五木寛之氏の『親鸞』 仏さまのお慈悲を信じて、ただ南無阿弥陀仏ととなえるだけ

2009-03-23 | 仏教・・・

「当たり前、だといわれるのか」
「そうよ。だって、すごく簡単なんですもの。仏さまのお慈悲を信じて、ただ南無阿弥陀仏ととなえるだけ。そのほかのことは、なにもしなくてよい、ただ信じて、お念仏をとなえればよいといわれれば、これほどありがたい教えはないじゃありませんか。勧進聖のかたのお話をきけば、やはりお布施をしなければならない。お寺のお坊さまは、ちゃんと供養をして、日々のおつとめを怠らぬように、殺生をさけ善い行いをしなさいとおっしゃる。それにくらべると、法然さまのお説きになっているのは、ほかのことはなにもいらぬ。ただ念仏だけでよい、というのですから。そうでしょう?」
 範宴はうなずいた。(略)
 仏の光は差別なき光だ。それが釈尊の第一歩だった。仏陀は、王とも、貴族とも、武人とも、商人とも、村の鍛冶屋とも、農夫とも、ときには盗人や遊女とさえ膝をまじえて語りあわれた。
 古代の天竺で、旃陀羅(せんだら)と呼ばれた最下層の人びとをも差別されなかった。
 その事実をまっすぐにみつめれば、女人往生は当然のことだろう。(略)
「念仏ひとつで地獄へゆかずともよい。浄土に迎えられる、そう教えられて、嬉しやと心づよく思うても、やはりそれだけでよいのか、本当にすくわれるのか、と不安になるのが人の常だ。その疑う心をはげますのが法然さまの言葉ではあるまいか。それでよいのだ、迷うことはない、と、あの声できけば信じることができる。それは法然さまが古今の学問をすべて自分の心に問いかけられて、一つ捨て、二つ捨て、最後にのこったのが念仏ひと筋の道であったことを、みなが感じるからであろう。選択(せんちゃく)、とは、まさにそのことをいわれているのではないか」
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〈来栖のつぶやき〉
 イエスの思想と全く同じである。人はみな等しく罪深い。いや、罪を犯さなくては生きてゆけぬ者だ。殺生を禁じられても、他の生きものの命を奪わなくては生きてはゆけぬ。無辜の命を奪うことで生きる。なんと罪深い存在であることだろう。
 このような人類であるから、救われるのは人の「わざ」に依るのではない、とパウロは言った。恩寵によって救われるのだ、罪の深いところに(救いの)恵みは満ち溢れる、と言う。
 “さて、あなたがたは、以前は自分の過ちと罪のために死んでいたのです。・・・以前は肉の欲望の赴くままに生活し、肉や心の欲するままに行動していたのであり、ほかの人人と同じように、生まれながら神の怒りを受ける受けるべき者でした。しかし、憐れみ豊かな神は、わたしたちをこの上なく愛してくださり、その愛によって、罪のために死んでいたわたしたちをキリストと共に生かし、---あなたがたの救われたのは恵みによるのです---キリスト・イエスによって復活させ、共に天の王座に着かせてくださいました。・・・このことは、自らの力によるのではなく、神の賜物です。行いによるのではありません。それは、だれも誇ることがないためなのです。”(エフェソ2、1~9)
 “律法が入り込んできた来たのは、罪が増し加わるためでありました。しかし罪が増したところには、恵みはなおいっそう満ちあふれました。こうして、罪が死によって支配していたように、恵みも義によって支配しつつ、わたしたちの主イエス・キリストを通して永遠の命に導くのです。”(ロマ書5、20~21)
 最近、私は、イエスの「自分を愛してくれる人を愛したところで、あなたがたにどんな報いがあろうか」という言葉が心にかかってならない。罪を犯さずに1秒も生きられない人間であるが、その人間にイエスは「あなたがたも完全な者となりなさい」と言う。「完全な者となれる」と言う。私は、この言葉を見過ごすことが出来ない。考えないではいられない。
 “目には目を、歯には歯をと命じられている。しかし、わたしは云っておく。悪人に手向かってはならない。だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい。あなたを訴えて下着を取ろうとする者には、上着をも取らせなさい。(略)求める者には与えなさい。あなたがたも聞いているとおり、「隣人を愛し、敵を憎め」と命じられている。しかし、わたしは云っておく。敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。あなたがたの天の父の子となるためである。父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせてくださるからである。自分を愛してくれる人を愛したところで、あなたがたにどんな報いがあろうか。(略)あなたがたの天の父が完全であるように、あなたがたも完全な者となりなさい”(マタイによる福音書5、38~)
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