【集団的自衛権 第5部 5つの歪曲】①あり得ない徴兵制…④不毛な「巻き込まれ論」⑤軍事大国のレッテル

2014-08-07 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

【集団的自衛権 第5部 5つの歪曲(1)】あり得ない徴兵制 高度化した兵器、短期間では習熟不可能
 産経ニュース 2014.8.2 10:06 


    

 「あの日から、パパは帰ってこなかった」
 集団的自衛権の行使容認に反対を訴える社民党のポスター。路上にしゃがみ込んでうつむく男児の写真に、メッセージが添えられている。集団的自衛権の行使容認により自衛隊の任務が拡大することをことさら誇張し、自衛官の“死”を連想させる典型的なプロパガンダ(宣伝)だ。
 陸上自衛隊OBは「こういうときだけ自衛官の心配をしたふりをするのか。殉職自衛官の遺族がどう思うか」と憤慨する。
*「抑止力」の強化
 安倍晋三政権が7月1日に閣議決定した集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈見直しの狙いは、一方的に軍事的緊張を高める中国や北朝鮮の動向をにらみ、軍事衝突に巻き込まれないための「抑止力」の強化だ。
 同盟国の米国をはじめオーストラリアやインド、フィリピンなど安全保障上の利害を共有する友好国と軍事的関係を強化し、アジア太平洋地域の平和と安定を高めることを目指している。
 それにもかかわらず、社民党を含め行使容認に反対する野党に一部マスコミが加担する形で、レッテル貼りが横行している。事実の「歪曲(わいきょく)」にすぎない。
*解釈変更余地ない
 「将来、徴兵制が意に反する苦役に当たらないと(憲法の)解釈変更があれば、徴兵制が可能になる危惧があるのではないか」
 社民党の吉田忠智党首は7月15日の参院予算委員会で追及した。「徴兵制」について政府は、奴隷的拘束や苦役からの自由を定める憲法18条に反するとの見解だ。横畠裕介内閣法制局長官は答弁で「平時、有事を問わず、憲法の趣旨から許容されない。解釈変更の余地はない」と断言した。
 なぜ、集団的自衛権の行使容認の議論に「徴兵制」が持ち出されるのか。
 「集団的自衛権の議論をやりだすと徴兵制まで行き着きかねない。なぜなら戦闘すると承知して自衛隊に入っている人ばかりではないからだ」
 5月18日付「しんぶん赤旗」日曜版のインタビューでそう語ったのは、かつて自衛隊の最高指揮官である「首相」の座に最も近い男といわれ、中曽根康弘政権で防衛庁長官を務めた加藤紘一元自民党幹事長だ。
 「戦闘すると承知していない」自衛官が大量退職し、政府は人員を確保するために徴兵制に踏み切らざるを得ない-という論法のようだ。
 航空自衛官OBは「私たちは服務の宣誓をして自衛官になった」と反論する。自衛隊法施行規則39条は自衛隊員になった時点で「…事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる」と宣誓することを定めている。国政から身を退いたとはいえ、加藤氏の発言が自衛官の心にどう響くのだろうか。
 安倍首相は徴兵制を導入しない理由の一つに「政策選択肢としてあり得ない」ことも挙げる。軍事的合理性を考慮すれば、徴兵制はそぐわないからだ。先進国などで徴兵制を廃止・停止するのは国際的な潮流となっている。
 陸自OBは「自衛隊に徴兵制はマッチングしない。プロ集団じゃないと(現代戦に必要な)兵器を使えないからだ」と説明する。自衛隊を含め先進国の軍隊は兵器や通信機器が高度化され、徴兵制を導入したとしても短期間で習熟するのは不可能なのだ。
 実際に集団的自衛権の行使容認によって自衛官が不足するのか。
 防衛大学校(神奈川県横須賀市)で7月26、27両日、毎年夏恒例の受験予定者らを対象にした「オープンキャンパス」が開かれた。
 2日間の来場者は保護者を含め2729人。身を賭した懸命な救助・捜索活動が評価された東日本大震災があった平成23年が1694人、24年が2500人、昨年は3297人だった。昨年が多いのは「TBSドラマ『空飛ぶ広報室』の影響が大きかったようだ」(防大関係者)。女子高生が戦車を使った武道「戦車道」を学ぶストーリーのアニメ「ガールズ&パンツァー」(通称ガルパン)が24年10月から東京MXテレビなどで放映されたことも自衛隊人気を押し上げた。
*仕掛ける“宣伝戦”
 集団的自衛権の議論が本格的に始まった昨年を含めても、幹部自衛官を目指す若者は減らないどころか増え続けている。7月1日の閣議決定後に陸海空自衛隊から退職希望者が殺到しているような事実もない。
 行使容認に反対する勢力はそうした事実から目を背け、耳目を集めやすく、刷り込みやすいプロパガンダで「集団的自衛権=悪」のイメージを植え付けようと“宣伝戦”を仕掛けている。
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 集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈見直しが閣議決定されてから1カ月。「徴兵制につながる」「軍事大国化する」といった反対勢力によるレッテル貼りが続けられている。現実に反する「歪曲」を検証する。
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自衛隊を尊重したことがなかった勢力が「自衛官の命」を俄かに心配するようになった…「おためごかし」 2014-07-26 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
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【編集日誌】集団的自衛権「歪曲」を検証
 産経ニュース 2014.8.2 07:15 
 連載「集団的自衛権」の第5部が始まりました。副題は「5つの歪曲(わいきょく)」です。
 安倍晋三内閣が集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈変更を閣議決定して1カ月が過ぎましたが、「自衛官の死」「徴兵制導入」など扇情的な批判や「戦争に巻き込まれる」といった国民の不安をあおる論調が野党やメディアに目立ちます。
 特に集団的自衛権の行使が即、徴兵制につながるという言説は論理的に飛躍があり過ぎます。本質を矮小(わいしょう)化し、歪曲するプロパガンダ(宣伝)といえます。「日本の脅威」をことさら強調して自国の軍拡路線を正当化しようとしている“隣国”の応援団のようです。
 もちろん政府が国民に分かりやすい説明をしてきたかといえば疑問が残ります。連載では集団的自衛権の本質を分かりやすくお伝えするつもりです。(政治部次長 大谷次郎)
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【集団的自衛権 第5部 5つの歪曲(2)】中韓除く環太平洋諸国は支持 周辺国反対論の「虚像」
 産経ニュース 2014.8.3 13:12 

