英、約30年ぶりに原発新設…中国も出資
読売新聞 10月22日(火)10時52分配信
【ロンドン=中沢謙介】英国政府は21日、英南西部ヒンクリーポイントに原子力発電所を新設することで、仏電力公社(EDF)などと合意したと発表した。
新原発は2023年に稼働する予定。英国での原発新設は、1995年に稼働した「サイズウェルB」原発以来、約30年ぶりとなる。運転中の原発は17基ある。
総工費は160億ポンド(2兆5600億円)。建設・運営を担う事業体に、EDFが45~50%を出資し、仏原発メーカーのアレバが10%、中国原発事業会社の「中国広核集団(CGN)」と「中国核工業集団(CNNC)」が計30~40%をそれぞれ出資する。
欧州では、東京電力福島第一原発の事故を受けて、ドイツが2011年、脱原発を表明した。これに対して、英国は地球温暖化対策などを理由に、凍結していた原発の新設を再開する計画を打ち出している。日立製作所は昨年11月、原発事業会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」を買収しており、英国での原発建設を目指している。
最終更新:10月22日(火)10時52分
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◇ 中国、原子炉新規稼働へ/原発を持つ国は、何かの際に短時間で原爆を作ることができる/原発保有国の本音 2011-05-11 | 国際/中国/アジア
原子炉新規稼働へ 福島事故後初 中国
中日新聞2011年5月11日 朝刊
【北京=渡部圭】中国広東省深セン市で来月中旬、新たに原子炉一基が稼働する。福島第一原発の放射性物質の流出事故後、世界初の新規稼働になる。欧州や日本では「脱原発」などエネルギー政策の転換も検討されるが、中国政府は安全性を高めることを強調し、原発推進政策を堅持する方針だ。
国有の原発会社「広東核電集団」によると、同社が建設した嶺澳(れいおう)原発の2号機が今月五日、試運転に成功し、六月十五日に営業運転を開始する。同原発は既に三基を稼働させており、四基目となる2号機は加圧水型で百万キロワットの出力がある。
中国政府は福島原発の事故を受け、稼働中の原発の安全検査を実施し、安全計画策定までは建設中を除く計画中の承認を一時凍結した。2号機は既に完成間近で、稼働日程は事故の影響を受けることはなかった。
国家発展改革委員会は福島の事故後、国が奨励する産業システムとして「先進的な原子炉建設と技術開発」「原子力発電所建設」の二項目を盛り込み、あらためて原発推進の政策を確認した。
原子力安全管理局の幹部は、安全検査が八月までに終了するとの見通しを示し、ほぼ同時期に安全計画を公表、未承認の原発計画の承認手続きを再開する予定だ。
中国政府は、化石燃料への依存から脱却するため、二〇一五年には計画中の原子炉十基を除き、現在の四倍に当たる約四千万キロワット(建設中を含め計三十七基)の出力にする目標を掲げる。実現すれば世界の五位以内に入る「原発大国」になる。
中国は現在、消費電力の八割近くを石炭に頼る。大気汚染、温暖化が深刻化する中、高度経済成長を維持するには、原発建設は「国是」といえる。
-------------------------------
◆ 原発保有国の語られざる本音/多くの国は本音の部分では核兵器を持ちたいと思っているようであり2011-05-10 | 政治〈国防/安全保障/領土〉
知らないのは日本人だけ? 世界の原発保有国の語られざる本音
JB PRESS 2011.05.10(Tue)川島博之〈東京大学大学院農学生命科学研究科准教授〉
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◇ 『なぜアメリカは日本に二発の原爆を落としたのか』日高義樹著 2012-08-31 | 読書
(抜粋)
第4部 なぜ福島原発事故の処理は世界で評判が悪いのか
p245~
日本の人々は、日本が世界唯一の核爆弾による被害者である事実に甘えている。そのことをはっきりさせたのが、4月初めの『ニューヨーク・タイムズ』の論説で、日本が原子力発電をやめると決めたことに対して「地球温暖化の問題を考えれば、賢明ではない」と日本の態度を批判するものだった。
全米商工会議所やエネルギー省の私の知り合いも、エネルギーの将来については可能性を大きく残すべきで、福島原発事故があったからといって、原発をすべてやめるのは行き過ぎであるという見方をしている。
