原発の安全神話が崩れたら、今度は『放射能は安全』という妙な風潮が広がっている

2011-09-01 | 政治

脱原発も「ノーサイド」? 野田新首相 広がる警戒感 財界 早くも高評価 
中日新聞 〈特報〉-篠ケ瀬祐司、中山洋子-2011/08/31Wed.
■新設否定も再稼働は前向き
 新首相に選ばれた野田氏は30日午後、恒例のあいさつに国会内の各党控室を回った。
 野田氏は「新たな原子力発電所は造れない」としながらも、再稼働には前向きだ。これに対し、早速、与野党内から厳しい声が広がっている。
 民主党の川内博史衆院議員は「高速増殖炉や核燃料サイクルは稼働見通しが立っていない。しかも日本は地震国。原発の増設ができないのは当たり前だ」と指摘する。
 再稼働についても、現時点で検討を始めるのは早すぎるとみる。「福島第1原発は津波ではなく、地震で原子炉が壊れた可能性がある。まだ隠されているデータやマニュアルを公開させる必要もある。再稼働の検討の前に、事故原因の徹底究明に基づく安全審査指針の見直しが不可欠だ」
 その際、必要なのは政府が従来、無視してきた原子力行政に批判的な専門家の参画と訴える。
■「原子力ムラ」が巻き返しの動き
 かねて原子力行政を批判してきた自民党の河野太郎衆院議員は「野田氏の周辺には、電力業界に近い議員が多いように見える」と警戒する。
 河野氏は「既に電力各社の職員が、国会議員の事務所が集まる議員会館を回り、原発の必要性を説いて回っている」と「原子力ムラ」の巻き返しを暴露。「原子力委員会事務局にいる電力会社からの出向者の一掃も必要だ」と付け加えた。
 河野氏自身は「自民党は与党時代に原子力を推進した。これを総括した上で、自民党としての新たなエネルギー政策を打ち出したい」と話す。
 みんなの党の浅尾慶一郎政調会長は「野田氏は再稼働の際に安全性を点検するというが、地元住民だけではなく、国民的な合意がなければ再開は難しい」と、原発再稼働のハードルを上げる。
 その上で、最終処分場の確保まで含めた「原発の本当のコスト」を示すことが不可欠だと提起する。「電力会社の地域独占をやめて送配電部門を分離し、市場メカニズムを導入すればコストの高い原発は淘汰される。人工光合成など技術革新を進めることで10年以内の脱原発は可能だ」
 社民党の福島瑞穂党首は「野田氏は民主党代表選では世論を意識し、新設しないとトーンを変えた。しかし、中部電力浜岡原発を止めた菅氏ほど脱原発の方向性は出していない。官僚側は野田氏をくみしやすしと考えているのでは」と、新内閣の行方を案ずる。
 実際、30日には原子力委員会が原子力政策の基本方針となる「原子力政策大綱」の見直し作業再開を決めるなど、菅氏退場を待っていたかのような動きが見られる。
 福島氏はもんじゅ廃止や原子力安全・保安院の改編時の規制機能強化を訴えると意気込んだ。
■財界 早くも高評価
 原発をめぐっても、野田氏は月刊「文芸春秋」9月号の「わが政権構想」で「脱原発対推進の対立ではなく」と、得意の「ノーサイド」を主張している。
 しかし、菅首相が後に「私的な思い」と後ずさった7月の「脱原発」宣言の際は「短兵急に進める話ではない」と牽制。同誌の手記では「2030年までは原子力技術を蓄積することが現実的」とし、新興国への原発輸出も「国際貢献」と位置付けている。
 こうした「原発維持」の新首相の誕生を財界は大歓迎している。
 経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)は野田氏について早々に「安定感と行動力を持った政治リーダー」と絶賛。「(政治家の資質が)すべて物足りない」とこき下ろした前任者と打って変わり、高い評価を与えた。
 こうした野田氏に「脱原発」を期待するのは無意味なことなのか。
 経済評論家の佐高信氏は「無理でしょう」と切り捨てる。野田氏は増税論者だが、その前提は無駄遣いの一掃。しかし、原子力ムラにある多くの公益法人の改廃については絶望的だとみる。
 「しゃべる訓練はできているが、耳がふさがっているのが松下政経塾出身者の特徴。彼もその1人。脱原発の国民の声が聞こえていない」
 ちなみに佐高氏は菅首相の中途半端な「脱原発」も罪深いと断じる。「脱原発を言うのなら、党の利害を超えて解散しなければダメだった」
 政治評論家の森田実氏も「脱原発には、よほどの指導力が必要。野田政権では困難だ」とみる。
 「野田氏は松下政経塾出身で、財界に近いことは確かだ。ただ、『減原発』では国民的な合意がほぼ、できている。世論に逆らって“原発推進”とまでは言えないのだろう」
■地域独占崩れず 自由化望み薄?