  集団的自衛権諸国対応 

    

  「ぜひ、コロンビアを友好国として頼りにしてほしい」
 安倍晋三首相が7月29日(日本時間同30日)、コロンビアで会談したサントス大統領からこう求められたのは、集団的自衛権の行使容認に向けた憲法解釈見直しの閣議決定を説明した後だった。
 「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げる安倍首相は、すでに訪問済みの東南アジア諸国連合(ASEAN)、米国、カナダ、オセアニアに加え、今回の中南米歴訪で、太平洋を囲むように足跡をしるした。首相はそのたびに集団的自衛権の行使容認を説明し、多くの首脳から「支持」や「歓迎」といった言葉を引き出してきた。
 それに比べ、批判を繰り返す中国と韓国のいびつさは際立つ。だが、朝日新聞は中韓両国の味方でもしているかのようだ。閣議決定翌日の7月2日付朝刊で「危険はらむ軍事優先/周辺国刺激 緊張招く懸念」といった見出しを掲げ、「双方が抑止力を高める競争を続ければ、軍拡を招き、地域の緊張が高まる危険性もはらむ」「中国をさらに刺激するのは明らかだ」と指摘した。
 あたかも日本が「現状変更」を試みようとしているような書きぶりだが、国際ルールを無視して、一方的に軍事的緊張を高めているのは中国にほかならない。東、南シナ海での横暴な行為を見れば明らかだ。日本の集団的自衛権の行使容認による抑止力の向上は、アジア太平洋地域の平和と安定を「現状維持」する国際的な要請に沿った措置だ。
 マイケル・グリーン元米国家安全保障会議アジア上級部長らが米外交専門誌「ザ・ディプロマット」に「日本の集団的自衛権の変更に関する10の神話」というタイトルで論考を寄せている。この中で「アジアは反対している」ことを「神話」として取り上げ、中国と韓国を除けば、濃淡があっても多くの国が賛意を示していると指摘している。
 こうした「神話」は、対日非難を強める中国や韓国に加え、日本の野党とマスコミの一部が共闘して生み出した虚像にすぎない。
 中国が反発するのは、太平洋の覇権を握ろうとする国家的な野望を果たすには、日米同盟の強化が阻害要因だからだ。また、朝鮮戦争はいまだ終結しておらず、休戦状態にある。自民党の佐藤正久前防衛政務官は「休戦協定の当事者である中国が日米同盟の強化に賛成するわけがない」と指摘する。
潮匡人拓殖大学客員教授は「集団的自衛権を日本が行使して、いちばん得するのは誰か。朝鮮半島有事なら韓国だ」と強調する。だが、韓国国会の外交統一委員会は行使容認の閣議決定に対し「北東アジアの平和と安定に深刻な脅威になると厳重に警告し、外交的な挑発行為と規定し強く非難する」との決議案を採択した。朴槿恵(パク・クネ)大統領も中国の習近平国家主席と会食した際に「憂慮」を表明した。韓国は北朝鮮という軍事的脅威を抱えながら、反日感情を優先させ、現実の安全保障に目をつぶろうとしている。
 こうした中、日米韓の連携を重視する米国は韓国に対し行動に出た。韓国紙の東亜日報が報じたところによると、米国務省のズムワルト副次官補が韓国を非公式に訪問し、日本の行使容認について韓国に理解を求めたという。米太平洋軍のロックリア司令官も記者会見で「日韓は安全保障面で利害を共有していることを認識すべきだ」と訴えた。表向きは日韓双方に関係改善を促した形だが、実際は中国との関係を深め、日本たたきに走る韓国に自制を求めたと考えるのが普通だ。
 元陸上自衛隊幹部の佐藤氏はこう漏らす。「韓国も軍人は分かっているんだが…」
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【集団的自衛権 第5部 5つの歪曲(3)】根拠なき拙速論 始動7年「これだけ時間と手間かけたこと過去ありますかね」
 産経ニュース 2014.8.4 10:27 
 「国会での議論もほとんどしていない。国民の議論を無視して決めてよいのか。こういうやり方は反対だ」
 集団的自衛権の行使を限定的に容認する政府の閣議決定に関して開かれた7月14日の衆院予算委員会。民主党の海江田万里代表は、安倍晋三首相をこう批判した。閣議決定は拙速だとの理由による反対論だ。
 同じ日の夜、米国のマイケル・グリーン元国家安全保障会議アジア上級部長は都内での記者会見で「閣議決定は大々的な国民の議論と国会審議の対象になっている。(集団的自衛権の行使を禁じた)元の解釈と比べると飛躍的に透明性を確保した。歴史的な前進だ」と正反対の評価を下した。
