アルフレッド・アドラー著『嫌われる勇気』 対談 岸見 一郎/古賀 史健

2016-05-28 | 本/演劇…など

『嫌われる勇気』について 

•書籍紹介
 嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え
 人生を一変させる新しい古典の誕生!
 人はいま、この瞬間から幸せになれる。
 なぜ、あなたはいつまでも変われないのか?
 なぜ、あなたは劣等感を克服できないのか?
 なぜ、あなたは幸せを実感できないのか?
 なぜ、あなたは過去にとらわれてしまうのか?
 ―アドラーの幸福論がすべての悩みに答えを出します。
 本書では、フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称されるアルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を、「青年と哲人の対話」という物語形式で紹介しています。欧米で絶大な支持を誇るアドラー心理学は、「どうすれば人は幸せに生きることができるか」という哲学的な問いに、きわめてシンプルかつ具体的な“答え”を提示します。この世界のひとつの真理とも言うべき、アドラーの「幸福論」はほかの誰でもないあなたが、あなたらしく生きていくためのヒントを与えてくれます。

岸見 一郎/古賀 史健:著 定価:本体1,500円+税
ISBN:978-4-478-02581-9

著者プロフィール
・岸見一郎(きしみ・いちろう)
 哲学者。1956年京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。 専門の哲学(西洋古代哲学、特にプラトン哲学)と並行して、1989年からアドラー心理学を研究。 精力的にアドラー心理学や古代哲学の執筆・講演活動、そして精神科医院などで多くの「青年」のカウンセリングを行う。 日本アドラー心理学会認定カウンセラー・顧問。著書に『アドラー心理学入門』『アドラー 人生を生き抜く心理学』など。
・古賀史健(こが・ふみたけ)
 ライター・編集者。1973年生まれ。出版社勤務を経て1998年に独立。 書籍のライティング(聞き書きスタイルの執筆)を専門とし、ビジネス書やノンフィクションで数多くのベストセラーを手掛ける。1999年に岸見氏の『アドラー心理学入門』に衝撃を受け、10数年越しで本企画を実現。 本書では共著者として執筆を担当した。 著書に『20歳の自分に受けさせたい文章講義』がある。
・羽賀翔一(はが・しょういち)
 漫画家。2011年、デビュー作『ケシゴムライフ』をモーニングに連載。 ムック本『We are 宇宙兄弟』VOL.4〜7に、『流星にて』ほか短編を連載。 2014年、書きおろし最新作『ZOOO』を含む電子書籍『ケシゴムライフ』(kindle版)を刊行。

著者スペシャル対談
 時代を100年先行したアドラーの「劇薬」幸福論とは?

