「ワシントン政治を変革できる」「党派主義を超えて、今こそ和解と団結の時だ」「一つの国として結束し、ともに前進しよう」
これは2000年12月13日、法廷闘争で決着した米大統領選挙でのブッシュ・テキサス州知事(当時)の勝利宣言だ。次期大統領に就任するオバマ上院議員の5日の勝利宣言によく似ている。
実は、こうした理想主義は歴代大統領が唱えてきたものだ。「分かれて争う家は成り立たない」と結束を呼びかけたリンカーン大統領の演説を、オバマ氏は度々引用する。ブッシュ大統領は政権8年間で当初の「思いやりのある保守主義」を逸脱したが、オバマ氏は「1つの米国」をどう実現するのか。
その試金石になるのが、閣僚やホワイトハウス要職の人事だ。オバマ氏は「リンカーンは閣僚に政敵も起用した。個人の感情はどうあれ、危機の時にいかに国を導くかだ」と述べ、融和や結束の象徴としても能力のある人材を広く登用する方針を示した。敗れたマケイン上院議員の共和党や、予備選挙で激戦を繰り広げたヒラリー・クリントン上院議員の関係者など、人種、性別はもとより党派や陣営を超えた画期的なチームづくりができるかどうかが見どころだ。
また、国際社会との融和については、アメリカン大学のゴードン・アダムズ教授が「最初の外遊先で決まる」と指摘。ブッシュ大統領が初外遊先にメキシコ、その後もスウェーデンやスロベニアなどを回った例を挙げ「英国やフランス、ドイツなどは不信を抱いた。ブッシュ政権は欧州の同盟国を重視しないとのメッセージを送ったからだ」という。
オバマ氏はブッシュ政権1期目の「1国主義」を廃し、国際協調路線を唱える。証として「中東から欧州、父の母国ケニアを含むアフリカを歴訪するのではないか」とアマースト大学のトーマス・ダム教授は予測する。
そして「変革」をどう見える形にするか。オバマ氏側近は、勤労者世帯95%への平均1000ドル(約10万円)の減税措置を「すぐ着手する」と明言。環境問題などの大統領令見直しにも言及するが、金融危機への包括的対処やイラク戦争などは当面、ブッシュ政権の施策継続の可能性が濃厚だ。
変革と継続をいかに調和させるかも大きな課題。ダム教授は「上下両院で勢力を伸ばした民主党が急進的な政策要求をすれば、再び亀裂jを生む」として共和党より民主党がオバマ氏の障害になると懸念する。(ワシントン・立尾良二)=おわり
これは2000年12月13日、法廷闘争で決着した米大統領選挙でのブッシュ・テキサス州知事(当時)の勝利宣言だ。次期大統領に就任するオバマ上院議員の5日の勝利宣言によく似ている。
実は、こうした理想主義は歴代大統領が唱えてきたものだ。「分かれて争う家は成り立たない」と結束を呼びかけたリンカーン大統領の演説を、オバマ氏は度々引用する。ブッシュ大統領は政権8年間で当初の「思いやりのある保守主義」を逸脱したが、オバマ氏は「1つの米国」をどう実現するのか。
その試金石になるのが、閣僚やホワイトハウス要職の人事だ。オバマ氏は「リンカーンは閣僚に政敵も起用した。個人の感情はどうあれ、危機の時にいかに国を導くかだ」と述べ、融和や結束の象徴としても能力のある人材を広く登用する方針を示した。敗れたマケイン上院議員の共和党や、予備選挙で激戦を繰り広げたヒラリー・クリントン上院議員の関係者など、人種、性別はもとより党派や陣営を超えた画期的なチームづくりができるかどうかが見どころだ。
また、国際社会との融和については、アメリカン大学のゴードン・アダムズ教授が「最初の外遊先で決まる」と指摘。ブッシュ大統領が初外遊先にメキシコ、その後もスウェーデンやスロベニアなどを回った例を挙げ「英国やフランス、ドイツなどは不信を抱いた。ブッシュ政権は欧州の同盟国を重視しないとのメッセージを送ったからだ」という。
オバマ氏はブッシュ政権1期目の「1国主義」を廃し、国際協調路線を唱える。証として「中東から欧州、父の母国ケニアを含むアフリカを歴訪するのではないか」とアマースト大学のトーマス・ダム教授は予測する。
そして「変革」をどう見える形にするか。オバマ氏側近は、勤労者世帯95%への平均1000ドル(約10万円)の減税措置を「すぐ着手する」と明言。環境問題などの大統領令見直しにも言及するが、金融危機への包括的対処やイラク戦争などは当面、ブッシュ政権の施策継続の可能性が濃厚だ。
変革と継続をいかに調和させるかも大きな課題。ダム教授は「上下両院で勢力を伸ばした民主党が急進的な政策要求をすれば、再び亀裂jを生む」として共和党より民主党がオバマ氏の障害になると懸念する。(ワシントン・立尾良二)=おわり