*懇談会設置から7年
 「国際法上認められるかは非常に議論が多い。解釈にまったく自信を持っていない」
 現行憲法の制定後に集団的自衛権が国会で初めて言及されたのは、昭和24年12月の衆院外務委員会とされる。答弁したのは外務省条約局長だった。
 それから60年余、国会で議論は断続的に行われてきたが、従来の憲法解釈は内閣法制局という「伏魔殿」で作成されてきた。そこに風穴を開けようとしたのが、第1次安倍政権が立ち上げた政府の懇談会だった。
 「行使が許されないという解釈は、現在の安全保障環境の下で日米同盟を効果的に維持することに適合し得るのか」
 平成20年6月に福田康夫首相(当時)に提出された報告書では、こんな表現で集団的自衛権の行使容認を求めた。懇談会が発足したのは19年5月で、今回の閣議決定まで7年を費やしている。
 閣議決定の前提となった与党協議にしても今年5月20日以降に計11回行われ、議論の内容はその都度、報道陣に説明された。国会でも5月中旬以降、計70人超の議員が質問に立ち議論が行われてきた。
 それだけに、麻生太郎副総理兼財務相は閣議決定に至るプロセスについてこう強調する。
 「これだけ時間と手間をかけたことは過去ありますかね」(7月1日の記者会見)
*訓練やROE改定必須
 そもそも、政府が行ったのは憲法解釈を見直すという閣議決定だけだ。現段階では、実際に集団的自衛権の行使はできず、行使するためには自衛隊の活動の根拠を定める法律の改正が必要となる。政府は関連法案を来年の通常国会に一括的に提出する方針だが、ここで初めて抽象論にとどまらない本格的な国会審議が行われるのだ。 法改正が実現すれば、自衛隊は国連平和維持活動(PKO)参加時の「駆け付け警護」や「任務遂行のための武器使用」も可能になる。それでもすぐに「駆け付け警護」などができるわけではない。
 防衛省幹部は「南スーダンPKOに派遣している陸上自衛隊の部隊の場合、新しい任務が加わるのは法律を施行した後に派遣された部隊からだろう。そのための訓練をしなければならないからね」と話す。
 自衛隊の任務を拡充するには、武器使用のあり方などのルールを具体的に定めた部隊行動基準(ROE)の大幅な改定も必要になる。これに関し小野寺五典防衛相は「法整備が行われ、自衛隊の新たな役割が法的にも担保された上で、部隊行動基準に反映させる」として、法改正が先決だとの認識を示している。
 自衛隊員にとって最も重要なのは部隊行動基準だが、それが整備されるまでには、なお一定の時間がかかるのだ。
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【集団的自衛権 第5部 5つの歪曲(4)】不毛な「巻き込まれ論」 むしろ米を巻き込み抑止力強化を
 産経ニュース 2014.8.5 15:30
 「米国の戦争に巻き込まれる」
 集団的自衛権の行使容認に反対する一部の野党やマスコミは、安倍晋三政権の閣議決定によって、日本が米国の戦争に参戦しなくてはならなくなるという「巻き込まれ論」をあおり立てる。
 確かに、同盟国は本来、相手に見捨てられるリスクと、相手の争いに巻き込まれるリスクを抱える。
 しかし政府は、集団的自衛権を行使すべきかどうかを、閣議決定で盛り込んだ「武力の行使の3要件」(新3要件)に則して判断する。新3要件は、従来の自衛権発動の3要件と違って「わが国と密接な関係国に武力攻撃が発生し、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」ケースを対象に入れた。
 安倍首相は7月1日、閣議決定後の記者会見で「憲法が許すのは、わが国の存立を全うし、国民を守るための自衛の措置だけだ。外国の防衛自体を目的とする武力行使は今後も行わない」と断言した。与党協議会メンバーだった佐藤正久前防衛政務官(自民)も「巻き込まれるというのは自分の意思と関係ないことだ。集団的自衛権は権利であって義務ではない。自分で行使するか判断するものだ」と強調する。
 それでも、朝日新聞は同月2日付朝刊で「首相が『歯止め』と言う新3要件は抽象的な文言で、ときの政権がいかようにも判断できる余地を残している」と批判した。「国民を守るための自衛の措置」に限るとした首相の説明を排除し、集団的自衛権の行使容認によって日本は他国の戦争に巻き込まれて参戦する可能性が高くなる、とどうしても強調したかったようだ。
