トヨタ叩きの深層

2010-02-22 | 社会
新聞テレビが伝えないトヨタ叩きの深層!トヨタ米国人幹部の説明に過ちやおごりはないのか?~米国トヨタ販売首脳に聞く
独占インタビュー!米国トヨタ自動車販売(TMS)「トヨタ」部門トップ、ボブ・カーター氏
 トヨタの“顔”は誰か――。今、日本人にこの問いを投げかけたならば、十中八九、豊田章男社長との答えが返ってくるだろう。だが、米国では、豊田社長はフォード創業家のビル・フォード会長のような“濃厚な”存在ではなく、トヨタの顔といえば、まさにそのトップの顔の見えない―今回のリコール問題までは品質が神格化されていた―プロダクト自体だった。それでも敢えて人の名を挙げるならば、営業マーケティング部隊を率いる米国トヨタ販売(TMS)のジム・レンツ社長、そしてTMSで「トヨタ」ブランドのトップを務めるボブ・カーター副社長だろう。TMSの上部組織である北米統括会社(TMA)の日本人首脳は黒子に徹し、米国一般社会においてその存在感は薄い。米下院公聴会に出席することで、豊田社長が会社の顔として米国民の目に焼きつくかもしれないが、今後もメディアを通じて米国民に日々語りかけるのが米国人幹部であることに変わりはない。では、彼ら米国人幹部は、今回のリコール騒動をいったいどう自国民に説明しているのだろうか。そこに過ちやおごり、説明責任の不履行はないのか。トヨタ・バッシング(叩き)の震源地に立つトヨタ米国人幹部への、米国人ジャーナリストによる“米国視点”の貴重なインタビューをお届けしよう(聞き手/ジャーナリスト ポール・アイゼンスタイン、翻訳/ダイヤモンド・オンライン副編集長 麻生祐司)
DIAMOND online 2010年02月22日
―あなたは、トヨタがアクセルペダルにフロアマットが引っかかる可能性があるとして米国で400万台超の自主改修を発表した11月の時点で、私に対して、「これで問題は解決した!」と語っていた。しかしその後も、アクセルベダル部品に欠陥があると認めた1月のリコール、そして2月の新型「プリウス」のリコールと問題は続いている。いったい何が起きているのか?
 そうした経緯が、会社のクレディビリティ(信用)を損ねたことは理解している。確かに、私はかつてあなたの前でそう話した張本人だ。その後起きたことを考えれば、私の個人的なクレディビリティの一部分も吹き飛んでしまった。
 ただ、何かが起きることを知っていたのに黙っていたわけでは決してないことをここで強くお伝えしておきたい。
―しかし、あなたの発言はさておき、対策が小出しにされてきた結果、世間において「次があるのでは?」「トヨタはまだ何かを隠しているのでは?」との不信感が高まるのは、自動車業界を長年取材してきた私から見ても、避けがたい展開だ。中でも、アクセルが戻りにくくなる原因が加減速を制御する電子制御スロットルシステムの欠陥にあるのではという見方が広がっていることに対して、何か言いたいことはあるか。
 これだけはお伝えしておきたい。電子制御技術には、われわれは絶対的な自信を持っている。細心、綿密そして徹底的に電子制御技術のテストを行っており、そのことを信じていただきたい。
 新型プリウス(昨年5月に発売した第3世代)は、電子制御で最適化された、より強固なブレーキシステムを備えている。われわれはABS(横滑り防止のアンチロック・ブレーキ・システム)に関する124の苦情を受けていたが、それらは主に(凍結路や雪道などの)滑りやすい路面で軽くブレーキを踏んだ時に、効きが悪く感じるという苦情だった。
 壊れているわけではない。ただ、不快に感じた顧客がいた。そのため、われわれはソフトウェアをアップグレードすることを決めた。
―しかし、前世代のプリウスについても同じような苦情が増えている。
 正直なところ、そうした苦情を受けて、われわれも頭をかきながら当惑している。なぜなら第2世代と第3世代のプリウスのブレーキシステムはまったく異なるものだからだ。
 ちなみに、第2世代のプリウスは米国においては過去5年間で約65万台を販売したが、NHTSA(米運輸省道路交通安全局)に寄せられたブレーキの不具合に関する苦情数は1月までは104件だった。ところが、2月の最初の数日だけで、突然356件の苦情が寄せられた。
 私に言えることは、われわれのエンジニアはこの間もテストを繰り返しているが、先ほど指摘されたような(電子制御スロットルシステムの)欠陥を見つけられないということだ。もちろんテストはこれからも全力で続ける。また、街中に出向いて、トヨタ車を調査するチームもある。いうまでもないが、顧客の信頼を取り戻すためのいかなる努力も苦労もいとわない覚悟だ。
―その後撤回されたとはいえ、ラフード米運輸長官による「(トヨタリコール車)の運転をやめるべき」という発言は、社内ではどのように受け止められたか。
 政府対応は私の仕事ではないが、政府との関係はその当時、ギクシャクしていた。恐らくわれわれはコミュニケーション上の過ちを犯したのだろう。たとえば、いくつかのプレスリリースは英語での表現が適切ではなかったかもしれない。反省すべき点は多い。
―フィーディング・フレンジー(Feeding Frenzy)、すなわち過剰な報道合戦の餌食にされているという思いはないのか?
