教員を「自由横暴きわまりない」と批判し「組織の命令に従わない教員をたたき直す」と述べた。「日本が軍国主義に走るのを教員が止める必要はない。学力向上をしっかりしてもらえばいい」とまで言い切り突っぱねた。
 だが「橋下維新」の突進ぶりに不満の声も渦巻く。
 教育現場においては99年に国旗・国歌法が成立した後も、起立しない教師の処分は慎重にされてきた歴史がある。府教委は02年に日の丸掲揚と起立斉唱を文書で指示したが、09年度卒業式で初めて職務命令違反による戒告処分を出すまでは厳重注意にとどめていた。思想・良心の自由に関わる問題で慎重に論議されてきたためで、府教委内ではいまだに「条例で従わせるより、粘り強く指導すべき」との意見が根強く、中西正人府教育長は府議会の答弁で「条例は必要ない」と異例の反対姿勢を示した。
 君が代斉唱を巡っては、66年前の戦争の記憶はどんどん遠ざかり、五輪やW杯でも君が代が流れ、若い世代には国歌として自然に受け入れられている。だが、歴史観は人によって大きく異なり、違和感を口にする府民も少なくない。
 4月の統一地方選で大勝した維新の会は「府民の意思」を盾に、起立しない教員の排除に乗り出したが、君が代関連の条例は、選挙公約にはなかった。同会は「条例は(公約に掲げた)公務員改革」と説明するが「府民が真っ先に期待する改革がこの問題とは到底思えない」との声も出ている。
*府教委「無用な反発招く」
 条例制定後、知事と府教育委員の意見交換会では委員からは「条例は100%の民意を受けているわけではない」との批判も出され、中西教育長も「無用な反発を招くことを恐れる」と述べるなど、慎重な対応を求める意見が相次いだ。
 現場では不起立を続ける教員のみならず、起立している教員からも不満は広がる。条例提案をきっかけに君が代を巡る議論が起きていることを授業で取り上げた府立高の男性教諭(54)は「条例成立で、今後学校ではこの問題に触れるべきではないという空気になるのでは」と懸念。小学校の男性教諭(41)も「さまざまな思いを抱えながら、教委と現場の信頼関係で起立してきた面もある。条例で強制すれば、反発の動きもでてくるのでは」と話す。
 特に大阪の場合は在日韓国・朝鮮人などアジアにルーツを持つ教員も多く「君が代」はアレルギーにもなりかねない。橋下知事は「子どもや保護者は別だが、教員はどんな思いがあっても公務員である以上起立すべき」と強調するが、小学校の女性教諭(24)は「教師は起立を強制されているのに、子どもには『いろんな考え方があっていい』と教えることはできない」と反発する。
 そうした中で、橋下知事は9月議会で公務員の処分基準を定める条例案を提出し、不起立を繰り返す教員には免職処分まで盛り込む方針を明言。圧力を強める橋下知事に対して、府教委ではあくまでも「現場のねばり強い指導」で解決する姿勢を鮮明にし抵抗を示している。
 条例制定後、府教委は府立学校の校長を招集。全教職員に起立斉唱を命じる職務命令を行うよう教育長名の通達を行うことを宣言した。これまで校長が不起立の恐れのある教員のみに対して行ってきた起立を命じる職務命令の対象を全教職員に拡大し注意喚起を強め「処分条例は不要」との姿勢を示した格好だ。府教委幹部は「何回違反したから免職とか、処分内容を画一的に決めるのは行き過ぎだ」と反発を強める。雑多で自由な空気が魅力である大阪で起きた「君が代騒動」の第2幕はすでに始まっている。
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