 だが、今回の閣議決定では、むしろ制約がかかりすぎている点がある。
 政府は当初、新3要件について「国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆されるおそれがある場合」としていた。それが、「おそれ」を「明白な危険」と修正、さらに集団的自衛権の行使対象となる国も「他国」から「わが国と密接な関係にある国」と改めた。緊急事態の政府と自衛隊の即応性を縛ってしまったと捉えるのが現実的だ。
 そして、もはや「巻き込まれ論」ではなく、日本は米国をいかに「巻き込む」かが必要になっている。カギとなってくるのが、年末までに再改定する「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」だ。
 尖閣諸島(沖縄県石垣市)を漁民に偽装した武装勢力が占拠するケースなど、有事手前の「グレーゾーン事態」は現行のガイドラインに明確に定めていない。米国は、対日防衛義務を定める日米安全保障条約5条で尖閣諸島を適用対象と明言している。つまり、武力攻撃があれば米軍は出動するが、武力攻撃とは認められないグレーゾーン事態は含まれず、米軍の本格的な活動を期待できないとの見方がある。
 そのため、日本政府はガイドラインの再改定に、グレーゾーン事態での自衛隊と米軍の役割分担を定め、離島防衛を強化したい考えだ。潮匡人拓殖大学客員教授は「有事の際に日米が共同対処するから、その直前までは米国は巻き込まれるリスクは法的にはなかった。日本の立場で言い換えれば、巻き込まれるのではなく、むしろ米国を巻き込む形で抑止力を高めている」と指摘する。
 ガイドライン再改定は、グレーゾーン事態対処のほかにも、集団的自衛権の行使容認によって可能になる自衛隊の行動や、周辺事態時の米軍に対する後方支援活動の拡大も盛り込まれる見通しだ。
 米国側は、中国が尖閣諸島をめぐって仕掛ける対日紛争に「巻き込まれたくない」というのが本音だ。米国は「世界の警察官」を退きつつある。とはいえ、いまだにその軍事力に勝る国家はない。いかに米国を引き寄せ、巻き込むかはガイドライン再改定の成否にかかっている。
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英訳すると全く理解されない、軍隊があるからという「戦争巻き込まれ論」と、「空想的平和主義」 宮家邦彦 2014-07-03 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
安倍首相 集団的自衛権「戦争に巻き込まれる恐れはなくなっていく。戦争を仕掛けようとする企みをくじく」 2014-07-01 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
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【集団的自衛権 第5部 5つの歪曲(5)】軍事大国のレッテル 中国国防費は10年間で4倍
 産経ニュース 2014.8.7 14:35
 「抑止力を高めれば平和が保たれると考えるのか。『安全保障のジレンマ』という考え方もある。(防衛力整備を)競争していけば軍拡競争になる」
 民主党の海江田万里代表は7月14日の衆院予算委員会で、安倍晋三首相に論争を仕掛けた。
 それに先立ち、東京新聞も今年1月1日付の社説で「安倍政権が目指す『強い国』は他国には軍事大国の脅威ともなる。軍拡競争に陥ることが憂慮される」との批判を展開している。
 確かに第2次安倍政権になって防衛関係費(当初予算)は2年連続で増加している。
 平成15年度以降、減少傾向を続け、民主党政権の24年度は4兆6453億円になったが、25年度は実質11年ぶりに増額となった。ただ、25年度の対前年度比の伸び率は0・8%にとどまる。26年度は2・2%だが、公務員給与の復活分を除けば実質0・8%増にすぎないとされる。
 国際的に日本の防衛関係費が多いわけでもない。5日の閣議で了承された26年版防衛白書によると、主要国の国防費(2012年度)の国内総生産(GDP)に対する比率は、日本は0・97%と1%を割っている。米国(4・0%)やロシア(3・1%)、韓国(2・6%)、英国(2・2%)に遠く及ばない。

