【新帝国時代】第3部 プロパガンダ戦争(5)沖縄の新聞、中国大使に同調/中韓攻勢 宣伝戦に出遅れ

2013-04-05 | 国際/中国/アジア

【新帝国時代】第3部 プロパガンダ戦争(5)沖縄の新聞、中国大使に同調
産経新聞2013.4.5 08:32
 沖縄の琉球新報は4日付の社説で、程永華駐日中国大使が2日に同紙の単独インタビューに応じ、日中関係を「正常な軌道、本来の安定・発展した軌道に戻すべきだ」と述べたと紹介した。そのうえで「緊張緩和は沖縄にとってこそ切実な課題である。主張の差異は差異として認識しつつ、関係自体は『本来』の友好的『軌道』に戻すべきだ」と大使の主張に同調した。
 程大使が沖縄の新聞を選んでインタビューに応じた効果がすぐに出たようだ。
*外務官僚の反撃
 日本側も遅まきながら「世論戦」を始めた。2月3日、香港のフェニックステレビに一人の官僚が出演し、沖縄・尖閣諸島をめぐり中国側出演者と激論を交わした。討論番組「寰宇(かんう)(世界)大戦略」に出演したのは、外務省中国・モンゴル第1課の石川浩司課長。流暢(りゅうちょう)な中国語で詰め寄った。
 「中国側は自らの立場に自信があるのなら、国際司法裁判所になぜ提訴しないのか!」
 中国側が自らに不利な提訴には及び腰であることを見透かしての挑発だ。中国側の香港・嶺南大学アジア太平洋研究センター長の張泊匯(ちょうはくかい)氏は、「中国の主権問題は歴史的に第三者の手に委ねられたことなどない」といつもの中国の公式見解を述べるにとどまった。
 番組サイトには石川氏への批判が集まる一方、「なぜ中国の官僚を討論に出さなかったのか」「日本の官僚に議論で負けそうになった」と、石川氏に軍配を上げた視聴者も少なくなかった。
 中国当局の意向を色濃く反映するフェニックスは昨年8月に尖閣に上陸した抗議船に記者を同乗させ中継も行った。ただ、公式見解を繰り返すだけの中国官製メディアとは異なる。中国本土でも推定2億人の視聴者がいるとされ、指導層にも影響力を持つ。そこに外務省は目を付けた。
 石川氏は出演の意図をこう説明する。
 「誤解に基づく対日感情の悪化を防ぎ、尖閣に関する客観的な情報や日本側の見方を中国に発信することは重要だ。リスクを取らなければ前進もできない」
 もっとも、こうした取り組みは緒に就いたばかりだ。
*一歩先行く韓国
 「ヘリをチャーターして独島(竹島の韓国名)に行きますが、同行しますか」
 韓国外務省は昨年10月、外国人記者をこんな言葉で誘い、島根県竹島に上陸させた。参加した米紙ワシントン・ポストのチコ・ハーラン東アジア総局長は、「韓国政府は見逃せないネタをくれる」と話す。
 韓国は全省挙げて、英語に堪能な官僚を使って積極的に記者との接触を図ってくるという。ハーラン氏によると、韓国は大統領さえもが外国人記者とオフレコ懇談に応じる。
 日本在勤歴計18年のボイス・オブ・アメリカ(VOA)のスティーブ・ハーマン北東アジア支局長も「日本ではわずか数分の取材でも懇願しないといけないが、韓国での人脈の90%は先方からのアプローチだ」と語る。日本政府からほぼ毎週のように竹島に関する政府の立場を説明した文書がメールで送られてくるというハーラン氏はこう皮肉る。
 「日本の外務省は大量のペーパーを書くことで広報しようと決めたようだ。学者なら関心を持つかもしれないけど…」
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第3部 プロパガンダ戦争(5)中韓攻勢 宣伝戦に出遅れ
産経新聞2013.4.5 11:21
 中国艦船によるレーダー照射事件が発表された翌日の2月6日、東京・永田町の自民党本部で開かれた外交・国防合同部会。外務省の杉山晋輔アジア大洋州局長は、こう自己批判した。
 「宣伝戦に負けている。外務省としてもそういう反省は強く持っている」
