裁判員制度10年「裁判員の負担を軽くせよと審理の拙速化を図る一方、真実追求は疎かになる」2018/11/11

2018-11-11 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

2018年11月11日 朝刊
裁判員制度10年、薄れる市民参加 選任手続き、昨年出席2割
 二〇〇九年に導入された裁判員制度で、裁判員を選ぶ手続きへの市民の出席率が下がり続けている。昨年一年間の裁判員候補者のうち、選任手続きに出席した人は約二割で、過去最低となった。裁判員制度の最大の理念は「市民参加」だが、来年五月の施行十年を前に、形骸化が懸念されている。
 同制度では毎年、有権者から無作為に、裁判員の候補となる人を選び、名簿を作成。この名簿を基に、事件ごとにくじで裁判員候補を決め、「選任手続期日」に裁判所に来るよう告知する。裁判長による意思確認などを経て、さらにくじを行い、裁判員を決める。
 最高裁によると、「選任手続期日」に裁判所に来るよう告知された裁判員候補は一七年、十二万百八十七人。このうち、実際に出席した人は二万七千百五十二人で、出席率は22・6%だった。制度が始まった〇九年の40・3%から下がり続けている。告知を受けても、「重要な仕事」などを理由に辞退する人が増えている。
 背景には審理の長期化がある。最高裁によると、ゆとりを持って審理計画を組むようになったことなどが影響し、裁判員裁判の平均日数は〇九年の三・七日に対し、一七年は一〇・六日まで伸びた。同年の調査では審理日数が長いほど、辞退率が高い傾向があった。
 白鴎大法学部の村岡啓一教授(刑事訴訟法)は「制度が始まって九年たっても関心が高まっていない。国民の側も裁判員になることが義務という意識が薄らいでいる」と分析している。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です
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 裁判員 形骸化の恐れ  争点整理で実質審理 情報足りないまま判断 
 2018年11月11日 朝刊
(抜粋)
 裁判員裁判が長期化する一方、審理の形骸化を指摘する専門家は少なくない。
 裁判員の公判に先立ち、法律のプロである裁判官、検察側、弁護側の3者による非公開の「公判前整理手続き」が行われるが、これも長期化している。裁判員の負担軽減などを目的に争点や証拠を絞り込むが、最高裁によると、手続きの平均期間は2009年の2・8ヵ月から、17年は過去最長の8・3ヵ月になった。
 一橋大名誉教授の村井敏邦氏(刑事法)は「プロの法律家だけで、絞り込みすぎ。裁判員が『お飾り』になっている恐れがある」と危ぶむ。
 白鴎大の村岡啓一教授(刑事訴訟法)は、死刑が争われた裁判員裁判での弊害を指摘する。
 村岡教授によると、裁判員制度の下で、これまで50件以上の死刑求刑がなされ、約7割で求刑通り死刑判決が出た。制度導入前の1980年代以降の裁判官だけの裁判では、死刑求刑のうち死刑判決が出た割合は6割弱だった。
 村岡教授は「日程短縮を図るあまり、被告の生い立ちや生活環境といった情報が裁判員に与えられていない。情報が足りないまま、裁判員たちは死刑にするかどうかの判断を迫られている」と語る。
 死刑制度に詳しい後藤貞人弁護士は「死刑事件で調べるべき要素を調べ切れていない」と語る。
 公判で、裁判員が被告や証人の話を詳しく聞きたいと思っても、審理をリードする裁判官が日程厳守にこだわることがあり、必ずしも納得できるまで被告の声を聞けていないという。
 裁判員裁判を検証する藤田正人弁護士は「裁判員の負担を軽くせよと審理の拙速化を図る一方、真実追求はおろそかになる。さらに市民の出席率は下がり続ける。いっそ制度ごと廃止すべきだ」と訴える。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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【裁判員制度のウソ、ムリ、拙速】 大久保太郎(元東京高裁部統括判事)  『文藝春秋』2007年11月号
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【裁判員5年(下)】凄惨映像は再生されず、少年らは殺人罪を免れた 「心理的負担」迷う裁判所 量刑に直撃 2014-06-06 
【裁判員5年(中)】死刑判決をひっくり返すプロ裁判官の論理 死刑破棄3例、全て東京高裁 村瀬均裁判長 
【裁判員5年(上)】異様法廷「首切れる実験」放映…場違い「死刑違憲論争」を誘発する“死刑の秘密主義” 
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