     

*成立せぬジレンマ論
 隣国の中国はどうか。国防費の伸び率はごく一部の例外を除いて毎年2桁を記録している。
 公表された2014年度の国防予算は前年度比12・2%増の8082億元で、日本の防衛関係費の約2・7倍に上る。「過去26年間で約40倍、過去10年間で約4倍」(防衛白書)に増えているのだ。もちろん、めざましい経済成長に合わせて国防力を増強している側面はあるが、近年の経済成長率は鈍化しており、10%を大幅に下回っている。それでも、国防費の伸び率は2桁に達している。
 しかも、中国が公表する国防費は外国からの兵器調達などの費用が全て含まれておらず、実際の国防費は約1・3~2倍に膨らむとされる。「中身がよく分からず、透明性に欠ける」(防衛省幹部)という。
 緊張関係にある国同士が軍拡の連鎖を引き起こすという「安全保障のジレンマ論」が日中間に当てはまるとは言い難い。中国は日本の防衛関係費の増減にお構いなく軍拡路線を続けているからだ。
*日本は抑制的な対抗
 2013年の世界の軍事支出に関して、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が4月に発表した報告書によると、中国の軍事支出は2004年からの10年間の増加幅が170%と世界最大となった。逆に、日本の増加幅はマイナス0・2%だった。
 「東南アジアの軍事支出はインドネシア、フィリピンとベトナムの増加に伴って5%上昇した。後者2国は南シナ海における中国との領土問題の緊張によるものだ」
 報告書は、軍事支出の前年との比較に関して、そう指摘している。
 一方、日本は少子高齢化の影響で社会保障費の増大が見込まれており、防衛費に投じられる額は限られる。南西防衛を強化するため平成30年度までに陸上自衛隊に米海兵隊を模した水陸機動団を新設したり、水陸両用車を導入したりしても、抑制的な対抗措置にとどまる。
 そんな中で、集団的自衛権の行使容認に伴い、アメーバ状に他国との協力関係を強めることは「あまりコストをかけずに抑止力を強化できる」(防衛省幹部)という利点を持つのだ。
  この企画は峯匡孝、小田博士が担当しました。
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します
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集団的自衛権の行使とは「アメリカに尽くします」ではない、日本を取り戻すためには…【河村直哉の国論】 2014-08-03 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
【目覚めよ日本】 一国平和主義は“幻想” 中国の海洋進出 現実と乖離した「のんびり」さ ストークス氏 2014-08-03 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
「天下の奇観」外交感覚なき集団自衛権論議 … 内輪でなく相手ある議論を 櫻田淳 2014-07-28 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
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[主権者が国民ならば国民が自らの手によって自身の生命財産を守らなければならない]佐伯啓思 2014-07-22 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
日本に「集団的自衛権」が必要なワケ~日本が平和でいられたのは、憲法のおかげではない 藤田正美 2014-07-09 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉 
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