震撼:大阪中1遺棄事件/上 繰り返された事件 13年前、少年に同様手口 粘着テープ、車で監禁…
毎日新聞 2015年08月23日 東京朝刊
13年前の3月の夜、大阪府寝屋川市の京阪寝屋川市駅前のロータリーで、アマチュアバンドの路上演奏を聴いていた男子高校生と無職少年の17歳の2人が、頭髪を短く刈り上げた30歳すぎの男に道を尋ねられた。道案内しようとした親切心からか、2人は男の車に乗り込んでしまう。
大阪府警によると、男が少年たちに声をかけたのは2002年3月8日午後10時半ごろ。男は車内で態度を急変させ、2人を一つの手錠で拘束し両手足を粘着テープで縛り上げたとされる。車内で約4時間にわたって監禁し、北西約4キロの公園で解放したが、その際に高校生の顔や胸をライターであぶり、やけどを負わせたという。
3週間後の3月31日の未明には、同市内でこの男が中学2年の男子生徒(14)に同様に道を尋ね、車内で監禁する事件も起きた。手錠と粘着テープで縛り、ナイフを突きつけて現金1500円と携帯電話を奪ったとされる。
これらの事件で男は監禁などの容疑で逮捕された。この男が同府高槻市で起きた女子中学生の死体遺棄事件で逮捕された山田浩二容疑者(45)だった。今回、犠牲になった平田奈津美さん(13)と星野凌斗(りょうと)さん(12)=いずれも寝屋川市立中木田中1年=も、寝屋川市駅付近で山田容疑者に声をかけられ、車で連れ去られたとみられている。
少年らを言葉巧みに車へ乗せる手口、粘着テープによる拘束、車内での監禁−−13年前の事件は今回と重なる。少年らが被害に遭った同じ駅前で事件は繰り返され、惨事に発展した。
山田容疑者は寝屋川市に隣接する同府枚方市出身。両親と妹との4人暮らしだった。同級生らによると、おとなしい性格だったが、次第に派手な服装になり、「不良グループと付き合い始めた」と明かした。
当時の自宅玄関の壁面には、スプレー缶などで描かれた落書きがあった。近所の女性(64)は「赤や緑、青、白色のごちゃごちゃの線で描かれていて、危ない家だと思った」と話す。
高校には進学せず、02年の監禁事件の後に家族とともに引っ越した。
山田容疑者は最近、原発事故による除染作業を請け負う福島県の会社で契約社員として働いていた。宿舎は同県二本松市郊外の民宿。同僚によると、約1カ月前に来た。上司に仕事の指示をされると「うるせえ」などと言い返すこともあった。日給は約1万5000円。休日には自分の軽ワゴン車でパチンコに出かけていたという。
事件直前の今年8月11日には、お盆休みで帰阪。自身のフェイスブックに、「やっぱ、地元最高です!帰って来たなあ〜って感じ!」と投稿。平田さんの遺体が遺棄された約12時間後の14日午前11時40分ごろには、「早ければ今夜にでも大阪出発するので最後の大阪を満喫!!」とのコメントをつけ、通天閣の写真もアップしていた。事件への関与を感じさせる記述はない。
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夏休み中の中学生2人が同時に行方不明になり、2人の遺体が30キロ離れた場所でそれぞれ発見された。社会を震撼(しんかん)させた事件の背景を探った。
震撼:大阪中1遺棄事件/下 殺害状況、動機…謎多く
毎日新聞 2015年08月25日 東京朝刊
死体遺棄容疑で逮捕された山田浩二容疑者(45)は、大阪府警の取り調べに黙秘を続けている。平田奈津美さん(13)=同府寝屋川市立中木田(なかきだ)中1年=と星野凌斗(りょうと)さん(12)=同=の遺体は粘着テープで巻かれ、別々の場所から見つかった。社会を震撼(しんかん)させた今回の事件には多くの謎が残る。
平田さんの遺体は13日夜、同府高槻市の物流会社駐車場で見つかった。従業員の車の下に遺棄されており、付着した血痕などから、捜査幹部は「遺体は車の下に押し込まれた可能性がある」と指摘する。配送トラックが24時間出入りするため、遺体を隠すのに都合のいい「人目につかない場所」とは言えない。
一方、星野さんの遺体は高槻の現場から約30キロ南の同府柏原市の竹林で見つかった。竹林は市道から外れた脇道を約50メートル進んだ先にある。脇道は幅約5メートルの細い生活道で、地元の住民でなければ気付かない。近くに住む男性会社員(43)は「ここを知っていたのかも」と推測する。
高槻の現場では、13日午後10時35分から11時10分にかけ、山田容疑者の軽ワゴン車とみられる不審車が出入りする様子が、近くの防犯カメラに残されていた。軽ワゴン車が出た約30分後、配送から戻った物流会社の従業員が遺体を見つけた。
星野さんの遺体には草がかぶせられていた。竹林の入り口にあるため、住民が見つける可能性もある。ジャーナリストの大谷昭宏氏は「遺体が出てこなければ、2人は今も家出人扱いだったはず。『見つかるまで、ある程度の時間を稼げればいい』という、場当たり的な思いだったのではないか」と話す。
2人の遺体には鼻や口を塞ぐように粘着テープが何重にも巻かれていた。両手首を縛られて車内で監禁されていたとみられる。
平田さんの死亡推定時刻は13日午後7時ごろ。この日の昼過ぎには、星野さんの遺棄現場から約1・5キロしか離れていない柏原市内のコンビニ店の防犯カメラに、山田容疑者が粘着テープを買う姿が映されていた。この時点では平田さんはまだ生きていたとみられ、車で連れ回されていた可能性がある。星野さんは13日ごろに死亡したとみられるが、詳しい死亡推定時刻や死因はわかっていない。
山田容疑者は平田さんの遺体発見後の17日ごろ、福島県二本松市にある勤務先の宿舎に戻り、その後、帰阪したとみられる。21日昼ごろ、山田容疑者を追跡する府警捜査員が、星野さんの遺体が見つかった竹林に入るところを確認し、逮捕に踏み切った。なぜ現場を訪れたのか。桐生正幸・東洋大教授(犯罪心理学)は「事件発覚の不安感を払拭(ふっしょく)したかったのではないか。遺体が現場にあるか、確認しに戻ったのだろう。遺体への執着心もあったかもしれない」と分析する。
防犯カメラの映像や目撃情報が決め手となり、容疑者の逮捕につながった今回の事件。殺害状況や動機面で不明な点が多く、府警は全容解明を急ぐ。
◎上記事は[毎日新聞]からの引用です
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◇ 高槻殺害・遺棄事件 山田浩二容疑者…思春期少年に異様な執着 過去にも監禁事件 服役中に獄中結婚
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