古賀 いまから15年も前、僕は書店でたまたま手に取った岸見先生の『アドラー心理学入門』を読んで世界がひっくり返るくらいの衝撃を受けました。それ以来、ずっと先生とご一緒にアドラー心理学の決定版と呼べる本をつくりたいと願い、この『嫌われる勇気』を刊行できたことを非常に嬉しく思っています。
岸見 私も最初に古賀さんが京都まで訪ねてくださって以来、ずっとこの日を待ちわびていました。古賀さんはアドラーのどこに衝撃を受けたのですか?
古賀 いちばん大きかったのは「目的論」です。人は過去の原因(たとえばトラウマなど)によって突き動かされるのではなく、いまの目的によって動いている。一例を挙げるなら「ついカッとして怒鳴った」のではなく「怒鳴り声をあげるために怒りの感情をつくり出した」と考える。怒りの目的は大声で相手を威嚇して、屈服させることなのだと。
岸見 ええ。「ついカッとして」という言葉は嘘ですね。
古賀 あるいは、精神的に不安定で家に閉じこもっている人が「不安だから、外に出られない」と言うとき。これについてもアドラーの目的論は「外に出て他者と接触したくないから、不安という感情をつくり出している」と原因ではなく目的を考える。
岸見 アドラーはそうやってなんの因果関係もないところに原因を求めることを「人生の嘘」と呼びました。 たとえば「私は学歴が低いから出世できない」とか「私の結婚生活がうまくいかないのは、幼いころの家庭環境がよくなかったからだ」といった話についても、人生の嘘だとして明確に否定します。
古賀 かなり厳しい話です。
岸見 しかし、もしも「過去の原因」がすべてを決定するのなら、我々は過去に縛られたままなにもできなくなってしまう。それに対してアドラーの目的論は、「過去になにがあったとしても、これからの人生になんの関係もない」と言っているのです。
古賀 そう、厳しいけれども希望がある。まさに「劇薬」なんです。
岸見 とはいえ「目的論」はアドラーの発明というわけではなく、古代ギリシアの哲学者たちの間でも語られていたことでした。
岸見 イラスト
古賀 岸見先生の強みはそこです。ご専門のギリシア哲学がベースにあるので、アドラーに対する洞察が単なる臨床心理学の範疇にとどまらない。
岸見 私自身、アドラーに触れるまでは心理学にほとんど興味を持っていなかったのですが、アドラー心理学だけはギリシア哲学と同一線上にある思想だと感じました。そして、こんなふうに思うことがあります。もしソクラテスやプラトンが現代に生きていたら、哲学と並行して、アドラーのような精神科医になったかもしれないと。
古賀 実際、『嫌われる勇気』で採用した「哲人」と「青年」の対話篇スタイルは、プラトン哲学の古典的な形式でもあります。
岸見 アドラーの思想を説く哲人に対して、血気盛んな青年がありとあらゆる角度から疑問を投げかけていくスタイルですね。
古賀 ここでの「青年」は、僕自身であり、若き日の岸見先生であり、おそらくは読者の方々でもある。
岸見 青年が読者になりかわって疑問をぶつけ、そこに哲人が答えていく、という形式なので納得感も高いと思います。
古賀 それにしても、本書の反響には驚いています。いま、なぜアドラーの思想がこれほど多くの人に響いているのでしょうか?
岸見 アドラーの思想は時代を100年先行したといわれるほど、先駆的なものでした。ようやく時代がアドラーに追いついてきたという側面はあるでしょう。また、働き方の多様化、ソーシャルメディアの発達などによって、あらためて対人関係のあり方を見つめなおす人が増えているように思います。
古賀 たしかにアドラーは「すべての悩みは対人関係の悩みである」とまで断言していますからね。
岸見 本書を読んでいただければ、その言葉の意味もわかっていただけるでしょう。

