産経ニュース 2015.6.4 21:58更新
【FIFA汚職】「手錠か、協力か」 捜査員に迫られ協力者に転じた元理事、小型マイクで情報収集
FIFAのブレーザー元理事=2011年6月、スイス・チューリヒ(ロイター)
【ニューヨーク=黒沢潤】国際サッカー連盟(FIFA)の汚職事件は、米当局への協力者に転じたチャールズ・ブレーザー元理事(米国)からもたらされた大量の極秘情報によって全容解明が一気に進んだ。
「手錠を掛けられて連れ去られるか、もしくは協力するかだ」-。2011年秋、ニューヨーク市マンハッタンの5番街で、ブレーザー元理事は突然、連邦捜査局(FBI)の捜査員からこう声を掛けられた。
元理事は05~10年に1100万ドル(約13億2千万円)の不正利益を上げながら脱税を続けていた。米紙デーリー・ニューズによれば、元理事は捜査員にこの事実を突き付けられると、1時間もしないうちに捜査への協力を誓ったという。
ニューヨーク市出身で大学では会計学を専攻。少年らにサッカーを教える一方、得意のパソコンを駆使してニュースレターを親たちに配るなどし、地元サッカー協会の拡大に貢献した。
これが契機となり、米サッカー連盟、北中米カリブ海サッカー連盟の幹部へと上り詰め、同連盟のジャック・ワーナー会長(FIFA元副会長)と知り合った。同連盟の事務局長に就任し、1996~2013年にはFIFA理事も務め、絶大な権力を手にした。
元理事はスポーツ関連業者に契約額の1割を見返りに要求し、「ミスター10%」の異名もとった。ニューヨークの豪華マンション「トランプ・タワー」に月額2万4千ドル(約290万円)の部屋を借り、飼い猫には月額6千ドル(約72万円)の部屋も与えた。米マイアミやバハマのリゾート地に高級別荘も所有した。
FBIの協力者に転じると、小型マイクを忍ばせ、FIFA幹部らとの会話を録音。捜査員の傍らで幹部らと電話や電子メールのやりとりもした。標的は少なくとも44人に上った。
ニューヨークの元検察官ジョン・ラウロ氏は「(元理事は)捜査全体のブロックを積み上げる中心人物だった」と指摘。「米当局は他にも協力者を集めて“鎖”を作るだろう。狙いは『トップ・ガイ』(ブラッター会長)だ」と強調している。
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