ナッツで心疾患を予防、1日30グラムのお手軽健康法
2018年2月1日、井手ゆきえ [医学ライター]【第376回】
ダイエット食品として人気のナッツ。一時の流行と冷ややかな男性が多いだろう。
ところが1日30グラム程度のナッツを食べていると、心筋梗塞の発症リスクがぐんと減るらしい。米ハーバード大学公衆衛生学栄養学部門の報告から。
同報告は、同大が32年にわたり行ってきた看護師健康調査(NHS1/2、いずれも対象は女性)と医療専門職追跡研究(NPFS、対象は男性)という三つの大規模疫学調査のデータを横断的に解析したもの。登録から2年ごとに健康状態や食生活に関するアンケート調査を行っている。
今回の解析は、登録時点ですでに心血管疾患やがんの既往がある人、過食・拒食傾向の人を除外。ナッツの摂取状況についてデータがある合計21万人以上を対象に行われた。
対象者の年齢層は40代後半~60代前半で、体格指数(BMI)は25前後だった。米国の基準ではBMI25は標準体形である。
ナッツ(アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオなど)については28グラムを1サービングとして摂取状況を質問。回答から(1)ほとんど摂取しない、(2)週に1サービング未満、(3)週に1サービング、(4)週に2~4サービング、(5)週に5サービング以上の5群にまとめ、心血管疾患との関連を調べている。
さて、最長28年にわたる追跡期間中に合計1万4136人が心血管疾患を発症した。発症リスクとナッツ摂取との関連を調べたところ、ナッツを1サービング摂取するごとに、心筋梗塞の発症リスクが13%も減少することがわかったのだ。ナッツを頻繁に食べるほどリスクが下がるというわけ。
たとえば、摂取量が一番多い(5)のグループは、(1)に比べて脳卒中を含む全心血管疾患リスクが14%、心筋梗塞リスクは20%も低下していたのである。ナッツの種類別では、クルミの予防効果が高く、1週間に1サービング以上で全心血管疾患リスクが19%、心筋梗塞リスクが21%減少している。
1日ナッツ28グラム──。おやつやおつまみで簡単にクリアできそうな健康法である。ただし、塩味のきついナッツは避けること。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)
◎上記事は[DIAMOND on line]からの転載・引用です
――――――――――――――――――――――――
木の実のお話
井上教授のここだけの話
第1回 ナッツとは
今回より、ナッツに関するエッセイを書かせて頂きます慶應義塾大学医学部化学教室・教授の井上浩義です。これから宜しくお願いいたします。
ナッツは近年、日本でも良く食べられるようになりました。例えば2006年と2012年を比較するとアーモンドは約1.59倍、カシューナッツは約1.78倍と消費が大きく伸びています。日本人に少しずつナッツが浸透してきている証拠です・・嬉しい!
では、ここでいうナッツとは如何なるものを指すのでしょうか?アーモンドはナッツ、クルミもナッツ、ではピーナッツは?ピーナッツは名前に“ナッツ”が付いているのでナッツの仲間だと勘違いされがちですが実はナッツではありません。同じくココナッツもナッツではないのです。
ナッツは、①実の中に存在する硬い殻で覆われた仁で、②空中に実をつけます。こうやって分類していくと図のようになります(拡大図を見る)。あれっ、銀杏(ぎんなん)は真ん中にありますね。銀杏は①と②の両方の条件を備えていますから、本来はナッツです。しかし、欧米では銀杏を食べる習慣がないので、欧米の書物ではナッツ分類に銀杏(英語でginkgo)の名前は出てきません。
日本では是非ナッツに入れたいところです。
◎上記事は[木の実のお話]からの転載・引用です
...........