産経ニュース 2017.9.16 08:40更新
【編集者のおすすめ】何かが満たされない人に 『禅僧が教える 心がラクになる生き方』南直哉著
「自分を大切にすることをやめる」「置かれた場所で咲かなくていい」--。そんな逆説めいた38の言葉が並ぶ本書を、著者で禅僧の南直哉氏は「身も蓋もない」と自嘲気味に評する。
だが、書かれているのは、本質を突いた、ソリッドでシンプルなアドバイスの数々。きれいごとは一切書かれていない。にもかかわらず、肩の荷がおりるような思いがするのは、それほどに自分が自分という存在を知らな過ぎるからなのだろう。
氏の言葉は、決して借り物ではない圧倒的なリアリティーに満ちている。小児ぜんそくを患い、3歳から死と向き合ってきた氏が、自らへの問いで身につけてきた「生きるための哲学」であり、苦しみを抱える市井の人々と対峙(たいじ)してきた蓄積の結晶だからだ。
「仏教は、生きるためのテクニック」と氏は言う。そもそも仏教では「生きることは苦」であり、「楽に生きられること」を示唆していない。ただし、心の在り方次第で、その苦しみを取り扱えるようになる。そのテクニックはおのおのの人生のテーマで、身につけるべき世界観だとも言える。さまざまなものに縛られていた心を軽くする生き方は可能なのである。
「よりよい人生を生きねばならない」と自分に重しをかけ、何かが満たされない毎日を送っている人は、読んでみてほしい。「人生を“棒に振る”くらいの気持ちで生きればちょうどよい」というような金言が、心のツボを絶妙に突き、楽にしてくれるはずだ。(アスコム・1100円+税) アスコム編集部・奈良岡崇子
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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