 正直なところ、誰かがガレージのドアに車をぶつけただけで、加速問題だと主張し、裁判所に私を引きずっていくのではないかという心境にある。ただ、一方で、顧客の期待に応えられていない自分たちがいる。この状況において、自分たちに問題がないなどとは言うつもりはない。
―販売への影響をどう見るか。
 定量的な予測を立てるのは時期尚早だろう。なにしろわれわれは1月最終週にアクセルペダルの不具合問題で米国在庫の約60%に相当する8車種の販売を停止したのだ(19車種のうち)。現在のところ、他の車種の売れ行きはさほど影響を受けていないが、今後の影響を予測することは難しい。いずれにせよ、米国で1月に3ポイント強の市場シェアを失った事実は重い。
 そもそも、トヨタは米国でも品質と信頼性への評価を高めていくことでビジネスを積み上げ、大きな成功につなげてきた。すなわち品質と信頼性こそがトヨタブランドの基礎だ。現状では、顧客の期待にも、自分たちの期待にも応えられていない。
 改めてお伝えしたい。われわれがいくつもの失敗をしたことは認める。だからこそ失敗にどう対応し、信頼をどう再構築できるか、そのことばかりに今は集中している。われわれに必要なことは、とにかく顧客を大切にすることだ。一部車種の生産販売を休止した決断も、その姿勢の表れだ。
 今回の問題に伴う財務上のインパクトは、現時点ではまだ分からない。ただ、ひとつ確かなことは、失敗をしたときは、その失敗にどう対処するかで、自分たちのイメージが大きく変化してしまうということだ。そのことを、われわれは胸に刻み、信頼回復に向けて全力を尽くしている。
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【自動車産業ニュース】
トヨタ、英仏も生産一時停止へ
2010年2月20日
 トヨタ自動車は20日、3月から4月にかけ、英国とフランスの工場での生産を一時停止する計画を明らかにした。欧州各国の政府による購入支援策の打ち切りや、リコール(無料の回収・修理)問題で販売減が見込まれることに対応する。
 英国の2つの工場は3月29日~4月1日と4月6~9日の計8日間、稼働を停止。この間、今夏から始める小型車「オーリス」ハイブリッド車の製造に向けた準備を進める。フランス工場でも3月上旬から生産ラインを一時休止する。
 生産車種は英国がオーリスと中型車「アベンシス」。フランスは小型車「ヤリス」(日本名ヴィッツ)で、いずれもリコール対象車種。英国の2工場は稼働率の低下が続いており、年内に1ラインの休止に踏み切る。これに伴い、従業員の約2割に当たる750人の希望退職者を募る。
 トヨタは米国でも2~4月に一時的に生産を停止する計画で、リコールの影響が他地域にも広がってきた。
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トヨタが米国民を怒らせた本当の理由を語ろう~米著名自動車コンサルタントのマリアン・ケラー氏に聞く
DIAMOND online 2010年02月15日
 大規模リコール(回収・無償修理)問題に直面するトヨタ自動車の対応を巡る米国の論調が、バッシングの様相を呈してきた。米国を代表する自動車コンサルタントのマリアン・ケラー氏は、トヨタ側のうかつな問題発言といい、事態把握能力の低下といい、通常では考えられないことが起きていると警鐘を鳴らす。
―大規模リコール(回収・無償修理)問題を受けて、米国でトヨタ叩き(たたき)が過熱している。なぜトヨタはかくも叩かれなければならないのか?