日本にはもともと、原爆を投下されたことから核エネルギーに対する恐れが強い。原子力発電についても用心深いほうが正しいと信じて、福島原発を契機にやめてしまうことについて、世界で称賛されると思った人が多いようである。だが世界の専門家は、福島原発事故のあと日本が行うべきは「いかに原子力発電を、より安全にするか」という努力であると考えている。今度の失敗をもとに、さらに安全な仕組みを考えて世界に提示してほしいと思っている。
p246~
世界の人々は広島と長崎に投下された原爆を原点として、核エネルギーの危険性を十分に理解している。だが原子力発電が世界の現実になっている現在、地下資源のない日本が、資源のある国々と同じように、簡単に核エネルギーを捨て去ることについて、世界の人々は決して日本を尊敬してはいない。
世界中の専門家が、福島原発の処理にあたって日本政府が秘密主義をとったことを厳しく批判したが、原発停止についても、日本が専制国家のように国民的な議論をすることもなく決めたことに驚いている。
東北地方太平洋沖地震と大津波によって事故が起きたとき、アメリカの友人たちは、日本に同情的だった。だが、現在は批判に変わり、日本の後ろ向きの姿勢に失望して世界の経済人が日本を見放そうとしているが、日本の人々は注意を払おうとしない。
原爆の被害者である日本人はもともと、核の問題については自分たちだけに通用する理屈と行動を押し通してきているが、本人はそのことに気がついていない。(略)
p247~
こういった同情的な見方が静かにではあるが徐々に変わり、日本に対する不信の念がワシントンでは強まってきた。その最大の原因は、アメリカのマスコミだった。現地にいた新聞記者たちは、日本政府や東電が詳しい情報をまったく提供しないと伝え、「日本政府や関係者は大丈夫だ、大丈夫だと言うばかりだ」と厳しく非難した。
p249~
アメリカでは、原発事故は戦争と同じ扱いである。したがって、中心になるのは軍隊である。警察や消防は補助的な存在で、軍隊が事故現場を取り仕切り、先頭に立って地域と住民の安全を確保する。ところが、我が国には軍隊がない。自衛隊は自衛隊に過ぎず、世界の常識で言う軍隊としての行動をとれなかった。もともと、そうした体制もできていなかった。(略)
福島原発の事故で最も致命的だったのは、「原発は安全である」という宣伝のもとで、政府も地域の人々も事故が起きた場合の訓練を行っていなかったことである。つまり、備えがまったくなかった。
p250~
私はアメリカの原子力発電所をいくつか取材したが、「原発は安全である」と宣伝する一方で、定期的に事故に備える訓練を行っている。すでに触れたが、使用済みの核燃料が大量に保管されているワシントン州のハンフォードでは、毎週金曜日の午後に、地域の人々を含めて訓練が実施される。(略)
このことを東京電力の関係者に言ったところ、次のように反論された。
「訓練をしなければならないというと、ただちに原発反対の声につながってしまうのです」
スウェーデンの海岸近くにあるフォルクマルク原子力発電所を訪問したとき、海岸に背を向けて厚さ数メートルの堅牢な壁を持つ新しい発電所があった。発電所の壁はいくつかに区切られ、地震があった場合には、揺れを吸収する材料が使われていた。地震がほとんどないスウェーデンでも、こうした対応策がとられている。地震と津波の国の原子力発電所は、「想定」のレベルを極端なほど高くして備えておくべきだった。
広島と長崎に原爆を落とされた日本では、核兵器に対する反対が、そのまま原子力発電に対する反対になっている。原子力発電所では放射性物質を使うが、原子力エネルギーと原子爆弾はまったく違う。原爆を初めて製造したアメリカが最も苦労したのは、兵器として核爆発を起こさせるための引き金だった。この引き金がないかぎり、原子爆弾はできない。ところが日本では、原爆も原子力発電も同じように捉えられている。
原子力発電は、人類が手にした核エネルギーを平和的に利用する目的で始まった。原爆は兵器だが、原子力発電は大切なエネルギー獲得の手段である。だが日本では、原爆と原発をひっくるめて反対している人がほとんどである。
p253~
そこで私は東京電力に依頼して柏崎刈羽原子力発電所を見に行ったが、案内してくれた人はお題目のように「安全です」と繰り返していた。緊急事態に備え、地域ぐるみの訓練を実施することなどは思いもよらないという雰囲気だった。
冒頭に述べたように、原子力発電について日本の人々がやるべきは、短絡的にやめることではない。すでに世界が最新鋭と認めている技術を、さらに高めていくことである。
