熊谷6人殺害事件 検察側が上告断念 死刑の可能性なくなる
NHK NEWS WEB 2019年12月19日 18時45分
4年前、埼玉県熊谷市で6人を殺害した罪などに問われ、1審で死刑判決を受けたペルー人の被告が2審で無期懲役を言い渡されたことについて、東京高等検察庁は最高裁判所への上告を断念しました。被告の弁護士が無罪を主張してすでに上告し、今後、最高裁で審理されますが、被告に死刑判決が言い渡されることはなくなりました。
ペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(34)は、平成27年9月、熊谷市で住宅3軒に次々と侵入して小学生2人を含む6人を殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われています。
1審のさいたま地方裁判所が求刑どおり、死刑を言い渡したのに対して、2審の東京高等裁判所は今月5日、「責任能力が十分ではなかった」と判断し、1審の死刑を取り消して無期懲役を言い渡しました。
これについて東京高等検察庁は19日、上告を断念したことを明らかにしました。理由について、東京高等検察庁の久木元伸次席検事は、「事案の重要性や遺族の心情などを踏まえたうえで、さまざまな角度から判決内容を慎重に検討したが、適法な上告理由が見いだせず遺憾だが上告を断念せざるをえない」とするコメントを出しました。
被告の弁護士が無罪を主張してすでに上告し、今後、最高裁で審理されますが、検察が上告しなかった場合、2審の判決より重い刑にはできないという法律の規定があるため、被告に死刑判決が言い渡されることはなくなりました。
裁判員裁判による1審の死刑判決が2審で取り消されて無期懲役とされたケースはこれまで6件ありますが、検察が最高裁に上告せずに死刑にならないことが決まるのは初めてです。
遺族「全く納得できない」
検察が控訴しないことについて、事件で、妻の加藤美和子さん(当時41)と長女の美咲さん(当時10)、次女の春花さん(当時7)を亡くした男性(46)が会見し、気持ちを述べました。
加藤さんは「検察から上告断念を聞かされた瞬間は、『え、なぜ』という思いになり、全く納得できていない。いくら説明を求めても、検察からの説明では『上告理由がない』の一点張りのように感じて、やるせない気持ちになった。1審では、裁判員が苦渋の決断で死刑判決を言い渡したのに、2審で覆り、最高裁で闘おうと思っていた。判決が死刑でも、無期懲役でも、家族が帰ってこないことに変わりはないが、私が、これから前を向いて生きていくためにも、上告して闘おうと思っていただけに、やるせない気持ちです」と、ことばを選ぶように話しました。
また、加藤さんは19日、事件が起きてから初めて、報道陣のカメラ撮影について制限を設けず、顔がわかる形で会見に臨みました。その理由について加藤さんは「検察に上告をしてもらえなかったことで、遺族が感じた悔しい思いを、分かってもらいたいという気持ちがあります。そして、4年前に起きた、この事件のことについても、社会の皆さんに改めて思い起こしてもらいたくて、顔も出して取材を受けようと思いました」と話しました。
◎上記事は[NHK NEWS WEB]からの転載・引用です *強調(=太字)は来栖
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* 熊谷6人殺害 弁護側が上告 2019/12/18 二審無期懲役のペルー人被告
* 熊谷6人殺害 ペルー人被告の死刑取り消し 無期懲役 東京高裁 2019/12/5 裁判員の死刑判決破棄 6件目