 私自身、今回の問題がこれ以上エスカレートすることを望んでいないので、順を追って冷静に説明したい。
 まずリコール自体は、珍しいことではない。私のもとにも先日、日産自動車からリコールのレターが届いたばかりだ。通常のリコールならば、車をディーラーに持って行き、すぐに無償で修理してもらえるというタイプのものだろう。
 今回のトヨタのリコールの中でも、たとえば、最新モデルの「プリウス」はそうしたケースだ。発売後に欠陥が明らかになり、無償で修理してもらえる。そうしたリコールはこれまでも業界で行われてきた通常の手続きのようなものであり、本来はメーカーの評判を悪くするようなものではない。
 では、なぜ今回のトヨタのケースは違ったのか。
 それは、率直に言えば、欠陥製品を出しながらそのことを否定し続けているという印象を世間に与えてしまったからだ。
 米国のメディアはだいぶ以前から、米道路交通安全局(NHTSA)にここ数年、トヨタ車を購入した消費者からさまざまな苦情が寄せられていたことを報じていたが、トヨタはNHTSAにドライバー側の問題だと説明し、NHTSAもその説明を受け入れていた。だが、アクセスペダルがフロアマットにひっかかったことが原因とされる昨年の死亡事故(カリフォルニア州サンディエゴ郊外でレクサスに乗った家族4人が死亡した事故)がさかんに報道されるに至って、状況は一変したのだ。フロアマットに対する苦情は、以前からあったわけで、なぜもっと早くしかるべき対応を取れなかったのだとの批判が高まるのも当然だろう。
 それでも、品質問題に関する豊田章男社長の2月初旬の会見が(トヨタがNHTSAにフロアマットの取り外しなど安全対策実施を通知した)昨年10月、いや2週間前でもいい、もっと早く行われていたら、(米国における)トヨタ批判の大合唱はこれほどまでは高まらなかったのではないか。トップが責任を公にすれば、後はメーカーとクルマの所有者とのあいだの問題として収まるからだ。
 だが、それをしなかったうえに、別の経営幹部が要らぬ発言までしてしまった。(トヨタの)佐々木眞一副社長がインディアナ州のCTS社のアクセスペダルを採用した理由について、「現地への貢献を考慮したため」という趣旨の発言をしたのは、はっきり言って、言語道断だ。もちろんCTS社の技術力を評価するという前置きもあったが、あのひと言だけで、まるで現地のために劣った企業と取引したと言っているように聞こえてしまった。
 デンソー製ペダルと比較すると、CTS製は明らかに少ない部品数で設計されており、コスト削減も背後にあったはずだ。佐々木氏の発言は、 米国民に侮辱的で傲慢なものと理解されてしまった。
 やや厳しいことを言えば、トヨタはグローバル製造企業であっても、真のインターナショナル企業にはなり得ていないということだろう。異なる文化を超えて意図するところが正しく伝わるよう、何らかの助けが必要なのではないか。
―トヨタの品質管理に何か根本的な問題が起きているのだろうか
 私にも内情は分からない。
 ただ、先ほどリコール自体は珍しいことではないと言ったが、今回のトヨタのケースは数モデルにわたり、しかも何年もの製造年にわたってリコールされるという大掛かりなものである点では、やはり珍しいと言わざるを得ない。
(トヨタに限ったことではないが)コストを極力削減しようとして部品を共有したこともひとつの理由だろう。コストは安くすむが、欠陥が出た際には問題は拡大してしまう。
 ただ、そうした自動車業界の潮流はさておき、質問に戻れば、今回のリコール問題以前にも、ここ数年、数モデルでトヨタらしくない欠陥が続いていたことは事実だ。たとえば、テキサスで製造したピックアップトラックのタンドラでは、発売後にカムシャフトの不備でエンジン部分にひびが入るという問題が出た。タンドラでは他にも小さな欠陥がいくつかあった。また数モデルのエンジンでスレッジ(金属粉)が大量に発生するという問題も報じられた。
 いずれの場合も、トヨタが静かに処理したので、今回のような騒ぎにはならなかった。もっとも、トヨタ・ディーラーたちによれば、ここ数年保証期間内の新車の修理コストが上がっていたらしく、それを考え併せると、トヨタの完璧な品質神話にかげりが差していることは事実だ。
―今回のトヨタの対応については、米国の識者の多くが「Too little Too late(不十分で遅すぎる)」と指摘している。対応が後手に回ってしまうのはなぜだとみるか?
