2006年 3月29日(水) 02:58産経新聞
耐震強度偽装事件で、建築基準法違反容疑で警視庁などの合同捜査本部による家宅捜索を受けた姉歯秀次元建築士(48)の妻(49)が二十八日早朝、千葉県市川市の自宅近くで死亡しているのが見つかった。現場や自宅から遺書などは発見されていないが、千葉県警行徳署は状況から、付近のマンションから飛び降り自殺したとみている。妻は病気のため精神科に通院していたという。同日午前五時三十五分ごろ、市川市富浜のマンション(七階建て)駐車場に止めた車の中で、血を流した女性が倒れているのを所有者の男性(44)が発見した。女性は病院に運ばれたが、全身を強く打っており、午前七時過ぎに死亡を確認。同署の調べで、姉歯元建築士の妻と分かった。調べでは、マンション最上階の手すり(高さ約一メートル)に乗り越えたような跡があったことから、妻は自殺を図って飛び降り、ほぼ真下に駐車してあった車のサンルーフを突き破ったとみられる。妻は黒いジャージー姿で、靴は車の近くに落ちていた。現場マンションは姉歯元建築士の自宅から南へ約二百メートル離れた場所にあり、オートロックなどはないため、自由に出入りできるという。
■懸念される姉歯氏の動揺 警視庁「捜査方針に変更はない」
「病気がちの妻が当時、入退院を繰り返していた。断ると収入がゼロになるということで葛藤(かっとう)した」。姉歯元建築士は証人として出席した昨年十二月十四日の衆院国土交通委員会で、木村建設からの圧力に耐えかね、構造計算書の偽造に手を染めたとする平成十年ごろの心境を、こう証言していた。事件発覚後は自宅に帰っていないという姉歯元建築士。妻の死亡に精神的動揺をきたすことを懸念する声もあるが、警視庁などは「捜査への影響はない」としている。耐震強度偽装が発覚したのは昨年十一月十七日。翌十八日、姉歯元建築士は自宅前に集まった報道陣の取材に応じた。構造計算書の偽造はあっさりと認め、「申し訳ない」と謝罪しながらも、「(損害賠償は)私だけの責任ではない」と人ごとのような主張を繰り返した。この翌日から、自宅に戻らなくなった。周辺の住民によると、妻は以前から入退院を繰り返しており、姉歯元建築士ともども、あまり近所づきあいがなかった。偽装発覚後は、長男と二男が生活していたが、夫婦の姿はみられなかったという。妻は最近になって退院していたといい、数日前に自宅前で見かけたという主婦(33)は「少しうつむき加減に歩いていた。顔色も悪そうだったけれど、自殺するとは思わなかった」と驚きを隠せなかった。姉歯元建築士は、昨年十二月二十日、警視庁などの合同捜査本部の家宅捜索に立ち会って以来、公の場に姿を現していない。この日も、自宅は電気がついてはいたが無言。問題発覚前から割れていたという窓ガラスは、そのままだった。一方、事件を捜査している警視庁の幹部は、「捜査への影響はない」との見方を示した。前例のない事件の全容解明には、なお時間がかかることが予想されている。捜査幹部によると、建築基準法違反容疑での立件に向け、姉歯元建築士の事情聴取は必要に応じて今も続けており、妻の死後も「捜査方針に変更はない」という。
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〈来栖のつぶやき〉
痛ましくてならない。姉歯氏の身の上も案じられる。人間が耐えうる限界をとっくに超えている。こういう場面に遭遇して私が必ず想起するのは、金閣寺を焼いた林養賢さんの母志満子さんの自裁である。それと、私の弟藤原清孝の、自供に臨んでの苦悩である。
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* 水上勉著『金閣炎上』 新潮社 昭和54年7月25日発行 より
母の林志満子が、(中略)養賢が会見を拒否したので、失望のあげく帰村する途次、山陰線保津峡駅をすぎた汽車が断崖にさしかかったころ、車両の連結点から、川へ投身した。
死体は岩石にあたって、頭と顔をくだいた即死だった。子の罪を身をもってつぐないたい、と彼女はもらしていた、と新聞記者はつけ加えていた。
* 勝田清孝の手記『冥晦に潜みし日々』(6) 結之章〈後篇〉15.温情 より
それに、一切を告白すれば、極刑で裁かれる自分自身の覚悟は別に、私の家族が自殺してしまうのではないかという懸念が脳裏から離れなかったのです。告白しようと決意したものの、頭に浮かぶことと言えば決まって自分の家族のことでした。
でも、被害者の悶死を思うと、家族には死なないでくれと祈れる私はまだしも恵まれているのだ、と自分に言い聞かせていたのです。そして、犯した重罪は消えることなくとも、せめて人間に立ち返ろうとして告白をしたことが、いつか必ずや家族も理解してくれるに違いない、と信じることで、自分に打ち勝ったのでした。
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◇ 【宮崎勤死刑囚~家族の悲劇 被害者の陰、地獄の日々 父親自殺 改姓 離散】 2006,1,18 坂本丁次
◇ 『秋葉原事件』加藤智大の弟、自殺1週間前に語っていた「死ぬ理由に勝る、生きる理由がない」 2014-04-11
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◇ あの姉歯物件は東日本大震災でビクともしていなかった 「臭いものには目をつむる」マスコミ体質 2014-08-23 | メディア/ジャーナリズム/インターネット
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◇ 姉歯秀次被告 最高裁判決 上告棄却 2008/2/19 (懲役5年、罰金180万円とした1、2審判決が確定)