日本にはエネルギー資源がほとんどない。石炭はあるが炭鉱はなくなってしまった。石油はもともとない。その石油は中東情勢によって価格が高騰するだけでなく、手に入らなくなるおそれがある。モノを製造し輸出によって経済を発展させてきた日本が原子力発電をやめるのは、自殺行為に等しいと知るべきだ。
p260~
中東の国々は、19世紀の初め、民族国家への歩みを始めるとともに、経済的な発展の道をたどろうとした。それを遮ったのが、ヨーロッパ諸国である。植民地主義によって中東の国々を収奪し、近代化を大きく阻害してしまった。
中東諸国は、ヨーロッパに対する報復としてエジプトのナセル中佐など若い軍人を中心にソビエトに頼ったが、結局はアメリカの力に押しつぶされてしまった。
2011年から「アラブの春」と呼ばれる民主主義運動が中東や北アフリカ諸国に広がっているが、その根元にあるのは反米主義である。近代化を西欧諸国の植民地主義に妨害された国々が報復を始めたのである。そのために核兵器を持って、アメリカに対抗しようとしている。
アジア極東で、核兵器とミサイルを開発してアメリカを追い出そうとしている中国、北朝鮮と歩調を合わせ、中東やアフリカでも旧植民地勢力に対する反発としての新しい動きが始まっているのである。
中東やアジアに広がっている反米主義の動きについて、アメリカの指導者たちは楽観的な見方をしているが、アメリカの看板である核に対抗する力をアラブの人々が持ち始めれば、アメリカは軍事力とともに、国際的な政治力の基本になってきた、石油を支配する力も失うことになる。アメリカの核の抑止力がなくなることは、歴史的な大転換が始まることを意味する。新しい世界が始まろうとしているのである。
P261~
私がこの本で提示しようとしたのは、核爆弾という兵器を日本に落としたアメリカの指導者が、日本を滅ぼし、日本に勝つという明確な意図を持って行動したことである。無慈悲で冷酷な行動であったが、日米の戦争がなければ起きないことであった。
原爆を投下された日本は、そうした現実をすべて置き去りにして、惨劇を忘れるために現実離れした「二度と原爆の過ちは犯しません」という祈りに集中するすることによって、生きつづけようとした。国民が一つになって祈ることによって、歴史に前例のない悲惨な状態から立ち上がったのは、日本民族の英知であった。
だがいまわれわれにとって必要なのは、原爆投下という行為を祈りによってやめさせることはできない、という国際社会の現実を見つめることである。すでに見てきたように、世界では同じことが繰り返されようとしている。
我々に必要なのは、祈りではない。知恵を出し合って、日本と日本民族を守るために何をしなければならないかを考えることである。それにはまず、現実と向かい合う必要がある。「原爆を日本に投下する」という過ちを、二度と繰り返させないために、日本の人々は知恵を出し合う時に来ている。
p263~
あとがきに代えて--日本は何をすべきか
アメリカは核兵器で日本帝国を滅ぼし、そのあと日本を助けたが、いまやアメリカ帝国自身が衰退しつつある。歴史と世界は常に変わる。日本では、昨日の敵は今日の友と言うが、その逆もありうる。いま日本の人々が行うべきは、国を自分の力で守るという、当たり前のことである。そのためには、まず日本周辺の中国や北朝鮮をはじめとする非人道的な国家や、日本に恨みを持つ韓国などを含めて、常に日本という国家が狙われていることを自覚し、日本を守る力を持たなければならない。(略)
p264~
軍事同盟というのは、対等な力を持った国同士が協力して脅威に当たらねばならない。これまでの日米関係を見ると、アメリカは原爆で日本を破壊したあと、善意の協力者、悪く言えば善意の支配者として存在してきた。具体的に言えば、日本の円高や外交政策は紛れもなくアメリカの力によって動かされている。日本の政治力のなさが、円高という危機を日本にもたらしている。その背後にあるのは、同盟国とは言いながら、アメリカが軍事的に日本を支配しているという事実である。
いまこの本のまとめとして私が言いたいのは、日本は敵性国家だけでなく、同盟国に対しても同じような兵器体系を持たねばならないということである。アメリカの衛星システムやミサイル体制を攻撃できる能力を持って、初めてアメリカと対等な軍事同盟を結ぶことができる。もっとも、これには複雑な問題が絡み合ってくるが、くにをまもるということは、同盟国に保護されることではない。自らの力と努力で身を守ることなのである。そのために、日本が被った原爆という歴史上類のない惨事について、あらためて考えてみる必要がある。
............