 ◎上記事は[ダイアモンド社]からの転載・引用です
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 現代ビジネス 賢者の知恵
 2016年06月03日(金) 古賀史健,上阪徹,村上智子
135万部のベストセラー『嫌われる勇気』はこうして生まれた~構想16年、初版8000部からの挑戦
 発売以来じわじわと口コミで評判が広まり、ついに100万部を超えるヒットに――。フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と呼ばれるアルフレッド・アドラーの思想を「哲人と青年による対話篇」の物語形式でまとめた『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』が異例のロングセラーを記録している。
 発売から2年3カ月で国内累計135万部を発行し、さらに韓国で115万部、台湾で29万部を超えるなど、その勢いはとどまることをしらない。本年2月には続編にあたる『幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えⅡ』が刊行され、早くも2016年を代表するベストセラーの一つになっている。
 なぜこれほどのヒット作となったのか。4月下旬、共著者の一人であるライターの古賀史健氏が「上阪徹のブックライター塾」(※最終ページで説明)に招かれ、上阪徹氏による公開インタビューに臨んだ。塾生限定50人を前に明かされた、『嫌われる勇気』誕生秘話をここに公開!
*「これは売れるぞ」と確信した瞬間
上阪 120万部突破、おめでとうございます。ミリオンセラーになると予想しておられましたか?
古賀 いえ、全然。内容については、かなり自信を持てるものを作れたと思っていましたが、まさかここまで売れるとは、という感じです。
上阪 「これは売れるぞ」と、手応えを感じたのは、どのあたりからですか?
古賀 出版されたのは2013年冬ですが、その執筆中に、「古賀さん、今どんな仕事をしてるんですか?」と聞かれて、「2013年に出版されるあらゆる本の中で、たぶん一番面白いものを書いています」と答えた記憶があるんです。その頃にはもう、内容については相当の手応えを感じていたのでしょうね。
上阪 でも、数については全然読めなかった?
古賀 はい。初版は8000部でしたし、部数よりも「残る本」として考えていました。ただ、発売1ヵ月後あたりから、著名なブロガーさんが紹介してくださったり、フェイスブックやツイッターなどネットで口コミが広がり始めたりして、じわじわと売れていきました。
上阪 この『嫌われる勇気』という本は、そんなに簡単な内容ではないですよね。おそらく読者は読みながら、内省や自問自答する場面もあるだろうし、1~2時間でさらっと読めるものでもない。
古賀 そうですね。「哲人」と「青年」の哲学的な対話によって物語が進んでいく構成で、小説でも、ビジネス書でもない。どちらかと言うと哲学の入門書に近い。かなり異色だと思います。
上阪 そんなに簡単ではないこの本が、ミリオンセラーになるのはすごいですよね。どうして、こんなに売れているんでしょう?
古賀 これまでの常識を覆して、「えっ、そうなの!?」と思わせるメッセージばかりだということが、大きな理由だと思います。たとえば、アドラーは「人間のすべての悩みは対人関係である」、「トラウマは存在しない」、「人はいまこの瞬間から、幸せになれる」などと断言しているんですね。読者からは、「こんな考え方があるのか!と、目からウロコが落ちました」といった感想を多くいただきます。
上阪 そういった悩みを、現代日本人の多くが抱えていた、ということなんでしょうね。
古賀 はい。その悩みに対して、タイトルでまず「嫌われる勇気」が必要だと言い切っていますから。特に、対人関係の悩みについては、SNSなどの普及で、人付き合いの難しさが増している背景もあるかもしれません。実はこの本、実店舗を持つ書店だけでなく、アマゾンなどのネット書店での売れ行きが良かったんです。それだけ、ネットを利用している読者層に何か響くものがあったのかな、と思いますね。
*10年越しで実現させた夢
上阪 そもそも、どういう経緯でこの本を作ることになったんですか?
古賀 僕がまだ20代の終わりだった頃、1999年のことです。池袋のジュンク堂でたまたま手に取った、岸見一郎先生の『アドラー心理学入門』(ベストセラーズ)という新書を読んで、衝撃を受けました。今、読者の皆さんが「目からウロコ」だと感じてくださるのと同じように、「こんな考え方があるのか!」と。
上阪 今回の共著者である岸見先生の書籍と出会ったのは、その時なんですね。でもそんな専門書を、偶然手に取るとは。もともと心理学や哲学に興味を持っていたんですか?
古賀 はい。20代の頃はよく読んでいました。だから、「フロイトやユングとは真逆のことを言っている、めちゃくちゃ面白い」と思いました。そこで岸見先生のその新書を何冊も買って、いろいろな編集者の方に渡して、「この内容をもっと面白く伝える書籍を出せないかな」と提案していたんです。ところが、誰一人として乗ってくれなくて。「何を言ってるのかよく分からない」、「こんなの売れないんじゃないの」みたいな反応ばかりだったんですよ。
上阪 そうだったんですか。2013年冬に『嫌われる勇気』が発売されるまでに14年ありますが、この間いったい何があったんでしょう?
*発行部数135万部超となった大ヒット作
古賀 僕は、どんなに見向きをされなくても、いつかこれを実現したいという思いをずっとあたためていました。ようやく「めちゃくちゃ面白いね!」と言ってくれる編集者が現れたのが、たまたま10年後だった。それが担当編集者の柿内芳文さんでした。
上阪 それで、岸見先生に会いに行かれたんですね。