 リコールにはもちろん多大なコストがかかるからだろう。しかし、(ドライバー側の問題というトヨタの当初の認識に表れているように)、はっきり言えば、問題を重視していなかったということではないか。
 では、なぜ問題を重視できなかったのか。突き詰めれば、その原因は、トヨタ社内のコミュニケーションの問題だ。はっきりとはわからないが、事態を分析するのは、米国のエンジニアなのか、日本側の人間なのか、決断を下すのは誰なのか――関係者間のコーディネーションがうまく働かず、その結果、起こっている問題にしかるべき手を打てなかったということではないか。
 そもそもアメリカ政府が2人の人間をわざわざ日本に送って、問題の深刻さを伝えねばならなかったことは、通常では考えられない。殊にトヨタは、いつもアメリカの政府機関の調査には協力的だったにも関わらず、だ。
―アメリカの消費者は、トヨタ車を買うことを躊躇するようになるだろうか。
 こう答えよう。1960年代、70年代に、アメリカの国産自動車産業は(顧客離れという)深刻な事態に陥った。ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターが技術的な欠陥車を出しながら、それを認めず、ドライバーの非難に終始したためだ。そのような姿勢がアメリカの車のブランドを殺し、トヨタなどの日本車に入り込む隙を与えたと私は考えている。
 トヨタも、同じ道を辿らないとは限らない。今やアメリカの車の質は向上した。また、韓国の車の質も向上した。質という面でも、トヨタ車に代わる消費者の選択肢は多数存在するわけだ。今回のリコール問題でトヨタに不信感を抱いた消費者が、他のメーカーの車に率先して乗り換えていったとしてもまったく不思議ではない。
―もう、そうした動きは出ているのか。
 まだだ。市場は混乱していて、トヨタ車のオーナーたちはとにかく修理が早く終わることを求めている。重要なターニングポイントは、4~5月頃ではないか。おそらくトヨタはその頃に、ディスカウントを行うなどの大々的なキャンペーンに打って出なければならない事態に追い込まれるだろう。さもなければ、販売を再び活気づけることはできないのではないか。
―今後起こりうる最悪のシナリオは?
 リコール対象車で修理後に再び問題が浮上することだ。そのようなことがあれば、トヨタにとって回復しがたい打撃となるだろう。現在すでに電気系統に問題があるのではないかという声があるが、それも含め、まだ第三の問題が潜んでいたということになれば、消費者は他社の車に殺到する。ただ、仮にそうした事態が起こらず、人びとが自然とこの問題を忘れていったとしても、トヨタは今後のためになぜこれほど対応が遅れたか問題の本質を見つめ直す必要がある。
―トヨタに対する集団訴訟は頻発するのか。
 アメリカでは集団訴訟は避けられない。すでに動き回っている弁護士はたくさんいるだろう。大半のケースは裁判に至らないだろうが、いくつかは裁判所に持ち込まれる。裁判の過程で、トヨタが何をして何をしなかったかがきっと明らかになるはずだ。(聞き手/ジャーナリスト、瀧口範子)
■マリアン・ケラー(Maryann N. Keller)
 米国を代表する自動車業界コンサルタント。1994~99年、全米自動車業界アナリスト協会会長。現在は、マリアン・ケラー・アソシエーツ代表として、コンサルタント業に従事。著書に『GM帝国の崩壊』『激突―トヨタ、GM、VWの熾烈な闘い』(共に草思社)がある。

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