死刑廃止論 世界の潮流を見据えて 2021/8/23

2021-08-23 | 死刑/重刑/生命犯

  死刑廃止論 世界の潮流を見据えて
 社説 中日新聞 2021年8月23日
 米国が連邦による死刑執行を一時停止すると表明した。死刑制度には普遍的な人権問題が潜み、その廃止・停止は、もはや世界の潮流となっている。日本でも廃止に向けた議論を進めるべきだ。 
 米国のガーランド司法長官が先月、連邦による死刑執行を停止し、死刑政策や執行方法を検証することを明らかにした。 
 バイデン大統領はもともと大統領選の公約に、連邦レベルでの死刑廃止を掲げていた。州をまたぐ犯罪など連邦法に違反する事件について、である。 
 連邦法以外に各州法による死刑もあるが、全米五十州のうち現在二十三州が廃止、三州が執行を停止している。バージニア州は今年三月に「死刑は不公平で効果がなく非人道的だ」として、南部の州として初の廃止州となった。 
 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると今年四月現在、十年以上死刑執行のない国も含めると、世界百四十四カ国・地域が事実上、死刑を廃止している。死刑のない国は既に世界の三分の二以上を占めている。 
 先進国に限れば死刑制度を存続・執行しているのは日本と米国だけだが、米国内で存続しているのは二十四州で半数に満たない。アムネスティはこうした現状を「世界は死刑という残虐かつ非人道的で、品位をおとしめる究極の刑罰を過去の遺物に葬り去ろうとしている」と説明している。 
 日本は、国連の国際人権(自由権)規約委員会から、死刑制度の廃止を考慮するよう何度も勧告を受けている。確かに世論調査では死刑に肯定的な意見は多いが、情報開示の不十分さゆえに国民の議論が熟さないのではないか。 
 生命を奪う究極の刑罰でありながら、誤判や冤罪(えんざい)の恐れが排除できない。執行されれば取り返しがつかず、他の刑罰と本質的・決定的に異なる。二〇一八年の国連総会でも死刑の廃止・停止を求める決議が圧倒的多数の賛成を得た。 
 日本と外国との捜査協力・司法協力の壁ともなっている。日本が犯罪人引渡条約を締結している国は韓国と米国のみで、拡大しない理由は日本に死刑制度があるためとも考えられている。 
 死刑の存廃を巡り、日本では活発な議論が交わされてこなかったが、各国が人権尊重の観点から次々と死刑の廃止・停止に踏み切ってきた潮流を見据えたい。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です
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〈来栖の独白 2021.8.23 Mon〉
 個人的な感想から書いてみたい。何人かの死刑囚と交流する中で私が感じたことは、人間とはなんと卑劣な生きものだろうということだ。自分のためには平気で嘘もつく。
 交流した死刑囚のなかで、自分の命を度外視して「償う」気持ちを表明した人がいただろうか。体裁の良いことを云う裏で、心底犯した罪の何であるかわかっている人がいただろうか。
 死刑制度は在ってよい、と思う。理念の上でなく、生死を命がけで考えること、それが肝心だ。死(死刑)に直面することで初めて「命を失う」ことの意味が分かる。犯した罪の真相がわかるのだが、しかしそれでもなお死刑囚の多くは、自己の死にのみとらわれる。人の(被害者の)死にまで思い至らない。人間とは勝手な生きものだ。
 現代人が今日のように堕落したのは、肉の命を最高の価値と考えたからではないか。
 肉の命よりも大切なものがある。「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」(論語 )。そして、イエス(聖書)は云う。

マタイ10章
28また、からだを殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、からだも魂も地獄で滅ぼす力のあるかたを恐れなさい。
34 地上に平和をもたらすために、わたしがきたと思うな。平和ではなく、つるぎを投げ込むためにきたのである。
35 わたしがきたのは、人をその父と、娘をその母と、嫁をそのしゅうとめと仲たがいさせるためである。
36 そして家の者が、その人の敵となるであろう。
37 わたしよりも父または母を愛する者は、わたしにふさわしくない。わたしよりもむすこや娘を愛する者は、わたしにふさわしくない。
38 また自分の十字架をとってわたしに従ってこない者はわたしにふさわしくない。
39 自分の命を得ている者はそれを失い、わたしのために自分の命を失っている者は、それを得るであろう。

ユダヤ人はなぜ、ナチス・ドイツの標的にされたのか アウシュビッツで身代わりとなったコルベ神父 「PHP online 衆知」


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