古賀 ちょうどその頃、新聞社の企画でインタビューの仕事があって、そこでお会いしたのが最初です。その時に、「是非こういう本を一緒に作らせてください」という話をしたら、「喜んで」と快諾いただけました。それが、2010年です。
上阪 なるほど。10年越しでようやく出版に向けて動き出した、と。その後、出版までにさらに3年。通常、僕らが本のライティングをする時は、だいたい月に1冊のペースで書きますから、かなり時間をかけて作られていますよね。取材はどのくらい行われました?
古賀 1回4~5時間を10回くらいです。それをじっくり、2年ほどかけてやりました。「この本は、出版期日を決めて取り組む仕事じゃない。何年かけてでも、最高の内容のものができた時に出版しよう」と、最初から柿内さんと決めていたんです。その後、執筆には1年半かけていますね。僕はこの間、他の仕事はほとんどお断りして、この1冊に賭けていました。
上阪 それもすごいな。売れるかどうかもわからないのに、他の仕事は断ってしまった。ある種、ギャンブルですよね。どうしてそこまでできたんですか?
*目指したのは漫才の「ツッコミ」
古賀 「5年、10年、あるいはそれ以上、長く残る本をつくりたい」という思いが強かったからです。自分が本当に面白いと思えるもの、惚れ込めるテーマを見つけて取り組みたい。常々そうも考えていました。
上阪 なるほど。そう考えていた時に出会った惚れ込めるテーマが、「アドラー心理学」だったわけですね。
古賀 そうです。だから「今、ここでこれをやらなかったら、絶対一生後悔する」という思いで、賭けに行った感じですね。
上阪 とはいえ、伝えたいコンテンツとしては、すでに岸見先生の出された『アドラー心理学入門』があります。同じテーマを扱いながら、同じ著者の本を新しく出す。どんな本にしたいと思って作られたんですか?
古賀 「読んだ人に、“岸見先生の語るアドラー心理学”の面白さを分かってもらえる本」にしたいと思っていました。僕が「めちゃくちゃ面白い!」と思って読んだものが、多くの人にとってそうではなかった。それをなんとかしたい、このまま知られないのはもったいない。その思いが強かったですね。
上阪 たしかに、今でこそアドラー関連の書籍も多く出ていますが、2013年の段階では、日本ではほとんど知られていませんでした。『嫌われる勇気』は、今の「アドラーブーム」とでも言うべき状況の、火付け役です。その意味では、古賀さんの「なんとかたくさんの人に知ってもらいたい」という思いは、十分実現できたと言えるのではないでしょうか。
『嫌われる勇気』は、対話形式になっているのも特徴ですよね。「『哲人』のもとを訪ねた青年」があれこれ問いただすという設定で、二人の会話によって物語のように話が展開していく。どうしてこの形式で書かれたんですか?
*今年発売された続編も絶好調
古賀 この対話形式、対話篇と呼びますが、はじめは、この形式にするつもりではなかったのです。岸見先生の著書を、私がブックライターとして書く予定で取材を進めていました。
上阪 えっ、そうだったんですか。どの段階で、そんな大きな方向転換を?
古賀 取材が7割くらい進んだあたりですね。このまま書いても、『アドラー心理学入門』を超えるような圧倒的な面白さは出せないんじゃないかと思い始めて。
上阪 どうしてですか?
古賀 アドラー心理学は、ツッコミを入れたくなることが多いからです。今までのパラダイムで考えると、「そんなこと当たり前じゃないか」、「実現不可能な理想論を唱えているだけだ」と、どうしても疑問や反発が生まれてしまう。そう反応するであろう読者の気持ちをどう受け止めようかと考えた時に、漫才みたいなツッコミがあるといいんじゃないかと思って。
上阪 漫才ですか! なるほど。
古賀 漫才は、ツッコミが入ると「ここは笑うところなんだな」と分かりますよね。同じように、「ここはびっくりするところなんだな」、「ここは大事なところなんだな」と示すことで、理解を深める手助けになればと考えました。
*海外翻訳は狙っていた
上阪 そういうことでしたか。たしかに「青年」のツッコミのおかげで、哲学的な難しい話も、面白く、分かりやすく伝わってきます。もう一つ伺いたいのが、登場する「青年」の独特な口調についてです。例えば、「ご冗談を! 不安や恐怖をこしらえた、ですって?」(p.27)のように、やや芝居がかっている。これも何か意図がありますか?
古賀 はい、はっきりとあります。これは、「長く残る本にしたい」と思っていたのと、いずれ海外で翻訳されることも考えてのことです。僕は、ドストエフスキーやトルストイなど19世紀のロシア文学が好きで、現代の日本人が読んでも十分に面白い。そんな普遍性のある文体を目指しました。だから、日本人にしか分からない表現も、一切書いていません。
上阪 そこまで見越して、書かれていたのですか。その目論見どおり、実際に今すでに、韓国や台湾ではベストセラーになっているそうですね。
古賀 そうなんです。さらに今、ギリシャとブラジルからも翻訳出版のオファーをいただいています。
上阪 今後きっと、国境だけでなく、時代をも超えて長く読み継がれる本になるのではないかと思います。
古賀 そうなってくれれば本望ですね。
(文/村上智子)
【「上阪徹のブックライター塾」とは】
「本を書けるライターになりたい」「ライティングの腕を上げたい」「書く仕事でもっと稼ぐにはどうしたらいいのか?」という思いを持つ人々を対象とした塾。著者に代わって書籍のライティングをおこなう「ブックライター」になるためのスキルを伝授している。
2014年4月、作家・ブックライターとして数多くの本を世に送り出してきた上阪徹氏によって開講され、本年4月~5月に第3期が行われた。上阪氏本人による講義・課題添削、出版界の第一線で本づくりを手がける編集者を招いた演習など、実践的な内容が特徴。詳細はフェイスブックページ(こちらをクリック)を参照。

 ◎上記事は[現代ビジネス]からの転載・引用です
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