 電力業界を含む財界が最も懸念するのが発送伝の分離だ。巨費を投じる原発建設を可能にしてきたのは、電力会社による地域独占だった。その構造は変えられないのか。
 富士通総研の高橋洋主任研究員は「発送電分離は世界的な流れ。大半の国は日本より進んでいる。電力会社が反対するのは当然だが、電力の自由化によって再生可能エネルギーの普及も進む」と説明する。ちなみに脱原発を選んだドイツでは再生可能エネルギーは発電量全体の13・5%にも及んでいるという。
 「電力大手の地域独占を撤廃し、自由化を進めるには政治リーダーが強い意思を持つことが重要だ」と高橋氏は説くが、野田氏がそれに適任か否かについては「まだ出発点なので期待したいが、経産省に任せるなら思い切った変化は望み薄だ」と渋い見立てだ。
■被災者の健康維持こそ急務
 こうした脱原発へのかじきりと同時に、待ったなしなのは福島原発事故の被災者たちの健康維持だ。前政権は被ばくを広げる愚を犯している。
 「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」の山田真代表は「原発の安全神話が崩れたら、今度は『放射能は安全』という妙な風潮が広がっている。低線量被ばくを軽視する人もいるが、影響が出てからでは遅い。最悪の事態を想定しなくては子どもたちを守れない」と話す。
 この間、開いてきた福島の子どもらの健康相談会では「風評をあおる」と言われることを恐れ、不安を口にできない親の姿を数多く見てきた。
 「被ばく検査もいつになるか分からない。国はこれまで何もせず、それが新政権で急に変わるとは思えない。しかし、新たな『安全神話』のために福島の子どもたちはいまだ放置されている」  *強調(太字・着色)は来栖 
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「脱原発」を堅持しよう 電力自由化=発送電分離は不可避/脱原発からは最も遠い野田佳彦新首相2011-09-02 | 地震/原発
 「脱原発」を堅持しよう 日本の未来のエネルギー
中日新聞【社説】2011年9月2日
 猛暑の夏が過ぎていく。どうやら、原発に依存しない暮らしのかたちも見えた。本当に豊かな未来のために、脱原発の方向性はこのまま堅持するべきだ。
 九月に入り、朝晩の空気はめっきり涼しくなった。
 首都圏も東北も、そして名古屋も、記録的猛暑といわれた夏を、ほぼ原発に頼らずに乗り切った。
 東京電力と東北電力管内の電力使用制限令は、九日までに前倒しで解除になる。中部電力管内では、自動車業界の土日操業効果もあって、百万キロワット、中型原発一基分の電力が節約された。
 ■原発に依存しない夏
 原発なしでは、産業も暮らしも立ちゆかないという、経済産業省と電力業界挙げての強い“警告”も、どうやら杞憂(きゆう)に終わりそうな気配が強い。むしろ生活者の間には「原発なしでもいけそうだ」という自信がわいたのではないか。身の回りの電気のむだを洗い出し、電力に依存し過ぎた暮らしを見直すきっかけがつかめたのではあるまいか。LEDの普及など、省エネ型の社会基盤整備にも弾みがついたのではないか。
 脱原発路線を打ち出した菅直人首相が退陣し、新しい内閣がきょうにも発足する。
 野田佳彦新首相は「原発を新設しない」としながらも、「安全性を確認した原発を活用し、電力の安定供給を確保する」と、再稼働容認の立場を鮮明にしており、民主党代表選に出馬した五人の中で、脱原発からは最も遠いといわれている。脱原発、脱原発依存路線からの後退、あるいは揺り戻しを心配する声も高くなっている。
