八月納涼歌舞伎  中村七之助 「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」の政岡に挑む 2019/7/29 夕刊

2019-07-29 | 本/演劇…など

【伝統芸能】
 「伽羅先代萩」の政岡を演じる中村七之助(加藤孝撮影)

八月納涼歌舞伎  中村七之助 「伽羅先代萩」の政岡に挑む 
   2019年7月29日 中日新聞夕刊

 なかむら・しちのすけ 1983年5月18日生まれ。18代目中村勘三郎(故人)の次男。兄は中村勘九郎。87年1月、歌舞伎座「門出(かどんで)二人桃太郎」の弟の桃太郎で2代目中村七乃助を名乗り初舞台。立役も演じるが、「助六」の揚巻などの大役を華やかに演じる女形として活躍している。

  東京・歌舞伎座の「八月納涼歌舞伎」第一部で、中村七之助(36)が「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」の乳人(めのと)政岡に初役で挑む。わが子を犠牲にしてまで主君を守る政岡は女形屈指の難役といわれるが、七之助は「やらせていただきたいと思っていた、とても大きな役。形だけではなく、気持ちを込めて務めさせていただきたい」と意欲を見せる。 (山岸利行)

 江戸時代、仙台の伊達家で起こったお家騒動(伊達騒動)から題材を得た作品。政岡は、お家乗っ取りをたくらむ仁木弾正(にっきだんじょう)(松本幸四郎)の一味から幼い若君・鶴千代(中村長三郎)を守ることに神経をとがらせる。
 ある時、やってきた栄御前(中村扇雀)が持参した菓子を鶴千代に勧める。毒入りと思われるその菓子を口にしたのは、政岡の息子千松(せんまつ)(中村勘太郎)。案の定、毒で千松は苦しみだす。毒殺計画の発覚をおそれ、弾正の妹八汐(やしお)(幸四郎の二役)が懐剣で千松を殺害するが、政岡は表情一つ変えず…。
 鶴千代、千松という二人の子と政岡の三人の関係が基本をなす展開。兄勘九郎の長男勘太郎、次男長三郎との共演だが、七之助は叔父として「二人を信じている」と信頼しているよう。その一方で「(舞台でのひもじい姿の)二人を見て『泣いちゃうのでは』と自分が心配です」と不安も漏らす。政岡像については「息子の千松とはいつでも今生の別れを覚悟して生きている女性」と冷静に見詰め、「母として、一人の女性としての政岡に気持ちを込めたい」。
 政岡を演じた大先輩の坂東玉三郎に稽古をつけてもらっているが、「気持ちの面で細かいところまで実際に演じてみせてもらい、教えていただいている」と話す。
 幼い二人のために茶釜を使って茶道の作法に沿ってご飯を炊く「飯炊(ままた)き」の場面もあり、一つの見どころとなっている。「見るとやるとでは大違い。やってみて、あらためていいお芝居だなあと思う。大変な役ですが、体と気持ちが合うように演じていきたい」と気を引き締める。
 一九九〇年に始まった「納涼歌舞伎」は、中村勘三郎、坂東三津五郎(いずれも故人)らが中心となってつくり上げた公演。「どうやったらお客さまが歌舞伎を好きになってくれるかをみんなで考えていた。父(勘三郎)や三津五郎のおじさまたちが楽しそうにやっていたのを肝に銘じ、盛り上げていきたい」
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 「八月納涼歌舞伎」は九~二十七日。三部制で、第一部(午前十一時開演)はほかに、「闇梅(やみのうめ)百物語」(松本幸四郎ら)。第二部(午後三時開演)は「東海道中膝栗毛(ひざくりげ)」(市川猿之助ら)。第三部(同六時半開演)は「新版雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)」(坂東玉三郎ら)。
 チケットホン松竹=(電)0570・000・489

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)

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