 レーダー照射は初めてではなかったが、隠蔽(いんぺい)されてきた。政府が公表に踏み切ったのは、中国の宣伝攻勢を牽制(けんせい)する狙いもあった。
 尖閣諸島について、外務省は「領土問題は存在しないとしている以上、積極的広報はできない」(外務省広報文化外交戦略課)との立場だったが、尖閣国有化以降の中国との対立激化を受け、方針を転換した。
 ホームページで尖閣問題を解説する「Q&A」も16問に増やした。中国側の主張を紹介した上で「国際法上有効な論拠は示されていません」と反論している。
 それでも積極的な宣伝戦を展開することに省内の抵抗は根強い。若林健太外務政務官は「(中国などと)同じ土俵に乗っかるのが得策とは思えない」と語る。
*予算削減が打撃
 予算上の問題もある。外務省の広報文化交流予算は平成13年度は335億円だったが、24年度は194億円まで削減された。民主党政権下の事業仕分けなど、政治からの歳出削減要求を受けてのことだが、ある外務省幹部は「これでは竹やりで戦えと言われているようなものだ」と嘆息する。
 「領土や主権といった問題は国の基本の問題。しっかり世界に発信していく」
 NHKの25年度予算を審議する3月21日の衆院予算委員会。新藤義孝総務相はNHKの国際放送の役割をこう強調した。
 NHKは国際放送「NHKワールドTV」の24時間完全英語化を21年2月に開始。現在は約130の国・地域で計約2億5千万世帯が視聴可能だ。NHKの「国際番組基準」では国内向け放送と異なる基本方針を設定。「解説・論調は公正な批判と見解のもとにわが国の立場を鮮明にする」「わが国の世論を正しく反映する」としている。
 ただ、CCTV(中国国営中央テレビ)が尖閣問題や歴史認識について中国の主張を一方的に放送するのに対し、NHKワールドTVは利害が対立する国の主張も紹介する「客観報道」の立場をとっている。
 NHKの冷水仁彦(しみず・よしひこ)理事は「日本の主張だけ紹介しても各国の人は興味を示さない。われわれの調査では各国でNHKの信頼性はCCTVを大きく上回っているのです」と強調する。
*伸びない発信力
 とはいえ、米国や英国での認知度は9~13%(23年度)にすぎない。「各国の国際放送がしのぎを削る中でわれわれは後発。浸透させるのには時間がかかる」(冷水氏)と苦戦を強いられているのが実情だ。
 19年7月には米ワシントンのケーブルテレビでNHKワールドTVを放映する配信料約20万ドルが国の予算から支出されたが、21年末で打ち切られた。22年1月からはNHK予算で配信料を支払っており、国際発信力強化をうたう政府の方針は、現実の政策に反映されているとは言い難い。
 こうした資金難を見越して、20年4月に設立されたのがNHK子会社「日本国際放送(JIB)」だ。主要民放各社や日本マイクロソフトも出資、“オールジャパン”で番組を制作し、NHKワールドTVで放送している。同社は当初、スポンサーからのCM収入で5年後に独立する予定だったが、まだ独立の見通しは立っていない。総収入に占める広告収入の割合は23年度で7%以下。番組自体も毎週金曜日の30分間に限られており、出資企業からは「当初狙っていたレベルとはいえない」(商社幹部)との不満が漏れる。
 各国、なかでも中国や韓国が急速に力を入れている世界のプロパガンダ戦争。日本は明らかに後塵を拝している。それが世界における日本の立場を弱体化させている要因のひとつなのだ。=第3部おわり
                   ◇
 この企画は有元隆志、犬塚陽介、岡部伸、加藤達也、河崎真澄、黒沢潤、杉本康士、高橋昌之、田北真樹子、田中靖人、宮本雅史が担当しました。
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