 菅内閣末期には「原子力ムラ」の巻き返しがささやかれ、定期検査などで停止中の原発を拙速に再稼働させようとする動きが活発になってきた。
だが、菅内閣の総評はさておいて、脱原発の方向性は、福島第一原発の惨状を目にした多くの国民に、一定の評価を受けている。国民の意思と願いが込められた脱原発の金看板を、そう簡単に掛け替えるべきではない。
 事故後、間もなく半年になる。経産省原子力安全・保安院は、福島第一原発から飛散した放射性セシウム量が、広島型原爆百六十八個分に上ることを公表した。文部科学省の調査では、土壌汚染の最高濃度は一五〇〇万ベクレル以上に上る。徐々に明らかになる放射能汚染の実態は予想以上に深刻で、広範囲にわたっており、避難の長期化は避けられない。
 ■発送電分離は不可避
 風評被害も後を絶たず、桃や稲作農家の悩みは深い。牛たちは野生化し、作付けのできない田畑、ふるさとの風景は荒れていく。
 損害補償の基準だけはようやくできた。賠償総額は数兆円規模に上るというが、廃炉費用を含めればゼロが一つ増えるとの見方もある。いずれにしても、東京電力が独りで担える額ではない。電気料金の値上げも含めて、そのツケは国民すべてにのしかかる。原発は高くつく。安全上も経済的にも、あまりにリスクが高すぎる。
 再稼働できたとしても、原発の新設は将来にわたって不可能だ。放射性廃棄物処分場の立地もままならない。既存の原子炉の寿命が尽きれば、原発はいずれにしても“安楽死”させる以外にない。
 その意味で、脱原発は後退ではなく進化である。
 国内の総発電量に占める原発の割合は三割弱、二、三割の節電が不可能ではないことは、この夏実証された。その上に太陽光や風力などの自然エネルギーや廃熱利用を上積みすれば、私たちは今より豊かになれる。
 自然エネルギーの全量買い取りを電力会社に義務づけた再生エネルギー特別措置法が成立し、大手がしのぎを削る太陽光以外の風力、小型水力発電分野にベンチャー企業の進出が盛んになった。技術革新も進んでいる。
 自然エネルギー市場を安定させるには、真の電力自由化が欠かせない
 特措法には「円滑な供給の確保に支障が生ずる場合」には、買い取りを拒否できるという抜け穴が開いている。これをふさぐ必要がある。そして大手電力会社の地域独占を廃し、発電事業と送電事業を分離させ、いつ、どこからでも自然エネルギーによる電力が家庭や事業所に送り届けられる環境を整えるべきである。欧米にできて、日本にできないわけがない。
 ■国家百年の計として
 電源の地域分散、電気の地産地消が可能になれば、建設にも維持管理にも巨額の費用がかかる原発は自然にいらなくなるはずだ。
 私たちの暮らしを守り、安心を取り戻し、有望な新産業の育成を図るため、新内閣には百年先を見据えた、新たなエネルギー政策を示してほしい。脱原発こそ、国家百年の計である。 *強調(太字・着色)は来栖
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「原発維持」の新首相の誕生を財界は大歓迎/「発送電」の分離(電力の自由化)=経産省に任せるなら望み薄2011-09-01 | 政治(経済・社会保障)
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