【危機のカルテ】“無保険”の子ども全都道府県で3万人 国保資格証、短期証でカバー 受診抑制防ぐ配慮

2008-11-02 | 社会

“無保険”の子ども3万人 全都道府県で判明
中日新聞2008年10月31日 朝刊
 親など保護者が国民健康保険の保険料(税)を滞納したため保険証を返還させられて“無保険”の状態になった中学生以下の子どもが3万2903人に上り、全都道府県にいることが30日、厚生労働省の初めての全国調査で分かった。
 “無保険”扱いになると医療機関の窓口でいったん全額自己負担を求められ、子どもの受診控えにつながる恐れもある。厚労省は同日付の通知で、世帯主が(1)子どもの受診が必要(2)自己負担は困難-と自治体窓口に申し出た場合は、有効期間を数カ月と限った短期保険証を交付するなど、十分配慮するよう全国の自治体に要請した。
 年代別では0-6歳の乳幼児は5522人、小学生が1万6327人、中学生1万1054人。“無保険”の子どもは、中学生以下の国保加入者全体の0・9%に当たる。
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国保資格証、短期証でカバー 受診抑制防ぐ配慮
中日新聞2008年11月2日 朝刊
 2000年から国民健康保険料の滞納者に保険証の返還を義務付けたことで、無保険の状態になる人が急増、親とともに無保険状態にある子どもが問題になっている。厚生労働省の初の全国調査では、無保険の中学生以下の子どもは全国で3万2903人に。「病気なのに受診抑制につながる」との批判がある無保険。子どもが医療を受けられない深刻なケースも想定されるだけに、自治体によっては、子どもに配慮した対応策を講じるところも少なくない。
 「資格証なんですが…」。今年7月、千葉市のある診療所で、とびひの男児(4つ)を連れた祖母が取り出したのは保険証ではなく「負担金10割」と印刷された資格証(被保険者資格証明書)だった。
 国民健康保険料を滞納すると資格証が交付される。その場合、医療機関で診療を受けると窓口でいったん全額負担。市町村窓口に行けば7割が戻る。保護者の未納により子どもも無保険状態になる。 男児は2年以上無保険で、過去4回の医療費計約1万6000円は、すべて自己負担。「男児の一家は月収約20万円でアパート暮らし。2歳の弟もいて生活は苦しいはず」と病院職員。職員が区役所に同行して、男児は有効期限を限った短期保険証の交付を受けた。

◆資格証交付、愛知は10市町
 中部各県の「無保険状態」とされる中学生以下の子どもは、今回の厚労省の調べで、9月15日現在、三重県1254人、岐阜県568人、福井県366人、愛知県279人、滋賀県72人、長野県30人。長野は全国で石川(23人)に次いで少ない一方、三重は全国で8番目に多く、ばらつきがある。三重県では昨年6月、滞納世帯に占める資格証交付世帯の割合が17・85%と全国最多だったが、各市町村に特別な事情を考慮することや短期証の交付を指導した。今年5月時点で327人と県内で最多だった鈴鹿市では「聞き取りをし、子どもに不安がないよう考えたい」とする。
 愛知県では、県社会保障推進協議会の調べだと、資格証を発行している自治体は10市町と限定的だ。同協議会の沢田和男事務局次長は「保険証の取り上げは弱者を締め出すようなもので、未納の解消にはつながらない。得策ではないと理解している自治体が多いようだ」と話す。
 淑徳大の結城康博准教授(社会保障論)は「(滞納する)大人への制裁は必要だが、子どもに罪はない。少子化対策、子育て支援の視点から世帯主の保険証は返還を求め、子どもは無条件で除外すべきだ」とも指摘する。

 【国民健康保険の無保険問題】 国民健康保険財政は高齢者医療費の伸びなどで赤字が続き、1996年度には3年連続で1000億円を超えた。もともと保険証の返還は、支払い能力があっても納付しない「悪質滞納者」が対象だったが、国民健康保険法の改正で義務化。代わりに機械的に被保険者資格証明書を出す自治体が増えたとされる。2007年の滞納者は99年の1・4倍の475万世帯。


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